Ⅰ3-8
治安の悪い話スタート。
フリーコンサートとヘル○・エンジェルスに始まり、LSD、マリファナ、山道、アメ車、辺鄙な高地の砂漠地帯、三〇〇〇エーカーの敷地、開演前に既に一〇万の観客、大渋滞し麻痺した南北に走るハイウェイ、ハイウェイ・パトロール、郡保安官事務所、保安官代理、州知事、そして、再びヘル○・エンジェルーー、一周して全てが繋がった。加えて、タンクローリー一台分あるいは五〇〇ドル分のビールというワードによって全てがカチッと嵌って腑に落ちた。
(こいつら、イ○ズマとオルタ○ントを…、よりにもよって、「オルタ○ントの悲劇」と同一視してやがる!)
だから、こんなにも何もかもが異なっているし、何から何まで根本的に間違っている!
(イ○ズマをイ○ズマ・オルタにしていやがる!)
そりゃ、六○年代のサ○フランシスコだったら、LSDは合法だし、ヘル○・エンジェルスが幅を利かせていたりするだろうよ!
オルタ○ントの悲劇――それはザ・ロ◯リングストーンズのアメリカツアーの最終日、彼らからファンへのクリスマスプレゼントとして催されたフリーコンサートで起こった。開催決定から日数が少なく、会場が開催の二日前まで決定しなかったこともあり、あらゆる面に於ける準備不足が顕著で混乱を極めた挙句の果て――
負傷者多数、死者四名――
テ○アイは再びファイルを開いて読み上げ始めた。
「会場内のムードを感じる為、会場内を散歩することにした。時間は金曜日の午前零時をまわっていて、赤々と燃える焚火が数キロ先まで続いていた。私たちは群衆を避けて歩いたが、歩を進めれば進める程不安が増した。
大勢の若者達が泥酔し、どんちゃん騒ぎの乱交パーティーを開いていた。焚火の周りではあけっぴろげにセックスしている者達がいて、子供達が周辺をうろつきさまよっている。おまけに飼い主を捜して人込みの中を走り回る犬が何頭もいた。
どこを見てもドラッグの恐ろしい幻覚が原因で気がふれたような顔をした者ばかりだった。粗悪なLSDのせいに違いなく、その影響を受けている人々があまりにも多かった。何千人とはいかずとも数百人は確実にいた。
無償でLSDを配る者達がいたので、その中の一人に入手先を尋ねると、男は狂人のようにニヤリとして、『連中がただで配っているんだよ』と答えた。その連中が誰なのか聞き出すことは出来なかったが、当然、出所の解らないLSDなど受け取る気にはならなかった。
ステージから離れるに従い周囲の雰囲気はもっとおかしくなっていった。その晩は凍えるように寒かったが、防寒対策をしていなかった人達は寒さに耐えかね、焚火にくべるための燃料を探し回っていた。周辺数キロ以内にあったフェンスの支柱は全てなくなっていた。廃屋になった納屋を破壊して、火にくべる人達も大勢いた。コンサート会場に隣接する農場を所有する酪農家には目も当てられない状況だった。ショックを受け怯えた牛が郡内を徘徊して、何千人もの人々が不法侵入していた。
乗り棄てられた車が炎に包まれている周りで狂ったような眼で踊り狂う者達もいた」
「…………」




