Ⅰ3-1
“フォロン及びV-MAX”と言うより“フォロンでは無くV-MAX”でも無く、“TRANS-AM”、而も“ones second TRANS-AM”発動です。謂わば。本編、予備審問篇は。と申しますのは…、
トレッドミルを用いた有酸素運動の時、たまにEDMを聴くくらいで、基本筋トレ中は、貴教は音楽を聴かない――
何故なら、筋トレは少しでもフォームが崩れると効かないから。パーソナルトレーナーに付いて貰う時は、ミリ単位でのフォームチェックに関するアドバイスをしっかりと聞き、受け止めたいし、一人でトレーニングをする時は、自身の呼吸や鼓動に耳を傾けたいのだ。
また、筋肉トレーニングの良い所は――ライブの時もそうなのだが――“無になれる”という所である。ジムで筋トレをする際、ロッカールームの時点では、「またヘンな夢を見た。朝から落ち込むな……」等とウジウジしていても、ウェアに着替えていざトレーニングを始めてみるとスイッチが入る。「ランニングで集中する」という人は多いであろうが、貴教の場合は「あの打ち合わせの件どうなったっけ?」等と余計な事を考えてしまう。其れよりは、「この動きを何セット」と目標を定め、「もう駄目だ」「いや、まだいける、まだいける」と自分の限界と対峙し続けている方が性に合っているのだ。
だが、其の日はちっとも集中出来なかった。
其れはそうだろう。
何しろ先日逮捕されてしまったのだから――
(何で俺は逮捕されたんだ?)
其ればかりが頭の中を占めていたが、其れだけが全てでは無い。というのも、他に気になる事があったのだ。
(どうしてこんなに静かなんだ?)
「音楽を聴かずに一人でトレーニングに励んでいればそりゃそうじゃん」というのではない。逮捕された筈なのに誰一人として記者もカメラマンも来ないし、ニュースとか新聞で報道とかされてもいない――逮捕以後も逮捕以前と生活は全く変わってはいないのである。貴教くらいのネームバリューのある芸能人ならば、マスコミの群れが押し寄せてきてもおかしくない、というよりも、そうある方が自然なのである。
誰にも自分が犯罪者だと知られていない事にホッとしながらも、不安感とか不気味さの様なものは拭えない。あれから数日が経過していたが、「あれってやっぱりどこかの誰かと間違えたんじゃないの?」とか、「やっぱドッキリだったんじゃね?」とはとても思えない。どんなに売れようとも貴教はネガティブなのである。
「俺が一体何をしたっていうんだ?」
そんなある日、貴教が自宅で寛いでいると、玄関の方でドアを蹴破る様な音がした。
嫌な予感しかしない。
案の定、彼の目の前に姿を現したのは“テ〇アイ”達だった。
「お前ら。一体今度は…」
言い切る間も無く手錠を嵌められた。
戦慄を覚えた。
次いでアイマスクとヘッドフォンをさせられた。
戦慄を覚えはしたが、〇西人の悲しい性が貴教に叫ばせていた。
「今度は電波〇年かい!」
貴教は強制的に連行され車に乗せられた。
「今度は何の企画をさせんねん!」
車の中に放り込まれた当初は、「いい加減にしろ!」、「今すぐ下ろせ!」、「どこに連れて行く気だ?」等と叫んでいたいた貴教だったが、直ぐに其れも無駄だと解かった。だって、ヘッドフォンから流れてくる大音量のおかげで、たとえ黒服が何か答えてくれていたって聞こえないんだもの。
どれだけ車に乗っていただろうか。唐突に車が止まった。
「おい。降りろ!」
幾らか歩かされ、エレベーターに乗せられ、また少し歩かされ、何段か段を登らされた。其処でヘッドフォンとアイマスクを取られてみると…、
ただ単に稼働時間(分量)が短いという意味だけですが。“one second TRANS-AM”が“Ⅰの3”限定発動なのに対して、
【以下、少々ネタバレです。知りたく無いという方は読まれない方が良いと思います。削除した方がよろしいでしょうか?】
“フォロンでは無くV-MAX”は“Ⅰ”の最後に正体が明かされ発動。“Ⅱ”全編で展開されるという構造を想定しております。物語で主人公と両輪として。実際肉付けーー書いてみたら分量的にそれ程でもなかったという事はあるとは想いますが。あくまでも筆者が切り札として想定しているはそちらなので。




