Ⅰ 2-1-2
両親は若くして結婚、共働きだったこともあり、貴教は近所に住む母方の祖父の下に預けられる事が多かった。
明治生まれの警察官――浅黒くて、ざっくばらんで、兎に角、豪快。お酒が大好きで、明るくて、面白いアイデアをいっぱい持っていて――どちらかというと内向的で引っ込み思案だった貴教にとって、じいちゃんは、憧れであり、太陽であった。だから、将来はじいちゃんになりたかったんだ。 週末になるといつもじいちゃんのところに遊びに行った。一緒になって軍歌を歌ったり、スーパーカ〇の荷台に乗っけて貰い、あちこちに連れて行って貰ったり。竹トンボや割り箸ゴム鉄砲を作ってくれるのはあっという間だし、絵を描くのが好きだった貴教の為に、新聞には挟まっている裏が白いチラシを集めておいてくれて、「これに好きなだけ描きな」と渡してくれたりもした。家の間取りのチラシを見る様になったのも此れが最初だったのかもしれない。お風呂に一緒に入ると必ず浪曲を歌わされのだが、カラオケボックスが普及する前は、エコーが効いた風呂場程喉を鍛えるのに適した所等他に無く、訳も分からないまま、子供なりに一所懸命唸っていたのは、後の貴教のキャリアを見るに、或いは絶好のトレーニングの場だったのかもしれない。じいちゃんが石鹸で顔を洗っている最中にパッと目をあけるのは怖かった。怖がるのを面白がっていつもパッと目を開けるんだ。百迄数えないとお風呂から上がらせて貰えないから、じいちゃん好みの熱いお湯に肩迄浸かり、浪曲を唸ったり、怖がったり、真っ赤になりながら一生懸命百迄数を数える……。




