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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第二百九十五話 国王陛下も色々大変

今年最後の投稿になります! 本年もお世話になりました! 良いお年を~。


「……あー……アルベルト?」


「なんだ、アベル!! なんか言いたいことがあるのかっ!!」


 フーフーと鼻息荒く、アベルに詰め寄るアルベルト。その姿はまるで怒れる獅子の様で正直アベル的にはちょっと怖い。そんなアルベルトを『どーどー』と宥めながら、アベルは視線をブルーノに向ける。


「……なあ、ブルーノ? これ、マジ?」


「……多分そうだろう」


「コイツ、目が濁り過ぎじゃね? 何にも見えて無いんじゃねーか?」


 アベルとブルーノの憐憫の籠った瞳。そんな円らな瞳に見つめられたアルベルトが、少しだけたじろんだ様子で一歩引いた。


「な、なんだよ、お前ら? 二人してそんな目で俺を見て……」


 不意におろおろし出すアルベルト。そんなアルベルトに、アベルとブルーノは二人で目を見合わせて――『お前が言え』『いや、お前が言え』『なんでだよ! お前が言えよ!』みたいな視線の応酬の後、『王命!』『あ、ずるい!!』というアイコンタクトで会話を終わらせると、生贄に差し出されたブルーノは小さくため息を吐いてアルベルトに向き直る。


「……アルベルト」


「な、なんだよ、ブルーノ? そんな目で俺を見て? な、なんだ?」


 おろおろし出すアルベルトに、ブルーノが諮詢したのは一瞬。



「クラウディア嬢な? ルディ様にベタ惚れだぞ?」



「………………は?」


「いや、だから……って言うかお前さ? 見てたら気付かないか? 俺もアベルも直ぐに気付いたぞ?」


「み、見てたらって……」


「クラウディア嬢、何時だってルディ様の後ろを付いて回って、『ルディ、ルディ』と片時も離れません! みたいな態度取ってたじゃないか。あれ見たら普通に気付くだろう?」


「……」


「……なんだ、その間は」


 ブルーノの呆れた様な視線と指摘に、気まずそうに視線を逸らして。



「…………見ていない」



「……は?」


「だ、だから! 見ていないんだよ!! そりゃそうだろうが!! 自分の娘が自分以外の男に、こ、好意的な視線を向けている姿なんて見たくないに決まってるだろう!!」


「……何言ってるんだ、お前は」


 心底呆れた様なブルーノ。そんなブルーノ態度にカチンと来たのか、アルベルトは口角から泡を飛ばす勢いで声を張る。


「お、お前の所もアベルの所も男兄弟ばっかりだから分からないんだ!! 良いか!? ディアは小さい頃は『わたくち、おとうさまのおよめさまになりたいです!』って舌足らずな声で私に囁いてくれた、俺の天使なんだぞ!! その天使が、他の男の事を、す、す……す……――よ、嫁に行くんだぞ!! そんなもの、目の前で見せられたら死ぬぞ!!」


「……死なないぞ? っていうか、『好き』くらい、普通に言え」


「言えるか!! 死ぬんだよ、精神的に!!」


「……むしろ、嫁に行く方が精神的にキツイんじゃないのか?」


「そっちもキツイに決まってるだろう!」


 そこまで喋り、『はぁ』と息を吐くアルベルト。


「……だがな? そうは言ってもウチはメルウェーズ家だ。ディアが幾ら可愛いと言っても……流石に、国家の平穏には変えられん。だからこそ、アベルの所のクソ息子に嫁がせることも了承したんだ」


「クソ息子って」


「クソ息子って……」


「ウチの可愛いディアを公衆の面前で婚約破棄しやがったんだぞ!! クソ息子で充分だ!!」


 確かに。


「……だから、ディアに無理に王家に嫁ぐ必要はないって言ったんだ。あんなに辛い思いをしたディアに……これ以上、辛い思いはさせたくなくてな」


 しばし視線を伏して、瞑目。


「……だが、それこそディアにとってつらい思いだったのか……好いた男に好きと言えず、好いてもいない男の下に嫁ぐ……しかも、その好いた男の弟に……なんて不憫な!」


「……貴族同士の結婚では良くある話じゃないか?」


「しっ! 黙れ、アベル!! 折角アルベルトが自分自身で色々納得しようとしているんだ! 要らんことを言うな!!」


「……」


「……だが、ルディ殿下に嫁ぐ事がディアの幸せなら……此処は俺がぐっと我慢するしかないか……」


 一人で興奮して、一人でなんか納得し出したアルベルトの姿に、アベルとブルーノ、ドン引きである。


「……そう考えるとお前の所のバカ息子の婚約破棄はディアにとっては幸せな事だったんだな! お前の所のバカ息子も、中々いい働きをするじゃないか!!」


 何かが吹っ切れた様なイイ笑顔を浮かべるアルベルトに、アベルの額に青筋が浮かぶ。それに気付いたブルーノが慌ててフォローに入る。


「そ、その通りだ! アルベルト、クラウディア嬢は幸せになれる! いやー、良かったな!!」


「……正直、良くは無いがな。出来ればディアはずっと手元で育てたいと思っているし、嫁になど行く必要は無いとも思っているが」


「だ、だがな、アルベルト? クラウディア嬢の幸せが一番だろう?」


「……まあな」


「なら、この結婚には賛成だな!!」


「……そうだな。アベルの所の長男は、次男と違って良識のある男だし……まあ、辛うじて及第点か」


「……おい、アルベ――」


「うおっほん!! そうだな、アルベルト! その通りだ! アベル、そう思うだろう!!」


 視線だけで『要らんことを言うな!! 気持ちは分かるが要らんことを言うな!!』という視線を向けてくるブルーノ。ブルーノだって分かるのだ。自分の子供を『クソ息子』だの『バカ息子』だの言われて嬉しい父親なんていないことを。そもそも、その『クソ息子』に婚約破棄をさせたのは、他ならぬディア自身のせいだったりするから余計に。


「……そうだな」


 いろんなものを飲み込んでそう言って頷くアベルも、相当に苦労人である。



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