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それぞれの覚悟

 一晩明け、次の日は丸一日普通の休暇を過ごした。

 グレンやレイラから他の家族の話を聞いたり、カイル、フェイル、リーン、アリシャの四人と買い物に出かけて服や食べ物をねだられたりもした。

 リアンの妹のシスタはその日も部屋から出て来なかったけれど、モナ姉が「何とかするから心配しないで」と言ってシスタに付き添ってくれていた。

 こればっかりは立ち直るまでにどうしても時間がかかってしまう。

 この家にいつまでもいられない僕よりもモナ姉たちにシスタのことは任せることにした。

 そんな休日を久しぶりに過ごし、更に一日経った二日後の早朝。


「それじゃあね、みんな」


 二日間の滞在を終えて、《アクアガルド》に戻る前に家の前に家族全員揃って僕の見送りをしてくれていた。


「せっかくの休暇なんだからもう少しゆっくりしていけばいいのに……」


「任務があるからなるべく早く戻らないとダメなんだ。またそのうち帰ってくるよ」


 そう言って、引き止めようとしてくれたアリシャの頭を優しく撫でると、サイドツインテールの赤い髪が僅かに揺れる。

 後ろにいたサラに目を向けると目元が僅かに赤くなっていた。

 きっと昨日の夜にまたリアンのことを思い出して泣いたんだろう……。


「サラ。僕、頑張るから」


「うん。応援してる」


 僕はそうしてみんなに見送られ、《アクアガルド》へと戻っていった。



 *



「第一部隊・ロウ=メディウム、ただいま戻りました」


 家を出たその日のうちに《アクアガルド》に到着し、馬車を降りたその足でルクス隊長へ帰還報告をしに来ていた。


「随分早かったな。まだ二日しか経ってない」


「任務もあるのでそんなに休んでいられないと思いまして」


「そんなの気にせずにもっと休んでもよかったんだぞ。もう大丈夫なのか?」


「はい」


 そう応えると、隊長は僕の目を真っ直ぐに見てきた。

 僕も隊長の目を真っ直ぐに見つめ返す。


「……そうか。そんな目が出来るならこれ以上何も言わない。よく戻ってきたな」


 隊長がこちらに手を伸ばしてきたので、その手を取り、力強く握手をする。


「じゃあ、早速で悪いが次の任務の話だ」


 任務内容が載せられている用紙を差し出してくれたので、その用紙を受け取り、文章にざっと目を通す。


「一週間後の遠征任務。休み明けでいきなりハードだが、行けるか?」


「もちろん大丈夫です。了解しました」


 今なら断ることも出来るだろうけれど、大まかな内容だけとりあえず確認して僕は任務を受けた。


「……」


「ん?どうした?」


 少し気になることがあったので任務の用紙を持ったまま訊こうか悩んでいると、それに気づいたようで隊長から声を掛けてくれる。


「何か気になることでもあったか?」


「任務のことではないのですが、その……フィリスさんの方は大丈夫そうですか?」


 リアンと一緒に任務に行ったアベルさんの死に最も傷ついていたフィリスさんの様子が休み中もずっと気になっていた。

 家族同然の親友を失った今の僕にはフィリスさんの気持ちがよくわかる。

 講堂で泣き叫んでいたあの様子では後を追って自殺なんてことにもなりかねないんじゃないかと心配していた。


「……さあな。こればっかりは俺たちが何を言っても意味がない。お前がしてきたようにフィリスが自分で心の整理をして、どうするのか決めることだ」


 僕にはサラやモナ姉、リューゲさんたちがいてくれたからこうして立ち直って戻ってこられた。

 けれど、フィリスさんにはそんな人たちが周りにいてくれているのだろうか……。


「まあ、でも、そこまで心配しなくても大丈夫だろ。このまま戦意喪失して脱隊してしまう可能性もなくはないが、フィリスならきっと乗り越えて戻ってくるさ」


「そうだといいんですけど……」


「……お前に言うことじゃないとは思うんだが、戻ってきたらちょくちょく気にしてやってくれると助かる」


「もちろんですよ」


「じゃあ、一週間後の遠征任務頼んだぞ」


「はい!」


 それからひと月後。

 ルクス隊長の言った通り、時間はかかったけれど、フィリスさんが対魔王十一魔導部隊(アルゴノーツ)に戻ってきた。

 戻ってきたフィリスさんはアベルさんの(かたき)を打つ為に以前にも増して任務や訓練に精を出していて、そんな姿をフィリスさんらしいなと思いながらも、僕も負けないようにより一層強くなる為の努力をひたすらに重ねていった。


 ――もっと……もっと……もっと……。


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