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一時の別れ

 俺とロウの勝負終了後。

 勝負で荒らしてしまった地下室を俺の錬金術で元の状態に戻し、俺たちは武器屋をあとにした。

 当たり前と言えば、当たり前なのだが、俺とロウの勝負を見ていたメルさんが俺の錬金術の戦闘を見てから俺のことをかなり怪しみ、初めよりも更に警戒していた。

 店長から俺の錬金術は相当な腕だと聞いていたらしいけれど、メルさんが想像していたよりも俺の錬金術の戦闘技術が遥かに上だったせいだろう。

 あれはこれから信用してもらうまでなかなかに時間がかかりそうだと思った。

 そして、今は晩も開けた早朝。

 俺とロウとサラとモナ姉の四人は早起きをして、街の入口までやって来ていた。


「それじゃあまたね、二人とも。任務頑張ってね」


「うん。みんなによろしくね」


 二泊三日の滞在を終え、サラとモナ姉が帰る時間だ。

 お別れの挨拶をしているロウとモナ姉を見ていると、サラが俺のほうに近寄ってくる。


「リア」


「なんだ?」


 口元に手を当てて、耳打ちをするジェスチャーをしてきたので、耳打ちがしやすいように腰を少しだけ落として高さを合わせる。


「あの武器屋の人、気をつけて」


「ん?武器屋の人……?」


 一瞬、店長の顔が頭を過ぎったが、直ぐにもう一人のことを言っているのだと気が付く。


「もしかして、メルさんのことか?」


「メ・ル・さ・ん〜!?」


 普通に確認しようとしただけなのだが、予想外のところで驚かれ、何故かサラが不機嫌な顔になった。


「昨日が初対面じゃなかったの?!」


「へ……?」


 昨日、俺とロウが戦っている間にメルさんと何か話したんだろうか……。

 よくわからないが、なんか怒ってるし話を合わせておくか……。


「……そ、そうだ。昨日が初対面……」


「今の間、なに?なに隠してるの?」


「いや、何も隠してないって……」


 俺の浅はかな考えはすぐに見破られ、ジト目で詰め寄られるが、俺はそう言うしかなかった。

 サラの後ろでロウとモナ姉が話している。


「何かあったの?」


「サラちゃん、昨日の金髪の女の子にヤキモチ妬いちゃったみたい」


「あ〜」


 あ〜、じゃない……。

 二人ともそんな暖かい目で微笑ましそうに見てないで助けてくれよ……。

 ロウとモナ姉に助けてくれと視線を送るが、二人はニタニタと楽しそうにこちらを見ているだけで助けてくれそうにないので、自分でどうにかするしかない。


「えっとな……あの人は昨日、店長が紹介してくれてたけど、あの店長のお孫さんなんだよ。俺はあの武器屋に何度か行ってて、メルさんのことは店長から少し聞いてただけだから」


「それって保護者公認ってこと……!?」


「なわけあるか!落ち着け、サラ!ほんとになにもないから!」


 頭が混乱でもしているのか、訳の分からない結論を出しそうになったサラの両肩を掴んで全力で止める。

 その光景を後ろで見ているロウとモナ姉はクスクスと声を殺して爆笑していた。


「ほんとに何もない……?」


「ほんとだ。神に誓ってもいい」


「わかった……信じる……」


 サラはまだ心配そうにはしていたが、そこから先は言葉通り信じてくれたのか、飲み込んでくれた。


「ほら、暗い顔してないでこれ持ってけ。重いぞ?」


 いつまでも暗い顔をしていたサラの頭に持ってきていた麻袋を乗せてやると、本当にそこそこの重さがあるので受け取る時に少しだけふらついた。


「おもっ……!なにこれ?」


「金だ。俺とロウのこの半年間の給料の一部。生活費の足しにでもしてくれ」


「けっこう入ってるみたいだけど、いいの?」


「親父には世話になったからな。これくらいの金を入れるのは当たり前だ」


 俺たちの宿や食事などは全て組織が提供してくれているのでかなり節約ができている。

 俺たちは任務や訓練ばかりで特に金を使うような用もない。

 稼いだ金は溜め込むよりも家に送って子供らの為にでも使ってもらった方が遥かに有意義だろう。


「一応言っとくが、家族全員に渡してるのであって、サラにじゃないからな?ネコババするなよ?」


「ネコババなんてするわけないでしょ……」


「モナ姉、しっかり親父に渡してくれ」


「りょうか〜い」


 冗談でそう言うと、サラは不服そうにもごもごと何かをぼやいていた。


「お客さん、そろそろ出発するよー」


 馬車の中から御者のお爺さんが頭だけを出して二人を呼んでくれたので、モナ姉が「はーい」と言ってそれに応える。

 名残惜しいが、もうお別れの時間だ。


「それじゃあ、元気でな」


「リア、ほんとに気をつけてよ?」


「はいはい、わかったわかった」


 サラの執拗な念押しに苦笑しながらも返事をする。


「そんなに心配ならまた来なよ」


「絶対にまた来るから」


「どれだけ信用がないんだ……」


 ロウの茶化した提案に対して、真顔で応えるサラ。

 あまりの信用されなさに悲しさを通り過ぎて何故か笑えてくる。

 そんなやり取りを交わして、サラとモナ姉の二人は帰りの馬車に乗り込み、家へと帰っていった。

 俺とロウは二人の乗った馬車が見えなくなるまで街の中から二人を見送り、対魔王十一魔導部隊(アルゴノーツ)の宿舎へと戻った。

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