家族談笑
宿から戻った俺はロウとモナ姉の二人と合流し、それから三人で様々なところを見て回った。
露店で売っている食べ物を買って食べ歩きをしたり、田舎にはとても売っていないオシャレな服を着てみたり、通りでストリートミュージシャンが演奏をしていたので立ち止まってそれを聞いたり……。
力自慢と腕相撲をして勝ったら賞金をゲット出来るイベントもやっていたので、ロウがそれに挑戦して賞金を獲得したりもしていた。
モナ姉は幼い頃からあの山奥の家で暮らしていてこんな遠出をしたことがなく、俺とロウもこの街に来てから半年経つけれど、訓練と任務の日々で全くと言っていいレベルで観光などをしてこなかったので、その反動からかタガが外れたように時間を忘れて都会の街を楽しんだ。
ロウの口からサラのために早めに帰るという話が出ていたけれど、それを思い出した頃にはもう夕暮れ時。
三人で「あ……」と思いながら、お詫びも兼ねて、腕相撲でロウが獲得した賞金で果物やお土産をいくつも買って急いで宿に戻った。
部屋に入ると、薄暗くなった部屋で一人、ベッドの上で布団にくるまったまま足を抱えて寂しそうにしているサラがいた。
「遅い……」
「「「ごめん!」」」
三人で全力で謝罪し、今はそんなサラを慰めて、ようやくひと段落ついたところだった。
「ほんとにごめんね、サラちゃん。お詫びにこれどーぞ」
俺とロウとサラの三人で街で何をしてきたのかを話していると、モナ姉が奥から買ってきた果物をカットしたフルーツの盛り合わせを持ってきた。
モナ姉は部屋にある丸テーブルにその皿を置き、サラの額に触れる。
「もう頭痛くない?大丈夫?」
「うん、もう大丈夫。薬も飲んだしね」
「薬?」
「サラ、果物以外にも色々と買ってきたんだが、食べるか?」
俺がサラに渡した頭痛薬の話が出そうになったので無理やり話を変える。
「確かロウが持ってたよな?」
「ちょっと待ってねー……」
ロウが買ってきたものが入っている紙袋をテーブルに置いた。
中に手を入れて、紙袋の中身を一つずつテーブルの上に出していく。
「お菓子が三種類とジュースが三本。半年ぶりで積もる話もあるだろうし、そこの果物も食べながら色々話そうよ」
「あっ、でも、コップがないね。下のお店で借りてこよっか?」
「いや、コップなら大丈夫」
ロウはそう言いながら紙袋の中を漁って、ガサゴソと何かを探していた。
「リアン」
ロウは何かを紙袋から取り出して、俺の名前を呼びながらこちらに何かを放ってきた。
いきなり放られたことに少し驚きながらも放られた物を受け取ると、それは暖炉などに使われる薪だった。
「二人はまだ見たことないんだし、その木でコップ作ってよ」
「それは別にいいが……なんでこんなの持ってるんだよ……」
「昼間に買っといた」
「無駄に用意周到だな……」
ロウの行動に呆れながらも、薪をテーブルに置いて手をかざし、【操光縄】で薪に錬成陣を描いた。
錬成陣に魔素を流し込むと、錬成陣は光を増し、次の瞬間には錬成陣は消えて、木製の四つのコップが出来上がる。
「ほら」
完成度を見てもらうためにコップを一つ手に取ってロウに放った。
「流石ー」
ニスを塗ったりは錬金術では出来ないけれど、市販で売られているものと比べても遜色ない出来のはずだ。
「すっご!今のなに?!」
「錬金術だよ」
「錬金術!?いつの間にそんなの覚えたの?」
それからは昨日、サラと二人で話したように家族の話や俺とロウの近況や任務などの話をして言った。
サラは俺が昨日話したのと同じ内容の話でも初めて聞いたような反応をしていて、酒で酔ったせいで俺との会話をいくつか忘れているようだったのでなんだかモヤモヤして、やるせない気持ちになってしまった。
*
美味しいジュースを飲んで、新鮮な果物や食べたことのないお菓子を食べながら話に花を咲かせ、一時間以上経った頃。
「そういえばさ、ロウとリアってどっちが強いの?」
突然、サラがそんな話題を出してきた。
「ロウだ。俺はロウに勝ったことない」
「そうなの?」
「最近は勝負してないけど、今のところはそうだね。でも、リアンが錬金術を覚えてからはまだ一度も勝負してないし、今やったら負けるかも」
俺とロウは山奥のあの家でそれぞれ自己流でトレーニングを積みながら、何度も決闘形式の勝負をしていた。
これまでの戦績はロウの全勝。
俺は全敗で一度もロウに勝てたことがない。
前まではしょっちゅう勝負をしていたけれど、ここ半年は対魔王十一魔導部隊に入ったばかりで学ぶことが多く、色々と忙しかったこともあって、全く手合わせをしていなかった。
「じゃあさ、試しに勝負……してみたら?」
「いいね。わたしも二人の勝負、久しぶりに見てみたい」
サラが枕を抱きながら少し遠慮気味にそんな提案すると、モナ姉は何故かノリノリでサラのその提案に賛成する。
「そうだね。そろそろ僕もリアンと勝負したかったし、やろっか」
「は?」
当人のロウも何故かノリノリで肩をグルグルと回しながらやる気満々の様子だった。
「嘘だろ?今からやるのか?こんな時間にどこで?」
「この宿の裏に空き地があったけどそこは?」
「アホなのか……。空き地で決闘なんてしたら普通に見つかって捕まるだろ。それに、もしなにか壊したりしたら隊長に叱られるだけじゃ済まないぞ」
「そっか……」
闘技場や修練場でやるのならまだしも、一般人も普通にやってくる空き地で決闘なんてすれば、器物損害や決闘罪で罪に処される可能性すらある。
対魔王十一魔導部隊の修練場は決闘ができる場所の候補としてはありだが、部外者であるサラとモナ姉はまず入ることが出来ないし、そもそもこんな私的な理由で休暇中の俺たちに修練場を使わせてもらえるのかどうかも怪しい。
「そんなにしたいのか?」
「ほら、モナ姉とサラとはまたしばらく会えなくなっちゃうし、見せられるのって今日だけだからさ。できれば、見せてあげたいんだよ」
「そこまでしなくていいよ。一生のお別れじゃないんだから、また今度見せてくれればいいし、ね?サラちゃん」
「う、うん……。ごめん、変なこと言って……」
先程までの盛り上がりからは一転。
明らかに三人のテンションが下がり、どこかガッカリした様子だった。
どことなく暗い雰囲気すら感じる。
「……はぁ……わかった……」
三人のガッカリしている顔を見ているのが嫌になり、ため息をつく。
「三人とも秘密は守れるか?」
俺はその言葉にキョトンとしている三人を連れて、とある場所へと向かった。




