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半年ぶりの再会

 俺とロウが第一部隊に配属されてから半年の月日が流れ、俺たちは毎日のように忙しい日々を送っていた。

 第一部隊に配属されてから初めの二ヶ月は実任務は行わず、任務の際に使うことになるハンドサインや注意点、現在の魔物たちとの交戦状況などをとにかく頭に叩き込むことに従事させられ、その間、体がなまらないように隊舎内にある修練場で第一部隊の先輩隊士の人たちに相手をしてもらいながらひたすら訓練を積んだ。

 朝から晩まで訓練と勉学にまみれた日々。

 よく言えば充実していて、悪く言えば忙殺(ぼうさつ)された毎日を送った。

 三ヶ月経った頃からは簡単なものではあるけれど、実際に任務を行うようになった。

 魔物に襲われた街に行って被害者の方たちを助けたり、単体で街を襲って彷徨っている魔物の退治を任されたり、そこまで激化していない魔物との戦場に派遣されて戦ったこともある。

 そして、今現在。

 半年経った今では相変わらず訓練と任務で埋め尽くされた忙しない日々を送っているけれど、第一部隊にも馴染むことができ、ロウも対魔王十一魔導部隊(アルゴノーツ)の一員としてようやく慣れてきたようだった。

 そんなこんなで第一部隊に配属されてから何とか任務をこなしていたある日。

 午後の訓練を終えると、他の隊士の人から俺とロウを訪ねてやってきたお客さんが来ていると言われ、対魔王十一魔導部隊(アルゴノーツ)の本部のロビーへとやってきていた。


「リアーン!ロー!」


 ロビーに入ると、一人の女性が俺たちの名前を呼びながら、分かりやすくこちらに向かって大きく手を振っていた。


「あっ!モナ姉!」


 手を振っていたのは半年ぶりに会うモナ姉だった。

 ロウが声をかけながら小走りで駆け寄っていく。


「久しぶりだね!」


「二人とも久しぶり〜!ほら、サラちゃんも」


 モナ姉は自分の後ろに服を掴んで隠れていたサラに声をかけ、サラはモナ姉に促されて顔だけを後ろからひょこりと顔を出した。


「……さしぶり」


「あぁ。久しぶり」


 会うのが半年ぶりだからか、サラは俺たちに対して人見知りを発揮していた。

 あんな山奥にある家に何年も住んでいると、他人と関わることが極端に少ないので人見知りをしてしまうのもわからなくはない。

 俺たちに対して人見知りを発揮しているのは、あまりに久しぶりに会うからきっと距離感がわからなくなってしまっているだけだろう。

 少しすればいつも通りに戻るはずだ。

 モナ姉もサラも街に来たからか、いつもは着ていない華やかな服で身を包み、薄く化粧もしているようでオシャレをしていた。

 サラの首には半年前に俺が渡した青色の宝石が付いている指輪のリングネックレスがかかっている。

 どうやらあの時渡してから大事に持っていてくれているらしい。


「モナ姉もサラも元気そうだね」


「それはこっちのセリフだよ〜。二人とも少し体が大きくなったんじゃない?」


「まぁ、毎日のように鍛えてるからね」


 ロウはそう言って腕を曲げて力を入れると、モナ姉はロウの二の腕の力こぶを触りながら「すごっ、カチカチだねー」と感心していた。

 久しぶりの再会を喜んでいる姿を見て微笑(ほほえ)ましく思っていると、ふとあることに気がつく。


「なぁ、モナ姉。親父たちは?」


 周りを見渡したが、モナ姉とサラ以外の姿が見当たらなかった。


「え?他のみんななら家だよ?」


「まさか……二人だけで来たの?」


「そうだけど……。なに?もしかして、なにかまずかった?」


「まずいというか、女子二人だけじゃ普通に危ない」


 人が増えれば、頭のおかしな奴も増え、犯罪が起こる確率も高くなる。

 この街は二十四時間対魔王十一魔導部隊(アルゴノーツ)とは違う国の組織の人間が治安維持の為に街中を定期的に見回ってはいるが、犯罪がないわけじゃない。

 むしろ夜の飲み屋街などでは暴行事件が日常茶飯事、金品の強盗や窃盗も稀ではあるけれど起きている。

 そんな街でサラとモナ姉の二人だけで寝泊まりをさせるのは不安だった。


「確かにそうだね。二人はどれくらいこっちにいるつもりなの?」


「明後日には帰る予定だけど……」


「んー……」


 ロウは顎に手を当てて唸り声を上げながら何かを考えると、すぐに顔をあげて何か思いついた様子だった。


「三人ともちょっとここで待ってて」


 俺たちに一言だけそう言うと、ロウは小走りで本部のロビーを出てどこかへ行ってしまった。



 *



「おまたせー」


 残された俺とモナ姉とサラの三人で適当に雑談をしてどこかに行ったロウを本部のロビーで待っていると、五分ほどで行きと同じように小走りをしてロウが戻ってきた。


「何しに行ったんだ?」


「ルクス隊長に許可もらってきた」


「は?許可?許可ってなんの?」


「休暇の許可だよ。事情を話したら任務は今のところないし、特別にいいってさ。外泊の許可も一緒に貰えた」


「まさか……」


「二人だけじゃ危ないんだから僕らが同行するしかないでしょ」


 ロウはそういうと、親指を立てながら満面笑顔でウインクをしてきた。



 *



 こうして、ほぼロウの強制で急遽(きゅうきょ)、俺たちは二人が帰るまでの二日間、休暇をとることになった。

 とりあえず、もう日暮れなので寝泊まりする宿を探す為に街に出たけれど、どこの宿も空いておらず、最終的に俺とロウが入隊試験を受ける前日に寝泊まりした《金の羊》という宿にまた泊まることになった。


「じゃあ、僕らは隣の部屋で寝るから何かあったら来てね」


「うん。わざわざありがとね、二人とも。手間かけさせちゃってごめん」


「別にいいって。僕らも休暇が取れてラッキーだし。ね?リアン」


「まあ、そうだな」


「それじゃあ、また明日ね」


「うん、また明日。おやすみ」


「おやすみ〜」


 そう言って、男女で別れてそれぞれの部屋に入ろうとすると、


「リア」


 名前を呼ばれ、サラに後ろから服をつままれて引き止められた。


「あとでちょっと……いい?」


 そう言いながら、サラは人差し指で下を指さしていたので「わかった」と伝えると、サラはモナ姉が入っていった隣の部屋に小走りで入っていった。

 俺も自分たちが泊まる部屋へと入る。


「あー、ふかふかぁ〜」


 先に部屋の中に入ったロウがベッドにダイブして柔らかそうな枕に顔をうずめていた。


「リアン、ごめんね」


 持ってきた荷物を部屋の隅に置いていると、枕に顔をうずめたままのロウがいきなり謝ってきた。


「なにがだ?」


「この休暇だよ。リアンの分も勝手に取ってごめん」


「べつに気にしなくていい。どっちみちあの二人を放置するわけにはいかないからな」


 どっちにしろこの方法くらいしか方法がなかった。

 ロウが休暇の許可を取りに行かなかったとしても、結局は俺がルクス隊長に休暇の許可を取りに行っていただろう。

 誰がやったのかが違うだけで同じことだ。

 ロウが謝る必要なんてない。


「明日もどうせ朝に走りに行くんだろ?もういい時間だし、早く寝ろ」


「そうだね。確かにもう眠いや」


 時間的にはまだ日が暮れてから二時間ほどしか経っておらず、まだ寝るには早い時間だが、ロウは朝のランニングのために早寝早起きの生活リズムなので、いつもこれくらいの時間には眠りについている。

 ロウは眠たそうに大きな欠伸(あくび)をしていた。


「じゃあ、また明日。おやすみ、リアン」


「あぁ、おやすみ」


 ロウは布団に包まり、訓練で疲れていたのか、そのまま直ぐに眠りについた。


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