意思。
「お前のお陰で俺は変われたし、救われた。二十年前のあの日、俺はお前を拾い、救ったつもりでいた。だが、実際は違った」
未だ俯き涙を流す雪の頭を雨月は優しく撫で付け、微笑んだ。
それに答えるかのように雪は垂らしていた頭を上げ、雨月の僅かに紫がかった猫か蛇を思わせるその瞳を臆することなく見つめ見た。
「あの日、拾われ救われたのは俺だった。お前があの日、あそこに居なければ俺は自死を賜っていただろう」
雨月のその言葉に雪は涙を流すのを止め、息を詰まらせた。
どうして?
その一言さえ苦しさから出てこない・・・。
「長きに渡り生きると無意味に死にたくなることがある。お前も妖となれば味わうことだろうが・・・」
苦笑しつつそう言った雨月に雪はまた涙を滲ませた。
雪は本当に優しい子だ。
その優しさがこれからも枯れぬようにと俺は願う・・・。
「さて。どうする? 本当に妖となるか? 痛みを伴い、恐怖を感じても」
雨月のその言葉に雪は涙を拭い、大きく頷いた。
「はい。僕は僕の意思でそれを望みます」
そう答えた雪の目は真っ直ぐで澄んでいた。
大丈夫だ。
雪のその目に雨月は否応なくそう感じさせられた。