また笑んでいる。
「雪が望むのなら剣術に武士としての立ち振舞い、人の世の動きに人としての暮らしを俺が教えてやるよ」
高杉はそう言うと瓢箪に入れていた酒を一気に飲み干し、またニヤリと笑った。
それをハハハと笑うモノがいた。
それは小料理屋の店主だった。
小料理屋の店主はさも愉快気に笑っていた。
それを高杉は『うるせぇな』と一蹴し、その場を静かに立ち去った。
「あらら・・・。怒らせてしまいましたね」
小料理屋の店主はそう言いつつもまだ笑っていた。
俺はそれに堪らず苦笑を漏らしてしまった。
全く・・・このお方もヒトが悪い・・・。
「雨月様ー!」
雪のその急な呼び掛けに俺はハッとさせられた。
何があったのだろうとヒヤリとしつつ、慌てて雪の声がした方へと目を向けた。
「見てください! うさぎさん!」
・・・・・はぁ~・・・。
俺は大きな安堵の溜め息を吐き出し、野うさぎを抱き抱えて嬉しそうに微笑む雪をやんわりと見つめ見た。
何事もなくて・・・本当によかった・・・。
俺は心からそう安堵した。
「本当に・・・変わられましたね」
店主のその言葉に俺はキョトンとさせられた。
以前にもそんなことを言われた。
そして、今日もまた同じ言葉を掛けられた。
自分が変わったことは気づいている。
だが、どうしてまた同じ言葉を?
「貴方・・・この頃、自称が『私』から『俺』になっていますし、笑うことが増えましたよ」
小料理屋の店主はそう言うと俺をチラリと見やってふと、微笑んだ。
嗚呼・・・敵わないな。
俺は心の内でそう呟いて目を閉じた。
嗚呼・・・また俺は笑んでいる。
そう感じながら・・・。




