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困らぬように。
「雪に読み書きを・・・ですか? どうしてまた?」
俺の申し出が意外だったのかそれとも俺を試しているのかわからない口調で小料理屋の店主は訊ね返してきた。
俺ははじめに『はい』と返事を返し、少し離れた場所で蝶を追いかけ回している雪へと目を向けた。
「あの子が・・・雪が人としての生きる道を選んだ時に困らぬように・・・です」
俺の言葉に小料理屋の店主は淡く微笑み『わかりました』と心のいい返事を返してくれた。
だが、そこに水を差すモノがいた・・・。
「繋ぎ止めとかなくていいのかい? アレはお前さんのお気に入りだろう?」
そう言ったのはあの人間の男・・・高杉だった。
高杉は花弁を散らす桜の幹にダルそうに寄りかかり一人、花見酒を楽しんでいた。
黙っていればいいものを・・・。
俺は心の内でそう毒吐いた。
俺のその毒吐きを気取ってか高杉はニヤリと笑った。




