その瞬間をその時代を・・・。
「雨月様・・・。僕は・・・僕はこれから妖として生きていきたいです!」
雪はそう言うと下げていた頭を勢いよく上げて真っ直ぐに雨月を見つめ見た。
それに雨月は目を見開いた。
本当にことはどう転ぶかわからないものだ・・・。
雨月は心の内でそう呟きつつも雪の出したその答えに喜べずにいた。
「雪よ。・・・それは・・・俺のことを思っての答えではあるまいな? もし、そうならば・・・」
「違う!!」
雪は雨月の言葉を遮り、キッと雨月の目を見つめ見た。
それに対して雨月は僅かながらもたじろいだ。
「僕の・・・妖として生きたいと言う答えは決して雨月様のことを思ってのものではありません。僕は・・・僕はもっと多くのことを知りたいのです。妖のこと、人のこと、そして・・・この国がどう変わっていくのかをこの目で僕は見たいのです」
この国が・・・どう変わるか?
「時代を作るのはそこに住まうモノたちだと教えられました。それを長きに渡り、僕は見たいのです。子を捨て、子を売る今の時代がどう変わるのか僕はこの目で見たい! 僕のような子がいなくなるその瞬間を・・・その時代を僕はこの目で見たい!!」
ポロポロと涙を溢し、そう訴える雪に雨月はゆっくりと歩み寄り、その場に屈んで優しく雪に微笑んだ。