刀。
青年のその黒い艶やかな長い髪は頭の高い位置で一つに結われ、猫を思わせるそのクルリとした瞳は爛々と強い光を放っていた。
青年は雨月よりも細身でその背丈は雨月よりも十センチほど高かった。
いつの間にか背丈は越されたな・・・。
雨月は心の内でそう呟き、苦い笑みを口元に滲ませた。
それを目にした青年は小首を傾げ、構えた刀の剣先を僅かにぶらした。
それを雨月は見逃さず、青年に迷いなく、斬り込んだ。
ガキィンと鳴り響いたその鋭い音に驚いたのか数羽の小鳥たちが穏やかな蒼い空へと飛び去った。
青年は雨月のその強烈な剣撃を何とか受け止め、苦く微笑んだ。
雨月の重たいその剣撃は青年のその細い身を揺さぶる。
ガチガチと絡み合う二人の刃からは小さな火花が艶やかに生まれていた。
綺麗だ・・・。
青年がそう思うと同時に一際鋭いギィィィンという音が辺り一帯を呑み込んだ。
それは青年の刀が雨月の刀に弾かれた音だった。
青年の刀は春の淡い空に高く舞い上がり、その刀身をキラキラと輝かせ、若草の萌える野へと突き刺さった。
「あっ!!」
そう声を漏らした青年の首筋に雨月の刀の刃がスッとあてがわれた。