第6話<反撃開始>
クラムは寸でのところで剣戟をかわす。
地面すれすれに伏せて己の剣を振り上げた。サッとアルスも攻撃をかわして一歩退く。
「聖騎士アルス!」
「アルス!」
「アルスこそギリーシュの王なり!」
「「うおおおおおおおおっ」」
「なっ!?」
「効かぬか」
「レージュ?」
レージュはミリアを庇って結界を張り巡らせているが、今にも周囲の兵士達にやぶられそうである。
奴らは目を見開いて口はしからは涎を垂らして怒号を放つ。
誰もがアルスを称えて咆哮し、狂気を放つ。
——この野郎!?
クラムの脳内に火花が散る。その瞬間、何かが見えた。
緑の巨体の大男。その体躯に見合った大剣を振り回して同族をなぶり殺していく。
奴は声にならぬ声を上げて、絶叫して無数の剣に貫かれて地に伏す。
取り囲むのは人間の兵士たちだった。
「クラムさまあ!! いやあああっ!!」
「はッ」
意識を引きずり戻され、目の前に火の玉が迫る。
それがミリアがアルスに対して行った攻撃魔法だと判断した。
クラムは咄嗟に地面を転がって、レージュの足元にどうにか移動した。
アルスは剣で炎を薙ぎ払う。涼やかな顔でこちらを見つめていた。
周囲の状況と大きく乖離している。
クラムはじっとりと全身に汗をかいているのを感じつつ、アルスの能力を真似できないかと思考を巡らせた。
すると、すさまじい頭痛に襲われてしまう。
「いたっ!」
「クラム?」
傍で結界を張ってクラムとミリアを守るレージュに呼びかけられて、苦笑を返す。
「あの野郎の力は使い方が理解できねえ。なんか、靄がかかって無理だ!」
「ふむ。ならば、オヌシ自身の力で戦うしかあるまい」
「まあ」
結界の外の兵士達や王はまるでゾンビような動きで迫りくる。
その時、ミリアがおおげさに地面に跪いて叫んだ。
「なんてこと! アルスがクラム様にこんな仕打ちを! 無礼にもほどがあるわ!」
「は、は? いや」
「もういい! レージュ! あなたなんか嫌いだけど! アルスを殺して! 私とクラム様の仲をひきさく奴なんて死ねばいいわ!!」
「ミリアおい!」
「ふははははははっそんなじゃからミリア姫は“聖女”になどなれんのじゃ」
謎に楽しそうに笑った後、レージュは指をパチンと鳴らす。
その瞬間クラムも脳内で今まで行使した力を思い描く。
“無数の転生者のスキル”がクラムの中で発動する。
だいたいが戦場であった雑魚のスキルだが、瞬発力や腕力、特にダグのような怪力は重宝した。
それに、クラムに足りない能力を補ってもらえるのは助かる。
「うおおおおおおおおっ!!」
クラムの全身が蒼い光を帯びていく。
次の瞬間、結界から飛び出し、雷撃のごとく次々と狂った者どもをなぎ倒していった。




