第8話<反撃のクラム>
クラムは夢中で兵士たちを倒していく。ぶん投げる、殴る、蹴り上げる、剣で払う。
周囲では断続的に爆発が起きた。レージュとミリアの援護だ。
それぞれ呪文を唱えて次々に魔力の弾丸を放つ。
視界が縦横無尽に切り替わる中、強烈な殺気を感じて一瞬、足を止めた。
「聖騎士様に逆らうな!!」
「またお前か!」
いつの間にかダグが斧を携えて襲い掛かってきた。
さきほどの戦いでのダメージは軽傷らしい。
クラムは歯ぎしりしてダグの攻撃をかわしつつ、けだもののように群がる男共を打ち倒す。
ふと、視界に城の先端が見えた。
——そうか!
クラムは大きく息を吸い込むと、レージュとミリアに呼びかける。
「俺につづけええっレージュ! ミリア!」
「承知した!」
「クラムさまあ~! 今いきますわ!」
「待て!!」
クラムはダグからコピーしたスキルで奴を放り投げて、周囲の兵士も無様に転がすと、レージュとミリアの元へ光のごとく駆け寄り、その手を取って空高く跳躍した。
一方、その城の奥では、城下町から避難していた国民たちが異変に気付いていた。
シェリーは先日成人したばかりの18歳で、まだ幼い弟と、病弱な母を一人で支えて暮らしてきた。
この城の厨房の手伝いで生計を立てているのだが、最近は魔物の襲撃が多く、まっとうな給金を得ることができていない。
母ゆずりの長い栗髪はすっかり艶を失っている。
避難民でひしめきあう地下の大部屋で、弟と母を必死に励ます。
「ミシェル、お母さん、もう魔物の声がしないわ。きっといつもみたいに騎士様が撃退してくれたのよ」
「そうね」
「じゃあ、もう少しでお家かえれるかな?」
その時、轟音と共に扉が蹴り破られた。
「きゃあああああああ!」
「うわああ!?」
「ひい!?」
巨大な影が迫り、小さなミシェルが魔物の肉厚な手に捕らえられたのを、シェリーは悲鳴を上げて見上げた。
「いやああああっミシェル!!
「たすけてええええっおねえちゃああんっ」
「み、ミシェル!」
力なく伏せていた母も起き上がり、ミシェルに向かって手を伸ばすが、息子がおもらしして泣き叫ぶ姿をむなしく見つめているしかできない。
「グオオォォオッごッごろじゅうっぐっでやりゅううっ!!」
「魔物だああ!」
「な、なんだあの緑のでっかいの!!」
「ミシェルうううっ」
「おねえちゃあああ」
グバアッ!!
巨大な緑の魔物は腐臭のする口を大きく開くと、ミシェルを放り込もうと投げた。
「うわああああああああっ!!」
「ミシェル!!」
シェリーは弟が魔物の巨大な口に放り込まれるのを、膝をつきながらただ見ていることしかできなかった。
——もうだめええっ!!
怖くて目を閉じた時、“ボグ”という鈍い音がして、さらに「さっさとガキを放せ!! きたねえ魔物がっ!!」という、男の声が聞こえた。




