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聖獣達の鎮魂歌外伝~復讐者の物語~  作者: 悠介
一人前

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第四十九話 初めての暗殺

「……。」

 ミルギールから少し北に行った基地、そこの近くに私は潜伏をしていた、今日は初めて暗殺という任務に赴いている日だ。

 街の情報屋であるHから依頼を受けて、師匠から教わったレシピの干し肉を持って、基地の少し南にある森に、私はいま潜んでいる。

 Rという、師匠と同期かそれ以上の年齢の情報屋も紹介されていたけれど、今はRは街にいない、都市を転々とする事で、情報を得たり捌いたり、自分自身という存在を不確定にするという事をしている、と言っていただろうか、だから、今はRには会えない、そう言った時に使え、と言われたのが、街はずれに居を構えている情報屋のHだった。

 その情報屋のHからの依頼、軍の末端である将校の陸軍少尉を暗殺して欲しい、それが初めての依頼だった、終戦から一年、私が得た情報によると、アルマノとベイルが戦争から冷戦に切り替わってから、一年が経ったという話だった、表向きは終戦、和解をしたという話で、だったが、裏ではにらみ合い、冷戦状態になっている、だから、お互いに軍の関係者を削りたいという思惑があるのだろう、誰からの依頼なのか、については聞いていない、それは教えてもらえないだろう、そこに関しては、情報屋としての守秘義務が発生する所だと言っていたし、そもそも情報屋は信頼稼業、べらべらと依頼者の情報を話している様では務まらない、と言っていた。

 だから、別段そこに関して拘りはない、誰からの依頼だったとしても、どんな依頼だったとしても、私の目的に反さない事であれば受ける、それが軍関係者の暗殺だ、というだけで、その背景にベイルの人間がいようが、アルマノの人間がいようが、はたまた他国の人間が介在していようが、構わない。

 私は私の目的を、生きる意味を、生きる為の行動をするだけ、その為に私には情報屋から得られる情報と依頼が必要で、そう言った意味合いでは、ギブアンドテイク、というやつだろう、師匠との関係値もそうだ、いつかは崩れるかもしれない関係、ただ、今は利用し合って都合がいい関係だから利用する、それだけの関係だ。。

「……。」

 初めてする暗殺、はじめてする殺しではない、私はシードルを殺めた、だから、殺すという事に関しては初めてではない、ただ、暗殺という意味合いでは初めての経験だ。

 今まではダミー人形だったり、木の幹を修行相手に技を考案して、技の特訓をしていたけれど、ここから先それは通じない、これから先、私は対人を主として技を使っていく、技術を磨く為にも、私はそれをしていかなければならないだろう。

 アルマノの施政者、大統領を暗殺するその日が来るまで、私は牙を研ぎ続ける、実戦経験を積んで、情報屋達にとって都合が良い、ある意味での信頼関係を築いて、その結果として、大統領の隙を情報提供されるまでにならなければならない、それだけは確かだ。

「……。」

 陸軍少尉、はそろそろ独りになる時間だろう、情報が正しければ、その少尉は独りになる時間が無いと駄目なタイプだ、という話で、一日に一度だけ、独りきりになる時間がある、と情報屋は言っていた。

 私の体内時計は、師匠に正されてから狂った事がない、五年間の修行を経て、私の体内時計は、ぴたりと現実の時計と一致する様になっていた、秒刻みで正しいという所まで来ていたわたしの中の体内時計、師匠ですら分刻みである事を考えるに、私は適性が高かったのだろう。

 現在は午後三時、十五時三十分、そろそろだ。

「……。」

 決して足音を立てず、痕跡を遺さない様にして、森を抜けて、有刺鉄線を乗り越えて基地の中に侵入する、警備の人間の穴、警備が今はいない所から侵入をして、少尉がサボタージュをする為に行く定位置のすぐ近く、まで潜る。

 この時間の隊員達の行動ルーチンは把握している、だから、ここに誰かが来るとしたら、それは少尉だけだ。

「……。」

 息をひそめて、雪に積もられて地面に這って待っていると、足音が聞こえてくる、そちらを見ると、情報屋からもたらされた通りの背格好をした、陸軍少尉が歩いてきた。

 情報屋の言葉の通りであれば、彼はこの後煙草に火を点けて、壁を背にして寄りかかって一服するはずだ。

 吹雪が積もっている中、私の気配を探るのは尋常ではない作業だろう、もう雪に体が埋もれている程度、には雪は積もっている、だから、私の方から動かない事には、彼は私の存在には気づかないだろう。

「……。」

 煙草に火を点けた、壁にもたれて、意識を抜いている。

「……!」

「だ、誰……!がは……!」

 刹那、私は雪の中から飛び出して、アコニートに瞬時に気を練って、刃を形成して少尉の下腹部に刃を差し込んだ、少尉が何か大声を出す前に、貪る流星を繰り出して喉笛を潰す、声を出せなくして、というこの攻撃は理にかなっていると言うのを改めて実感しながら、私は刃を引きぬいて、血しぶきが私を汚す前に、その場を離れた。

「はぁ、はぁ、はぁ……。」

 誰かに見つかる前に、基地の有刺鉄線を超えて、森の中へ戻る。

 呼吸が乱れる、初めて成した暗殺、シードルを殺せたのだから、それは殺す事に関しては何も思わなかった、ただ、暗殺という事柄を出来るかどうか、については不安で仕方が無かった、出来るかどうか、出来なければ私が返り討ちにあって殺されるだけ、誰かに見られていたら、目撃されていたら、証言から見つかって粛清されて終わり、な事はわかっていた、ただ、成功した、と肌で感じていた、目線を感じなかった、誰かに目撃されたという認識にはならなかった、という事は、暗殺自体は成功した、という事になる。

「……。」

 呼吸を整える、すぐにも理を出てしまったら、私は私を怪しめと言っている様なものだ、だから、数日間は森の中に潜伏して、検問が解かれるのを待たなければならない。

 食料は足りるだろうか、水は足りるだろうか、不安は尽きない、実戦が初めてなのだから、修行や鍛錬とは想定も実情も違う、それ位の事はわかっていた、だから、緊張ではなくて、不安になる。

「……。」

 大丈夫だ、誰かに認識されていないという事は、私が森から出ていったとしても、血しぶきを浴びていなければ、怪しまれる事はないはずだ。

 血を浴びていないかどうかを確認する、師匠から言われていた、せけんに埋没するのと同時に、ある程度不可思議な格好をしていろ、と言われて購入した、スカートとタイツ、革のジャケットとストールに血がついていなことを確認する。

 大丈夫だ、血は付着していない。

 心臓がバクバクと音を立てている、それを落ち着けるまで、もう少しかかりそうだ。


「そう、とうとう大統領の暗殺の依頼が来たのね。それで、師匠はどうしているの?私はてっきり、師匠と取り合いになると思っていたけれど。」

「そうさな、Aは別件だ、だからお前さんにお鉢が回ってきた、って話だ。出来るか?K。」

「……。出来るも何も、それを目的に生きているのだから、やるしかないでしょう。」

「なら、情報はたっぷりと仕入れてきた、お前さんに死なれるのは、ちいとばかり目覚めが悪いからな。」

 街に戻ってきていたRの所に情報を貰いに行くと、とうとう大統領を暗殺する、という依頼が入ってきていた様子だった。

 依頼料は国家元首を討つというのもあって、生涯を遊んで暮らせる以上、三世代程度は遊んで暮らしても生きていけるだけのベン、それを師匠が狙わないわけがないと思っていたけれど、Rの言葉が正しいのであれば、師匠はそれ以上の大金が動くだけの仕事をしている、という事になるだろう、それだけの依頼量を得る暗殺、と言うと、もはやベイルや他国の元首を討つ程度しか思いつかないが、だとしたら、アルマノとベイル、両国に対して動きを生み出したい誰か、が依頼主である可能性はある。

 それが誰なのか、については興味がない、それだけのベンを動かせる存在と言うのは限られているとは思うけれど、それに関しては興味がない、ただ、私は第一の目的を果たすだけの準備が出来た、という風に考えた。

「けれど、大統領は警備が厳重だと言っていなかったかしら?それこそ、貴方ですら隙を見出せない程に、と。」

「そうさな、それが半月後、一瞬だけその隙が出来る時間がある、てこったな。お前さんがそこで殺すか、それともまたこの先隙を見つけるまで待つか、についてはお前さん次第だ。」

「……。私の目的は知っているでしょう?答えは決まっているわ。」

「そうさな、お前さんはそういうやつだ。」

 計画を立てる、Rがもたらした情報を基に、計画を立てて、大統領の暗殺という、第一の目標を達成するべく、私は情報を聞いて、それを精査する為にアジトに戻る。

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