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聖獣達の鎮魂歌外伝~復讐者の物語~  作者: 悠介
一人前

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第四十八話 技

「それじゃあ、来月からお願いしようかしら。まだ、会社としての地盤が出来ていないから、そうね、来月の一日から来て頂戴。」

「はい!」

 表向きの顔、として師匠から用意された、貿易商としての仕事、をするにあたって、社員の募集を求人に出していて、今日はその面接の日だった。

 ルーサー、という青年、私よりは年上だけれど、学生を終えてから家業を手伝っていた田舎を出てきて、という青年と面接を終えて、私は会社のビルを出る。

「……。」

 アジトに戻ってきて、アジトの屋根の雪を落として、雪の重みで潰れない様にして、私は街を出る。

 街を出ると言っても、街の外側の森に行くだけだ、何やら魔物という伝説上の存在の住処がある、だとか、凶暴な獣の住処がある、だとか、そう言った噂が立っていて人が立ち入らない森、と言うのは、私にとっては都合が良かった。

 何せ、本当に人気が無い森だ、だから、鍛錬をしたり、技の確認をするのにはもってこいだ。

 まだ、アコニートの本領を発揮できていない、と私は感じていた、だから、私が生き残る為にも、私がこの先をやっていく為にも、この武器の真価を発揮できる様にならないといけない。

「……。」

 星の力にチャンネルを合わせて、気を練って刃を生み出す、それはわかっていた、今こうして森の奥深くでそれをしているのだから、それ位の事はわかる。

 ただ、問題はそこから先、私は貪る流星という型しか使えない、その技一つで生き残るのは、これから先困難だろう。

 ならば、気だというのなら飛ばす事は出来るだろうか、そう思って、イメージをする。

 気で練られた刃、それを射出するというイメージ、それを想像して、アコニートを振ってみる。

 パキ、という音がして、近くの木の幹に傷が入った、成る程、という事はそれは出来るという事になる。

 なら、それを基準として、ナイフの長さから刀の長さまで、それぞれの得意技を作っていかなければならない、木の幹を相手に、人間と名目を立てて、私は技を考案し続ける、取り合えず、先程の射出技については……、羽ばたく彗星、とでも名付けよう。

 ならば、自分と同等かないし格上との戦いにおいて、一撃必殺が効かない場合、対峙して戦わなければならない場合、においての技を、幾つか考案する必要もあるだろう、毒が効かない相手、と言うのも想像が出来ないけれど、万が一アコニートの毒に抗体を持っている相手が敵だったとしたら、毒殺という手段を用いる事が出来ない、だから、その時の為にも、貪る流星以外にも技を持っておかなければならないだろう。

 遠距離攻撃と近距離攻撃、ならば連撃と確殺の技と、諸々考案してって、そして身に着けていかなければ、私は生きていけないだろう、とは感じていた、神に復讐をする、という大仰なお題目を唱えているのだから、それ位の事は出来ないと成し遂げられないだろう。

 考案する技を幾つにするか、普段から使っていくにあたって、という事も考えて、尚且つ強敵に通じる技、それを考案しなければならない。

 出来るだろうか、という悩みではない、出来なければ死ぬだけ、それだけの事、私が出来るか出来ないか、ではなくて、生き残れるか死んでいくか、の話なだけだ。


「これ位かしらね。」

 技を五個ほど考案して、それを型として運び込むだけの反復運動をする、これからはそう言った類の鍛錬が必要になってくる。

 一つ目、天の川の泡沫、これは確殺の技や、アコニートが使えない場合での意味合いを籠めた、体術だ。

 二つ目、冷たい恒星、首元に構えた刀を持って、一撃で敵の体を切り裂くだけの一文字切りを繰り出す。

 三つ目、群がる星々、一撃で倒せないと判断した敵に対して、五月雨突きを繰り出して、失血死するまで出血をさせる技。

 四つ目、水面鏡の星空、これが一番私にとっては難しく、敵が捌くのも難しくなってくるであろう、ステップから繰り出す斬撃、ステップで敵を翻弄して、そこから隙を見つけて攻撃を繰り出す技。

 名前、に関しては、別段意味はない、ただ、使うにあたって名もない攻撃をするよりは、貪る流星の様に、呼称を付けておいた方が扱いやすいだろう、という意味合いだ。

 何故星の名前を付けたのか、ならば何故最初に教わった技が貪る流星、という星の名を冠した技だったのか、偶然とも言えるだろう、必然とも言えるだろう、今の私は星の力を行使している存在、だから、技の名前に星の呼称がついていたとしても、おかしくはないとも言える。

 最初に師匠から習った技、に結びつけたのか、と問われると、それもあるのかもしれない、とは思っている、師匠から習った技が違う名称だったら、もしかしたら違う名称を付けていたのかもしれない、ただ、それだけの事だ。

 たいした意味はない、親しみを込めて技に名前を付けたわけでもない、ただ、その名前が必要だと思ったからつけただけ。

 それを自分自身が勘違いしない様に、私が技一つに愛着なんぞをもって、いざという時に使えない、という事が無い様に、それだけはしっかりと考えておかないといけない。


「ここは変わらないわね。」

 森の中、久しぶりに錆落としの為に森の奥深くにやってきて、四年ほど前からずっと的にしている木々が、未だにその傷を残しながらも枯れていない事に感心する、樹木の生命力を見誤っていた、とでも言うべきか、毒が効かない事に驚いた時期もあったけれど、でも、人間に効く毒だから植物にも効く、と言うのは違うだろう、と考えを正す。

 六つの型、師匠から教わった貪る流星を元にした、私にしか使えない羽ばたく彗星を含めた六つの技、それを磨き続ける事も、今の私にとっては必要な事だった。

 貪る流星だけでは生きていけない、その手の内が知られてしまった場合、それが通用しない相手、にとっては、私は無力になってしまう、という理由と、そもそもが神を打倒しようとしているのだから、それなりに技の種類は持っていても不思議ではないというべきか、持っていなければならないだろう、と感じて考案した五つの技、それらを使う機会は今のところ訪れていない、今のところは、貪る流星一つでこと足りている、ただ、それでは足りない日が来る予感はあった。

 近い将来か、それとも遠い未来か、私がそれを必要とする日は必ずやってくる、その技を必要とする日が来る予感がする、だからこそ、私は鍛錬を怠らない、何処で使う必要が出ても使える様に、何処で何時使わなければならない時が来ても問題が無い様に、私は鍛錬をする、それを欠かすようでは、師匠にすら勝てない。

「……。」

 いつか、師匠と対峙する日が来るのだとしたら、師匠と殺し合いをする日が来るのだとしたら。

 私は迷わないだろう、私は躊躇わないだろう、世話になった師匠、と言っても、敵対したとしたら、それは敵に他ならない、だから、私は躊躇をしない。

 躊躇ったら、私は目的を達成できない、あの凌辱の日々を超えて、厳しい鍛錬を超えて、そして友との別れを超えて、そうして私は生きてきた。

「……。」

 シードルは、いつも星の話をしていた、いつも、星は綺麗で、標星を見ていると落ち着く、と言っていた。

 その言葉に従う訳でもないけれど、私もそうだ、標星と連れ立ちの星を見ていると、何故か心が落ち着く、どんなにざわめいた感情だったとしても、それが不思議と落ち着いてくる。

「……。」

 森からも星は見える、針葉樹林の合間から見える星々、その星々が私に力を与えたのだとしたら、その目的は、その意味は、その意義はなんだろうか。

 それを知らずに使っている、という事に若干の危うさを感じなくもないけれど、しかし、これで良いのだと私は感じていた。

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