回想は終わり、あと少しだけ、時間神の夢は続く。当然ゾンビの放浪も。
手に紙片が触れた時、私の頭に色々な事を思い出す。
(そうでした・・ね、この紙片の所有権を野球帽さんに譲ったんです)
万一の時、命を守れるようにと。
そして、彼女の[復讐日記]には彼女を害した相手の名前が浮かぶ、
彼女が日記と紙片を組み合わせれば、敵の命を確実に奪う事が出来るのです。
「・・それでも、クロノス、あなたが滅びかけていて、日記の所有者が一人になっていなければ・・死神の力も通用しなかったかも知れませんが」
あと二分、日記の所有者は屍食鬼さん一人、クロノス、あなたの望んだ結果は出ましたか?
私は野球帽さんの息を確かめましたが・・なんで笑って死んでるんです。
私達の勝利を信じているから?クソッ!
死んだら負けなんですよ!ねぇ神様、何とかなりませんかね!
「・・そうだな・・・私の演算では導き出せなかった結果だ、
お前達は量子演算を超えた結果を出した・・・正しく結果を示せない演算装置は、
私という神格が消える事で正しく機能するだろう・・全ては結果だ、
結果を前にして、間違った答えを出す演算機械は無意味な存在だ・・」
そんな事は聞いていない、彼女の死を無かった事には出来ないのかと聞いているんです。
「今、この状況である事がすでに簡潔した結果なら、彼女の死は決定事項だ。
仮にこの結果をくつがえせば・・また別の結果が導き出されるだろう」
神を追い詰めた今の状況の全てが・・今の私には他に手段も方法も策も生み出せませんが・・
誰かを犠牲にしなければ続かない世界が正しいのか?
(・・確かに、紙片を手に入れた瞬間はこんな方法が頭に浮かびましたが・・
私には力が無いからって・・クソッ、この状況を受け入れて始めている私は・・・やはり血通わない化け物なんでしょうね)
「運命の前では等しく全てが無力、数億の演算も確定した結果に収束する力を認めざるを得ない・・それが・・結果だ」
「それは違う!けっして違います!たった1匹の蝶の羽ばたきが計算からもれただけ、私と彼女と・犬と・・そのほかにも色々な人間の思惑・感情・願いの強さを数値で表すなんて無理に決っている!だから結果も違ってくるんですよ!」
目に見える、世界に影響を与える程度の小さなバタフライ効果。
それ以下の・・物すら動かさない力学的には、なにも変化も見せないはずの人間の感情だけでも、
未来を変える事が出来る。 それに多分ですが、感情を数値化出来ないから、演算装置はクロノスと言う神格、感情を持つ存在を作り出したのだと思いますよ。
「クロノス神、あなたは長く生き過ぎた。だから、短い命の・・・人間と言う名の生物の感情が理解出来なくなっていたんですよ」
「・・・それ故の・・世代交代か・・なら、これも正しい結果なのだな・・」
ボロボロと剥がれていく鋼鉄の体、ケーブルと鉄と電気と何かの金属結晶。
「さあ、最後の日記の持ち主よ。私の座を受け取れ、世界の時はお前に・・・・」
「いや」屍食鬼さんは即答した。
・・・「いやじゃ困る、私が消える前に新しい神の誕生を・・」
「イヤ」・・・話を終える前に屍食鬼さんは断る。
・・・
イヤ、イヤじゃ無い、嫌、いやは困る、いや、だから・・
「オイ!ソンビ、感情論じゃないんだ、なんとか説得しろ!」
無理だ、力関係上、ゾンビは屍食鬼には勝てない、
それに女性には私は勝てない事が解っているんです。
「・・じゃ・・じゃ、特別に・・そこの鳥、お前はどうだ?神格を有する資格はあると計算するが」
「馬鹿こけ!だれがそんな面倒で窮屈なことするコケッ!勝者がこんな場所で監禁されるような馬鹿するコケッ!」
・・・そう言えば・・「クロノス神、一つ聞きたいのですが・・普段なにをして過ごしていたんですか?」
「・・大体この場所で時間の管理だ、大丈夫だ、体にケーブルを繋ぐから、命にはなにも傷害は無い・・」
便所も食事も睡眠も全部この席で済ますらしい、うわぁ・・・・嫌すぎる。
「衛生面でも問題は無い、生命維持のカロリーも栄養素もチューブで行う。何一つ動く必要は無い。指先も動かす必要は無いのだ、脳の電気反応で全てを管理するだろう」
「ヒト、ソレを地獄と言う」動かす必要が無いのではなく、動けないんだ。
ガラガラと崩れる神の世界、神の神格が死に始めたからか、加速するように神の部屋の壁が崩壊している。
「もう面倒だから、犬でいいじゃんよ。おい犬!ちょっと神さまやってろ!」
「馬鹿抜かせソンビ!女の子もおらん場所で雄が何日も居れるか!」
いや困るですよ、あのヒトの娘さんの病気とかなんとかなるように世界を変えて貰わないと・・
「お前ら・・いやイヤ嫌って、私は神だぞ!うらやましく仰ぎ見られる神だぞ!」
「「「「でもやってて、全然面白く無い」です」やろ?」ですよね?」
コケェェェエエエ!!!」
・・・崩れ去った顔の所の・・・レンズが少し濡れている。泣いてんのか?神さま?「・・ひょっとしてだが・・私は・・可哀想だったのか?」
「「「ウン」」」その場の全員がうなずく、生まれた時からの歯車、世界を管理するためだけの神格は、他に楽しみや喜びが無かった・・知らなかった。
「歩いて」「喰って」「寝て」「夢見て」「笑って」「落ち込んで」「励まされて」
「それが良いです、生きるって事です。ゾンビでけどね、それぐらいはしますよ」
屍食鬼さんが何を夢見てるのかは知りませんが。
・・「ああ・・ああ・・最後で・・最後に・・私は・・ああ」
「待ちなさい、クロノス!あなたは神、時間神なのでしょう?なにが最後ですか!」 崩れきる寸前、崩壊する玉座に叫ぶ!
「神なら、神を名乗るならもう少し気合いを入れろ!死ぬ時くらい後悔なく笑え!
そんなに簡単に神が死ぬな!して貰わないと困る事だってあるんです!
・・そうですよ、私の目を片方貸して上げますよ、このレンズ越しに私の見える世界を見せて上げます!だから後少しくらい・・・そこに・・
いろおおおお!!!」
また少しお金を貯める時間も必要です、人間に戻ったらレンズは抜いて貰いますが、ソレまではそのレンズで人間を、世界を見て、笑っていきなさい。
野球帽さんの魂は、クロノスの力で平和な村の普通の少女に転生を果した。
「彼女のお金は・・14歳くらいになったら手に入るような形で」
「・・アイテムボックスか?そんな世界を変えるような能力を今の私は簡単に与えられん、この空間の時間停滞、崩壊が完了するまでの数分を無理に引き延ばしているのだから」
それでも、本来の数千・数万分の1の演算能力で彼女の転生先を平和で安定した世界に選択出来るのだから。
「ほな・・使用限度が三回程度の限定ボックスならどうや?それなら世界も影響は少ないやろ?」
犬の癖に頭がいい、とんちか?なら私は
「ではこの金貨の袋にメッセージを残しますね・・貴女のお金です大事に使ってほしいとね」
「・・この娘の病は・・」治療方の確立を20年前倒しする事で解決した。
この病で死ぬ人間が世界で約百人減る事になるが。
(それでもね、やっぱり死ぬのは駄目です。どんな現世だったのかは知りませんが、この異世界では、暖かい場所で笑顔で眠れるような人生を・・)
本当に頼みますよ、神様。
過去回想から現在に・・・・




