逃げるゾンビと追いかける屍食鬼。
ソレは自分をタイラー・J・ロメ雄と言った、私と同じように墓場で暮らしていた。犬に追われ、人に追われ、逃げた先で神様に捕まり・・・
「神様って、何?」
「・・自分を神様って名乗るへんた!・ウグッ!ウッ・ウ・・
禁則事項ですか、全くヒトにへんな制約を付けるなんて・・非人道的な」
死者の送り人・夢の国の王・交差路の闇・長老が恐れ敬い[うやまい]名前すら口にする事もできない存在、多分ロメ雄の言う神様はそんな存在なのだろうと思う。
「神様ってどんな感じ?恐い?恐ろしい?冷たくて悲しい?」
「どんな・・そうですね。いじわ!!うぐy!酷く!ウ!ウガ!
・・・メッチャ・スゲェ存在ですよ・・・・・[語彙力]が足らない!」
私が神様の事を聞くと、とても苦しそうに喉を押さえ、死んだような目がグリグリ動く・・・
はぁ・・胸のところがドキドキする。
「神様に会ったのに、なんでこの街にいるの?」
そう聞くとロメ雄はどこか遠くを見つめて、「なんでだろうね?」って答えた。
私の知らない風景がロメ雄の目に写っている、そう思うと自分の住む世界が暗く
ホコリっぽいだけの灰色に見えて来る。
(私の世界は、薄い灰色か、暗く深い灰色だ)そう思うと、ロメ雄のように外の世界を知れば、
あんな風に笑ったりできるのだろうかと、
ロメ雄の見ている目を追ってしまう。
・・ぐぅぅぅぅ・・私のお腹は私の気持ちとは関係無く、空腹の声を上げる。
お腹を押さえ、なんとか音を出さないように頑張るけど、美味しそうな匂いがお腹を刺激する。
やっぱり少しくらいは・・ロメ雄の頭に視線を上げる。
「噛まないでよ?噛んだら殴るからね?」
犬が私に吠える時と同じ目、あれは手を出せばとても痛い事になる目だ。
・・・何度かチラチラ見ていたら四角い堅い足の生えた・・蟹という物を貰った。
表面は堅く、噛んでいると苦いような味のする・・ロメ雄の脳味噌かも知れない。
(少しだけくれたのかな?私がお腹を空かしているから)
少し苦みのある柔らかいミソ、もっとほしくなった。
屍食鬼は人間の脳と心臓を食べる事で、食べた人間の記憶と姿を得る事が出来る。夜を七回過ぎるまでの間だけど、昼間も外を歩く事だって出来るらしい。
じぃぃぃぃぃ・・
まだ食べたい、そんな私に細長い魚?を手渡す。
味は薄いけど、お腹は少しだけ膨れる。私達は人間の食べ物は食べない、美味しく無いと・・・
・死体より美味しく無いと思うから。
ヌメヌメの魚と茹でた野菜・茸、ロメ雄の渡す物を全部食べるとだんだんまぶたが重くなる。
水の下にある都に行った話、沢山の笑顔が集まった村では村長になった話、
塔に登ったり、愉快な人達と戦ったり・・
夢のような話を聞いている内に微睡みが来る、いつもは腹立たしいだけの昼の空気は暖かく、
全身の力が抜けていくよう。
(楽しい・嬉しい・安心・こんな気持ちで眠るのは始めてだ)
・・はぁ・ハァ・はぁ・・
屋台で喰っていて正解でした、まさかグールの街だとは。
灰色の髪と土で汚れた体と服、爪も牙の人体を喰うために有るような形と堅さ。
「アレは駄目です、本能が捕食者だと訴えて警報が止りませんでした」
まさか太陽が上がっただけで寝るとは、私はついているのかついていないのか。
そもそも消化とかしない胃袋から、屋台の食い物を取り出すことになるなんてね。
鵜飼の鵜ですか?私は。
教会の目の前でかっさらわれるとは、おちおち復活も出来ないではないですか。
(危険な街です、早く離れ無いと・・お金はきっと教会への寄付扱いでしょう、仕方ないですがあきらめましょう)
一応ラバーっぽいマスクで顔を隠していますが、ハハハ・人間の皆さん振り向きますよね?
『バカヤロウ!オレはアイドルじゃねぇよ!』って言いたい。
多分アイドル扱いでは無いでしょうが、刑吏を呼ばれるのはマズイ。
早歩きで犬とひよこさんを探さねば。
・・・人面犬と四つ足ニワトリのコンビは、街の騒ぎになると思ってか見付からない。逆に私の方がひとに追い掛けられるしまつ。
追い掛けてくる人型の中に屍食鬼が混じっているかも知れない、捕まってたまるものですか!
「って事があったんですよ。仲間だろぉ助けに来なさいよ!」
「うるさいわ!ワシかて捕まったら、トム〇ルーズ似の犬として見世物にされてまうやろ!
いくらチヤホヤされるからって、一生檻の中なんてイヤやで」
・・・・「こけぇ・・この人臭は・・そうだったのかコケッ」
なにやら物知り顔?のひよこさん、怪しい街なら先に言ってよね。
二匹の仲間を捕まえたのはすでに夕方、人間に追われ・屍食鬼に追われ、隠れながら探すのには苦労しました・・・人間に戻ったらゆっくり探そうなんて、
頭に花畑を作っていたようですね、今朝の私は。
「ああ・・やっぱりいた、私が起きるまで待っててくれても良かったのに」
灰色のグールが赤い夕日に目を光らせ、屍肉を喰らう牙を剥いて笑っている。
その手には、私の嫌いな薄い板を持って。




