ゾンビは明日から本気出す、最初の仕事は交渉人!
沼ははじめは緑に濁っていた、さらに深く潜ると透明度を増してきれいな水に。
五分ほど引き摺りこまれ、ようやく底に付くと、足元にヘドロが溜まっている水底にポッカリと横穴が開いていた。
巨大なビーバー屋敷・ドームと言った方がいい、土と木で積まれ組まれた山だ。
京〇ラドーム30個分くらいの広さを持つ[河童横町]だろう。
札幌ドームで言うとどのくらいなのだろう?・・・うう頭が・・・
なかは水中で有りながら、空気が有る。
エラ呼吸じゃない河童達が悠々と歩いていた。
中は提灯の様な光が街灯となり、昭和を感じさせる電柱とホーロー製の看板が木製の住居に打ち付けてある。
[腹痛・頭痛に多〇製薬][お腹が空いたら田村の牛肉][ぽっぴんQ][電子アイロンの二洋][技術とエネルギーの河童電気]・・・・・
何だか解らない看板に、中年女性や眼鏡男性が商品を持って微笑んでいる。
丁度時間はお昼時なのだろう、子供河童が家に飛び込み
「かーちゃん飯まだー」と、のどかな・・・・。
「へへへ、今日は土曜日で、半ドン授業ってやつでさぁ」
代表河童は微笑ましい物を見るように鼻の下を指で擦った、河童も義務教育が有るらしい、お昼を食べたら友達と野球でもするのだろうか?
夢とかで見るような、自転車の着いた屋根付きリアカーにしばらく乗って、
コンクリート4階立てビルの様相を持つ建物に案内された。
材質はコンクリに似て非なる軽い石材、すべすべだった。
足元は桜色の大理石の上に毛足の長い芝生の様な絨毯が引かれている。
「失礼します、先程連絡したお客様をお連れしました」
代表河童は黒く厚い木製の扉をノックし、鈍く低い声をがする。
代表は声を確認し、ゆっくりを押し開いた。
扉の奥にいた恰幅の良い偉そうな河童が立って迎える。
卑しい太り方ではない、ゆったりとした体格に温和な表情、何より来客を自ら立って迎える態度がこの河童がただものでは無い事を感じさせた。
「外の方には水中は大変だったでしょう?全く失礼しました。どこか御加減の悪い所はございませんか?」
来客のロメ雄に問いかけると、にっこりと笑顔で手を差し出した。
始めまして、河童の横町組合長 西田です。」
「・・始めまして、平 ロメ雄です、精肉問屋の跡取り修行の為に諸国を漫遊して、見識を広めている真っ最中での素晴らしい大沼に立ち寄ったしだいです」
・・・・・・
「王子・・とお聞きしましたが?」
それは故郷での話し、今はただの肉屋のせがれです」
そう今の私は、ただのコックだと思ってほしい。
「なるほど、なるほど」
西田河童は納得したように頷き、重厚なソファーにロメ雄を勧めると、ロメ雄が座るのを確認して自らも正面に座った。
沈黙は金・雄弁は銀、黙っている方が良い場合は口を開かない。
低く渋い西田河童が話し出すまで、ひよこちゃんは机の上に置かれた筒状のお菓子を突いて食べていた。
どうしてだろう?あの筒状のお菓子が応接間に置かれている率が高いのは。
それと私の相方が机を散らかして、申しわけないと頭を下げざるおえない。
「いきなりの頼み事で面食らったでしょう?いえ・・本当に困っているんです。
なんと言えばいいでしょうか、領土侵犯・・に近いのですよ。
その上言葉も通じない相手、外交問題も困りますし。
かといって、このまま置いておけば実効支配と取られかねません。
それだけは困りますと諸外国に訴えても、相手が聞く耳を持たなければ、結局時間だけが過ぎ、相手に実効支配の名目を許す事にしかなりません。
後は戦争しか!そう思っている矢先に、あなたの様に世界常識を知り国際法に通じていそうな外国の方が説得戴ければきっと、きっとあの方たちも理解して下さると思うのです!
それが通じなければ、我々はもう全滅覚悟でも戦は無ければならんのです。
曲げられた歴史、卑怯な実効支配。
温和な我々とて、故郷が侵略の浮き目に遭えば立ち上がると、そう見せなければ、いずれはこの沼全てが侵略の戦火に巻き込まれると。そのくらいの事は子供でも解る状況なのです」
・・・・・・重いな。下手に踏み込むなと、残った脳味噌が言っている。
確かにどこの侵略者も[解放]とか[数千年前に我が領土だった]とか
侵略者の都合で他国に攻め入るのは常だ。
そんな阿呆な都合でやって来た阿呆は、殴るか・脅すかして黙らせるしか無い。
殺るか締めるか、とにかく勝った方が最終的に領土を手にする。
そして勝ち方を間違えれば周囲を巻き込んでの大戦争だ。
それも解らず実効支配を決め込むなら、阿呆の国滅ぶべしと思うのだが。
若くて綺麗な人間を使い、他国の民から軍資金を集める様な狡猾な相手なら、
馬鹿な国民も悪い所があると思ったりして。
言葉の通じない相手との交渉は、時間と準備がかかる
『急がば回れ』『強いては事を仕損じる』
「ロメ雄にまかせるなら数日戴いただこう」
なにか考えの有りそうなひよこちゃんが提案する。
全く考えも無いロメ雄と、事を頼む側の西田河童は提案をのむしか無いだろう。
「そうですな、いきなりのお願いではアレですし。しばらく[河童の横町]にいていただいて・・・・こちら側の状況も理解した上で交渉していただいた方が上手く行くことありましょう」
「交渉は事はソレとして、私もホラあの水に浸かったお陰で体も服もフヤケたままでは話しにもならないでしょぅ?」
アレ・ソレ・ホラと大人的空気の読み遭いで忘れていたが、フレッシュなゾンビのロメ雄の体は土左衛門と言っていいような状態。
「体の3割は水?オレの体は今70%が水だ」と叫びを上げていた。
(実の所、よく煮込んだ鶏肉のように持ち上げだけで骨が!)状態である。
ギリギリの状態を保っている体は、早く・速やかに乾かさなければならない!
ゾンビ存在の急務である。
ようやく、ゾンビが働き始めます。結末までもうしばらく、
落ちが分かった方はご期待してくださいね。




