ゾンビは放置され、マグロの力が炸裂するぞ!
天地左右前後、全ての方向から槍のように降り注ぐ細魚。その全てを打ち、蹴り、弾き、
受け流す。
「完璧な回し受けだ、矢でも鉄砲でも持ってこい、小僧!」
受け即ち、攻に転ず!
回し受けで開いた空間に数歩飛び込み、正拳を放つ。
「バッ!馬鹿な!深開とは巨大な物、そんな深開など!」
目に写らないような速度の拳を受け男がひるむ。
「ならば全て防げぬようするだけだ」
両手で細魚を操る事で速度が上がり、動きも千練され、空中で曲線を描き、
一点集中とフェイント・速度の緩急を使いマグロマンをほんろうしようとしていた。
「・・・すみません・・こっち、めっちゃ突き刺さっているんですが・・」
体中に刺さり過ぎて、落ち武者ゾンビ。くっ!まだ倒れんぞ!
「ロメ雄、的がどんな数だろうと、どんな速度であろうと、自分に当たる数は決っている。
そいつを見極め対処すれば、脅威にはなり得ん」
体力が消耗すれば、飛んで来る魚を掴んで食い、全方位の攻撃は・・
目が!左右の目が別々に動いている?
「散眼やと?まさか古代大陸の秘技まで使うんか!」
マグロマンの蹴りが、細魚の群れの隙間を突いて男を退かせる。
あと・・すっかり説明役だな、犬。まあいいけど。
「良く知っているな陸の獣。さて細魚使い、お前に言って置く、この技が最強と言うなら・・・
本物の強敵には歯が立たたんぞ」
拳を引いたマグロマンは一息強く吸うと、ただ真っ直ぐ空中を打ち抜いた。
グッワ~ン・・~~、波・空気と空間をゆらす波がマグロマンを中心に広がり、
空を飛ぶ細魚がバタバタと落ちて行く。
「?魚人空手?そんな物までつかうんか?まさか!ほんまもんのマグロマンか!?」・・・
ついでに吹っ飛ばされるロメ雄、範囲攻撃はゾンビにまで有効か!
「なるほど、本来巨大になる深開の力をマグロ1匹に集める事で出来た速度と力か。認めよう、
新人、それが貴様の深開だと」
(私・・ダメージ過ぎてボロボロなんですが、なにか?)
取り残されてるような気がする、私だけ?いじめでしょうか?
「ならば、先達として見せてやろう」『千京・細魚の群れ』
ただ多いだけだった細魚の群れは舞い上がり、1匹1匹が鋭い刃の形を取る。
そして散っていったはずの細魚が光りとなって男の体を包む。
「それが本気の姿か、1匹1匹に魚力を集中する事で一撃の鋭さに特化させたのか」
マグロマンの目が光る、強敵を前に笑う事も無く、ただ武人として相まみえた事に感謝しているようだった。
矢のようなきらめきは、殺意のこもった刃の銀線。触れる物は全て切り裂かれる。
そしてマグロマンの背後でズタボロに裂かれるのはゾンビの宿命。。。。。
その眼前で水に映る月のように、刃を揺らぐ幻のようにかわすマグロマン。
「マグロの呼吸・・海水の型、海波」
「ま!まさか、マグロマンは!鬼〇隊の柱、幻の海鬼殺し・[ツナ柱]やったんか!」
・・・マグロ柱?ツナ柱?・・
「鬼を殺すには日輪刀が必要なんじゃなかったのですか?・・ね?」
「・・海で戦うサムライはその刃が塩で錆びぬように・・・この身を刃に研ぎ澄ます.
この拳は蟹の甲羅を砕く鎚、この手刀は鬼を斬る刃とするのだ」
(なにこのまぐろ、格好いい!)そこに痺れる憧れる!
「っと腕がとれる!足が!足が!」よそ見するロメ雄を剣の嵐が襲う。
ゾンビじゃなければ死んでいるぞい?
「!なんだと?魂砕鎚の主人が傷付いても深開が揺るがない・・・
完全な自立独立系の深開か、それとも・・・貴公の魂はこの程度では揺るぐ事が無いと言う事か・・」
ロメ雄を完全に刻み殺すか、マグロを折るまで勝負が付かない。
その事実を確認した男は、最大の魚力を高めて刃にこめる。
「お互い、一撃。どちらが強いなどとは言わぬ、立っていた方が勝者だ」
力が均衡している強者どうし、運・刹那・心・魂・そして勝利の女神の微笑むほうに勝利が傾く、その事をお互いが、分かっているようにうなずいた。
一足一刀の合間、お互いが必殺の一撃を放つ事の出来る距離。
先に動いたのは細魚使いの方だった。
ただ一撃、閃光のような一撃を振り下ろし、引き裂いた空間がマグロマンを二つに割った。
マグロの兜焼き・二つ割り、多分そんな風だったろう。
「やはり・・若い」マグロマンは残像を残すほど早く、地に伏せていた。
「マグロの真の力は、その尾にある」そう、青く太いマグロの尾が刃を打ち折り、
細い両手が地面を掴んでいた。
びびびびびびびびびび、連続の尾びれによる殴打。正面からの一撃を誘い、その刃をへし折り、
尻尾での連続攻撃。
「一撃などと、よくもたばかってくれた・・だが、このてい・・ど・・?」
体中を打たれ、尚も立上がる男の手から剣が落ちた。
「き・・貴様、なにをした?」
吐く息が白い、それに顔色も青白く、ただの疲労とは思えない。
「・・私は過去1度、巨大な・・強力な敵に敗れ自ら凍り付いた。
拳、それ以上の力を得る為に」
「なにが・・言いたい」
「私は自ら凍り付く事で、冷気の力を身に付けたのだ。巧みな蟹漁師よ、お前は幾度私の拳を蹴りを尾びれを受けた?その全てに冷気がこもっている、蓄積された冷気はお前の体力を奪い、
やがて意識を奪う・・お前の負けだ」
言葉通り、男の前身が白く霜に包まれ立ったまま動かなくなった。
格闘型凍結系マグロ、それがめばちマグ朗の真の姿。
素手対武器使いの戦いに、なれていたマグロマンの勝利だった。




