事件は解決する、そして猫には癒される。
「いつも通りさ、
オレは眠くならない程度の晩飯を腹に入れ、報告してから船首に立ってた。
昨日は・・まあ安全帯は忘れたが、その程度の事はよく有る事だ。
どうせ魔物が出れば役に立たんしな。それから・・・」
猫の目でもようやく人影の輪郭が見えるかどうかの暗闇で、背後で声がした。
「寝なくてもいいから・・」とか何とか、船に慣れてない新しい新入りにはよくある事だ、
眠れなくて看板で休んでいたんだろうな。
オレは見ての通り耳がいい、波の合間でも海鳥の声が聞ける程度にはな、
だから一応は意識しながらも海面を見ていたんだ。
そう言ってニコールは△でフワフワな二つの耳を動かす。
(・・・なんだ・・この・・腹の辺りから沸き上がる感覚は・・あの耳・・指を・指を入れて
もしゃもしゃしたくなる!)
隣の男も同じように耳を見ている・・・これが猫の魔力か!
いつも通りの嫌な気配の海だ、海底から不気味な化け物がこっちを見ているようでオレが釣り餌になった気分だった。
そしたら、もう一人甲板に出てくるヤツがいる様だった。
なんでかって?足音は聞こえなかったが扉の開く音が聞こえたんだよ。
船の左右の扉、アレが開くギュキュッて音が聞こえたんだよ。
馬鹿が2人に増えたな、そう思った。
「なんでかって?こんな不気味で真っ暗な外海をわざわざ見に来るヤツは、
馬鹿に決まっているからな。
オレも仕事じゃ無ければ船室でシーツ被って寝ていたいぐらいだ」
それだけだ、オレの見た物は。
後は空が黒から紺色に変わる頃に一班の奴らが出て来て、
それからいやに遅い交代で飯を食ってって時に呼び出されたんだよ。
ニコールの真面目な話も、△の耳がピクピクと動く度に目が向いてしまう。
(・・船長!あんたもか!)
なんだ!この船には猫好きの集まりか!くそっ、格好いい男声なニコー!
すまない、頭をわしゃわしゃしたいなぁもう!
「もう、いいか?」ニコールは髭を伸ばすように頬を拭うと、
大あくびして部屋から出て行った・・・。
「気配を読まれたようだな・・・お前たち、キャットマンはこの船の貴重な癒し枠だ、
眺めるだけにしておけよ」
船長は名残惜しそうに、キャットマンの出て行った方を向いていた。
既に4年は船にいるベテラン猟師は
「いつもの事だ、そう・・いつもの事」と呟き寝床に向かって行く。
「で・・・その時甲板に居たのがお前だ、間違い無いな?」
男はゆっくりと頷き船長を見た、眠いのか感情が読めない動きで棒立ちしている。
「ロメ雄、ヤマザキはお前より一年先輩だが、それでも4ヶ月間きっちり働いて経験も有る。
そんな男が急に失踪したんだ。お前が何かしたとは思わないが、関係が無いとは思えない。
何か知っているか?」
ロメ雄はしばらく考えるような仕草をしたが、全く解らないように首を振った。
「昨日は・・確かに甲板にいましたが・・真っ暗で殆ど見えませんでした。
それに乗船したばかりで自分の班の人ぐらいしか顔も覚えて無いので・・・」
マスクでくぐもった声だが嘘は言ってないように見えた。
確かにオレも余所の班の人間全てが顔見知りか?と言われると怪しいものだ。
現に目の前の男も今日はじめて見たような気がする。それに新入りが眠れなくて、
甲板で休んでいるのもよくある事だ。風貌は不気味だが、怪しむような所も無い。
緊張感が全く無いロメ雄が、棒立ちで斜め上を見上げている。
怪しさは無いがそれでもだ、人間が1人行方不明になっているんだ、もっとコウなにかないのか?
船長も厳しい顔をしているが、特に慌てないのはこの海では人間の一人や二人の行方不明はよくあるなのだろう?
「邪魔すんでぇ」扉のノックが足元で打たれ、ついで少し開いた隙間かオッサンの顔が生え出す。
船長の位置ではそう見えただろう。ッテッツ!
思わず飛び退いたオレローSンは、やけに身体の小さい犬の獣人?が入っていくのを硬直して眺めていたのだろう。
ソイツは目が合うと「ジロジロ見んなや、儂のファンか?」と見上げて言った。
「3班・班長、呼ばれて来たで?なん?ロメ雄、お前も呼ばれとんのか?」
へっ、ソイツは口元を上げ笑い、前に出てちょこんと座った。
「いぬ、・・イヌ=オヤージ班長、君は知らないと思うが昨夜1班の作業員が失踪した。
その事で君の話しを聞きたい」
「!?「!?・・いぬ、お前!名前」」船長の隣でロメ雄の目がクワッと開いた気がした。
ロメ雄はイヌ=オヤージと知り合いのようだ。
「ロメ雄、まあ名前は件はさて置きや、だれがなんて?失踪?なんか関係あんのか?」
「新しく班長になったオヤジさんは知らんだろうが『斯く斯く云々』[かくかくしかじか]だ」
副班長がふにゃふにゃと説明し、オヤジがフンフンと頷く。
「大体は解った、まあこれでも犬の獣人?や班員の無実を証明しつつ、猫獣人なんぞより優秀さも証明し且つ役に立つ所みせたろか!」
「いや犬、お前[人面犬]でしょう!いつの間に犬獣人扱いなんですyo!」
叫ぶロメ雄を尻と尻尾で返事し部屋を出て行った。
「1班の人間、はよ先導してや!儂そのヤマザキはんの顔も匂いも知らんがな」
「ほれ!ロメ雄、ヤマザキはんのベットに儂を置きや」
オヤジはベットのシーツに顔を埋めると[オエェェ]嘔吐き[えずき]
枕を跳ね飛ばす・・・・
「ほなICOCA・・西瓜やったか??」犬はあまりの加齢臭で混乱している!
その場の全員が心に思ったのだろう、空気を読ようにオヤジがベットを飛び降り、そそくさと部屋を出る。
「さっきから一体どこへ向かっているんだ?」
部屋を出た後、デッキブラシ置きやトイレ、食料倉庫をうろうろしているオヤジに副班長が切れ気味で言う。
ソレはそうだろう、ロメ雄達はオヤジの尻と袋を目印について行かなければいけない
状態なのだから。
「そんなん、しらん!儂はヤマザキの匂いを追っとるだけやからな。
でもまあ・・・何となく想像は付くけどな」
最終的にオヤジは甲板でうろうろしてそこで止った、
まるでヤマザキの最後に居た場所がそこであるかの様に。
・・・・・
「ここで匂いが終わっとる・・・つまりそう言う事や」
甲板の縁、丁度ロメ雄が座って夜空を眺めていた反対方向の船の端、
そこでヤマザキは消えた。一体何があったのだろうか?
「それと[コレ]や、1班の班長はん、船長に帰港の準備をお願いしなはれ」
犬の足元におちた木くず、そしてそれに焦点があった副班長が呼吸を止めるほどに目を開き、
足が滑りこけ・逃げ走る犬のように走り去った。
もう少し続きます、ご容赦を。




