オレの名はローSン、24時間365日働くナイスガイ!
「全ての海は外海と繋がってるからな、陸より邪悪で巨大な眷属が多いんや。
それだけや無いで、海に順応した人間共が海賊なってや、
多少の人間殺しても海のせいにするような無法者ばっかりや!」
「いい海賊とかいないのですか?夢とか希望を求めて海に出る海賊は」
力を手にいれて、最高のお宝を目指すような海賊は?
仲間達を集めて旅を続けていく少年漫画のような海賊はいないのですか?
「海賊は悪!能力は人殺し、それが真実や!」
・・・・
「せやけどな・・ワシは少年マンガのような海賊の方が好きでござるよ」
・・・抜刀才はやめなさい!
人が海に出るのは、海産物が陸では高く売れるから。
一年の漁で小さな家が建つ程の稼ぎが出来たり、真面目に働けば5年の刑期が短縮されたりする。
死刑囚などは陸に一生涯上がれない代わりに、船では自由に生活出来るなど。
とにかく命を賭けるに値する仕事。
「普通は五年以内に、海賊に襲われるか・化けモンの腹の中に入るかやけどなぁ」
・・・・・・・・・
ロメ雄は生き意地だけは強い、生き返るまで死なないのです。
船板一枚でも掴まって生き延びて見せる、犬は犬かきで陸まで牽引してもらおう。
『野郎共、消灯時間に入る。繰り返す・野郎共消灯時間に入る』
操舵室からの伝通管が声を上げた。
水平線に月が沈み、日が登るまでの海面が星に包まれた。
「ほなワシは、遅番やからゆっくり寝させてもらいまっさ」
犬が足音少なく船室に向かって行く。
海は昼間も危険ですが、夜の海は最も危険。
月明かりが真上にある時は、船影が海に沈み魔物達を呼び寄せる。
なので船は明るい月夜には出港しない。
逆に新月のような月の無い夜は、船の明かりが魔物を呼ぶ。
船の明かりは全て消されても、気配を感じて集まる亡霊達や、耳の良い魔物に襲われる事もある。
海に出た猟師も、海兵も、真っ暗な海の上で怯えながら目を閉じる。
自分の目に写った星明かりに魔物が気づかないようにと。
月の無い夜の海で明かりを洩らすような馬鹿は、魔物に喰われる前に船から叩き落とすのが海の男の常識となっている。
「ゾンビだから寝なくてもいいんですけど、こう言う時、暇なんですよ」
「そう言うな、世の中の面白い物を見せてくれるのだろ?」
目玉の神様が音を立てる、他の人間が聞いたら声色を変えて話をしている風に見えるのでしょうね。
「やめて下さいよ・・死亡フラグを立てるのは」
神の言う[面白い事]って、絶対私がヒドイ目に会う事に決っていますから。
夜の波間に月の尻尾が伸びてうねっていた。
船は流されないようにシーアンカーを落し、船に結ばれた綱は船が揺れる度にぎゅぃー・ぎゅぃーと鳴いている。
(不気味だ・・本当になにか上がって来ませんよね?)
甲板に出ている物好きは、ロメ雄と海底を睨むベテラン猟師ただ一人。
猫科獣人の男はその目玉をさらに開き、船に近寄る影を見張っている。
いざとなればアンカーの綱を切り落とし、
船の帆を張って逃げる為の重要な仕事を受け持っている。
(・・そう言えば、ようやく普通の人達と仕事してますね・・人間には追われる一方でしたし・・
彼は・・大丈夫でしょうか?)
穏やかな風と潮の香りに混じる魚の腐敗臭、木の燃える揮発臭がフッと流れ、船が大きく揺れた。
瞬間ベテラン猟師と目が有った気がしましたが、ロメ雄は嗅覚は鋭くとも視覚はそれ程では無い。
そして猟師も声を上げず、夜空に船の輪郭が浮かぶまでロメ雄は空を眺めていた。
(あまりジロジロ見るのは礼儀に反しますからね・・・良い夜空です)
何事も無く、夜が明けた。猫科獣人の男はヒゲをよしよしと・・今日は雨かな?
昼飯の少し前の事、1班の副班長がロメ雄達の船室の扉を打った。
その激しさは眠って居る猫すら飛び起こすくらいだった。
「起きてるか!ロメ雄!、早く出てこい」恐ろしい剣幕に引き立たせられ、引っ張るように付いたのは、打ち合わせ等を行なうミーティングルームである。
◇◇◇◇◇
オレの名前はローSん、24時間365日働けるナイスガイだ。
この船に乗ったのも、時給900という週五で8時間働いても生活保護にも満たない給料に飽き飽きし、時給の良い所ばかりを転々とした結果流れ着いた時代の漂流者だ。
ところで飽き飽きと言う単語、コイツは良く出来ている。
なぜって、金が無い状態の人間ならいつも美味い物が喰いたいと思うものだろ?
飢えてひもじい・安い残り物弁当も喰い飽きた。
そんな状態が良く現れた、素晴らしく良く当て嵌まっている言葉だぜ!
「実際付いてたぜ、陸に戻れば寮暮らしで家賃は要らず、健康保険手当も付く職場は多くないからな」
保護なら、家賃手当や医療費補助が付くので下手に働くより良い生活が送れるって聞くけどな! そう国の偉いヤツが言ってたぜ!
「最終的には・・保護で」とかな。
最低賃金で人を働かせる皆さん、若者の働き手が少ないとか御ためごかしの言訳は既に見破られた。
実際は『安い時給でこき使える、健康な労働者』が少ないと言ってるんだろ??
・・・
っとタフガイ代表のオレの紹介はここまでだ!
オレ達一班の猟師は日の出から直ぐ、朝焼けの時間帯からの作業に向け、各自早飯と身支度をして点呼に入っていた。
・・ローSん・
「・・なんだぁ?一人足らねー?」
二度目の点呼でオレと同期に入ったオッサンが居ない、仕方ねーのでオッサンの寝ていた簡易ベットのカーテンを開けた。
加齢臭の充満した寝床には、着替えたシャツと下着が適当に干されているだけでオッサンの姿がない。
「班長ーオッサンは寝てねーっす、まだ飯でも食ってんじゃねーすか?」
て言うか、オッサンの靴が無い。
こんな事なら加齢臭ベットなんぞ空けるんじゃなかった。
報告が終わったオレは自分の作業に入る為、軍手を付けて甲板に上がった。
昨日の奴が集めた、マグロのモツを刻んで針に付ける。
こいつを餌に鯖[さば]とか釣ってマグロの仕掛けに使う為だ。
サビキの要領で、両腕一広間隔で付けた餌を船の後方に垂らし、あたりが有ると釣り上げて木桶に突き刺す。
(鮮度の高い魚はピンと立って、爪楊枝のように射して置けるな)
「オッサン・・まだ上がってこねーのかよ」
ノルマは一人一桶だが、餌が無ければマグロも釣れない。
仕方無いのでオレが釣っておくか、後で酒でも奢らせようかと思いながら釣り糸を垂らす。
それから小1時間、桶三つほど満たしての小休憩の頃だ。
何奴[どいつ]も此奴[こいつ]も忙しい中、副班長がオレを呼びつけた。
「ローSン、お前本当にヤマザキの行方を知らないのか?同室だろ?」
「そんな事言われたって知らないモンは知らないッス、俺以外の同室のヤツにも聞いて下さいッス。
大体その辺の個人事情とか、寝台とか基本関わらないのが同室のルールッスから・・」
あのオッサンどうやら行方不明らしい、まったく迷惑な話だ。
どうせ船の外は海しか無いからな。
飛び込んで魚の餌になるか、船のどこかに隠れて帰船まで待ってるかのどちらかだろ?海がイヤになったとか仕事が辛いとかだろ、どこのガキかよ!
折角の休憩時間を潰され、ふて腐れているオレの後で扉が開く、眠そうな猫獣人と顔の半分・・マスクの上にマスクを付けた男が連れ出され、眠そうに黄色く澱んだ目が合羽[かっぱ]から覗いている。
「で?キャットマン、昨日の夜間監視はお前だったが、その時の事をもう一度聞かせてくれ。昨夜なにがあった?」
「・・・班長・・オレは[ニコール]って名前があるんだ、里では[ニコール=キャットマン]だったが、オレは里から抜けた男だ。[ニコール]と呼んでくれ」
猫獣人は嫌な思い出を噛みつぶすように歯ぎしりして、ぼそぼそと昨夜の事を喋り出した。
いつもの、少し長いコズミックホラー風ジョークが続きます
飛ばしてもいいので気にしないで下さいね。




