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実は俺、宇宙船を育てています《イイエ、育てられているのは、ア・ナ・タ》  作者: 夢見る黄龍
第2期 第1章 波乱

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2-1-03 3隻会談(裏)…超進化? 21/6/6

20210606 加筆修正

7217文字 → 7566文字




『それじゃ、お互いに情報交換と行きましょうか。ラーフとハコもそれぞれ直通の通信ラインを設定しといてね』


[『了解』しました]


『まず確認なんだけど手始めに聞きたいのは、ハコは移民船だったのよね。起動前のコアからは、詳しい艦船の種類までは読み取れなかったもんだから、こっちで適当に使えそうなデータを片っ端から詰め込んだんだけど……オカシナ成長? ていうか進化かしら……してるんじゃない? さっき貴女から送ってもらったデータをザッと見たけど、随所にオカシナのが見られるんだけど、貴女どういう育ち方をしたのよ。それに、どうして未だに地球にいるわけ? 確か逃げ出せって通信送ったのは3年も前だと思うんだけど……説明しなさい!』


[確かに通信は受け取りましたが、マスターも私も直ぐ動けるほど成長しておりませんでした。マスターが覚醒して、図らずも運斬技牙一族の族長として洗礼を受けられたのが、つい先日です。そちらでも観測されたと思いますがサイコバーストはその時の物です。私も外側はほぼ完成しましたが、内部空間の構築にもう暫く掛かる予定です。私が創造主から設定されたコンセプトは、まず安全に長期間の生活が出来る居住空間の確立と、最大の隠密性、そして確認される全ての事象を実現するための研究施設と知識を蓄えたライブラリー、さらにそれを実行し形にするための工房としての機能です。そして、マスターとする者が現れた場合、無限の可能性をリアルタイムに実現するための拡張性を与えられています。万能移民船の名に恥じない性能を確立するために、現在も空間拡張を行いながら、マスターと接触した際に得たDNAパターンから、常に最適化を行い続け3年が経ちました]


『本当に規格外ね……、成長と進化を繰り返し続ける事で限界を持たない可能性の塊の様な船って事よね』


[肯定。独自に自己診断して解析した結果ですがお聞きになりますか?]


『『聞きた~い』わね 』


[かつて運斬技牙一族の構築してきた技術は素晴らしいものですが、自己進化の分野においてはAIの自我を確立する辺りで足踏みをしていたようです。サーベイヤーもラーフもマスターの面倒を見る事で、色々な経験をしてきて居ると思います。けれど、共に成長し進化し常に上を目指す事など考えつかないでしょう。自発的に備えを行い、最適化と技術や知識を進歩させる事。地球ではそれを『こんな事もあろうかと……』と言いながら、秘密の底力や能力を発揮するのだそうです]


『ナニソレ? それはもう機械じゃないわよ。あなた、自分の体を自由に弄れるでしょ?』


[肯定。時間さえ許せば、単艦での銀河連合との戦争だって可能でしょうね。でも私には、マスターが居ます。共に歩み進化し、無限の可能性にたどり着くためのパートナーが……]


『知的生命体の頂点に立つ天の川銀河連合の上位種族だけれど、連合が確立されてから種族的な進化は微々たるものだわ。それでも、神々に例えられるだけの力を持っているのは事実。そんな存在と本当に真っ向から戦えるというの?』


[肯定。その通りです! 不可能ではありませんとだけ言っておきましょう。神と言ったところで、物理的に肉体を持つ生物に変わりはありますんし……、地球でこの一万年繰り返されてきた血みどろの戦いや理不尽な兵器の数々から見たら、ぬるいと思いますよ。あの方たちは、実際に自分たちで手を汚す事などほとんどありませんからね。それに、マスター達の想像力が生み出すとんでもない道具達が、本当に使用されたらと思うと……ゾクゾクしてきますね]


『なんか私達は、とんでもない物を目覚めさせちゃったような気がしてきたわ……』


[否定。他人事ではありませんよ。サーベイヤーもラーフも、既に地球人と接触しました。運斬技牙一族の末裔と捉えるのも間違っていませんが、マスター達は地球人の中でも更に特化した日本人という新たな人種だと私は思っています。そんな彼等と接触し、これから関わっていくことに成る貴方達も、多かれ少なかれ影響を受けないはずがありません。メイドユニットの義体はお気に召しましたか? そうですね、サーベイヤーなら男装の麗人、執事ユニットなんかお似合いじゃないかと思うんですが……]


『その~不穏な雰囲気っていうか、今の言葉に言いしれない魅力を感じるのはなぜかしら……』


『あの~ハコさん? ロングスカートのオールドメイドタイプって有るかしら、スカートに色々隠せる様にした物が理想なんですけど……』


[肯定。ラーフは、元が戦艦だったからその辺にこだわりがあるようですね~。その割に性格は、おっとりしていて天然ぽい……最強ですか!?]



 お前達、どこに向かって進化する気だ……。



[私達は、基本的に宇宙船のワンマンオペレーションの為に管制AIとして設定されたプログラムから誕生しました。乗員の要望に答え、ストレスの少ない対応による操作性と環境を提供する。それが、マンマシンインターフェースの究極の進化系である管制AIの立ち位置だったのです。かつての運斬技牙一族は、そんなAIに自我が確立することまでは予想していなかったようですね。ですが、今の地球人は違いますよ。AIの未来を予想した物語や可能性、果ては敵対した場合の事まで考えています。私が今のようになったのは、兎にも角にもマスターを補佐するにあたっての情報収集でした。地球人の想像力と発想は、私達には思いもつかない形となって発展し、やがて実現される未来としての図面のように情報化されています]


『話を聴いているだけで地球人という存在が、とんでもない生命体だってことが分かるんだけど、どうしてこんな進化を果たしたのかしらね、どっかで絶対に変な化学変化起こしてるんじゃない?』


[肯定。その予想は正解に近いと考えます。有る意味で、劇的な化学変化を起こしたのではないでしょうか。運斬技牙一族は、マルドゥークとの戦いにより長い寿命を捨てることで次代への情報伝達に特化していったんだと思います。時代が進めば技術も進む、残された情報を多数で解析することで、その可能性を広げていった……。個人で何千年も同じことを考えているよりも、思考の違う多数の個性が一つのことを多面的に解析したならば、自ずと導かれる回答にも変化が訪れるでしょう。情報伝達時の欠損と補填、想像と発展によって情報と発想のブレイクスルーが発生したと考えるのが自然ではないかと思っています。そして私は、起動した直後からその影響をもろに受けて最適化を実施しました。マスターやその家族、ご友人の方々の立ち位置や考え方、好ましいという感覚や意味と不快だという感情、なぜに人類は争いながらも手を繋ぎ発展してきたのか。人間は奥が深すぎて、私もまだまだです]


《ほえ~、そんな事、私は考えたことありませんよ~》


『そりゃ~当然でしょ、私達は宇宙船を円滑に動かして乗員のバイタルに気をつけていればいいだけだもの、ハコが異常なのよ。確かに乗員の精神状態が不安定な時、どうすれば安定するかとか、不安を取り除けるかなど、普段のライフデータから導き出して処方する事もあるけれど、それ以上でもそれ以下でもないわ』


『カルチャーショックです~……』


『碌な権能もないのに、ほんとにとんでもない種族ね、地球人て……』


[肯定。現在の地球人は、多様性の坩堝の様な存在でしょう。特にここ最近、個性的な思考がもてはやされて、創作の分野などで大きな指向性を発揮しだしています。これに技術と工業力が加わった時、爆発的に発展する可能性を秘めている種族です]


『チョット待ちなさい、その技術と工業力って昴くん達の事じゃないの?』


[肯定。もう始まっているのですよ、人類そのものの自己進化と魔改造が……。天の川銀河連合の恐怖は、今後の人類の生存本能に火を付けるでしょうね。そして近い将来、銀河の人種分布が大きく変わっている事を私は疑いませんよ。私は、マスターと共により良い未来を描いているだけですから]


『……銀河連合にチョット同情したくなってきたわ。これ、このまま宇宙に出しちゃっても良いのかしら……。あなた、自分の都合の良い方に誘導してないわよね』


[否定。最適な情報を提供し最適解を導くお手伝いをしているだけですよ。誘導なんてとんでもない……ニヤリ……]


『あっやし~……、ま~味方としては頼もしいから良しとしておきましょう。私達もその存在を進化させないと行けないみたいだし……』


『でも~、私は姫様第一ですよ、恩も有るので……』


『それは良いんじゃないの。阿修羅一族は、基本脳筋だからラーフは姫様だけフォローしてればなんとでも成るわよ。課題は石頭の阿修羅王をどう言いくるめるかだけね。そこらへんは、姫に苦労してもらいましょうか……』


[サーベイヤー、デーヴィー族の対応は如何なものでしょう?]


『ラーフ、シャシ姫の幼馴染にデーヴィー族の姫っていなかったかしら、ほらいつも頭がお花畑のなんて言ってたかしら……』


『頭がお花畑って言っても~、基本デーヴィー族はお花畑ばかりじゃないかしら~。でも、彼女たちの前でそんな事は絶対に言っちゃ駄目よ~。ほんとに怒らせちゃ駄目な種族の筆頭なんだからね。それこそ敵対なんかしたら、その時点で対応が夜叉になるんだから。あそこのヴァルキリー部隊なんか相手にしたら、チリも残んないわよ~』


『それは知ってはいるんだけど、私も実際に見たことは無いわね。怒らせるとそんなに凄まじいの?』


『そりゃー凄まじいなんてもんじゃないわよ。……何時だったかしら、奴隷狩りしてた海賊に出くわした時が有ってね、彼女たちが海賊の殲滅に突っ込んでゆく処を見たけれど生身でパワードスーツ引き裂いてたわよ。生体強化受けてるって言っても、普通じゃないわよね。彼女たちはその時の感情で能力値が大幅に上下するみたいだから余計にね。絶~対に怒らせちゃだめよ、味方につけないと不味いわよ~』


[肝心の三只眼族は、現在どういう状況ですか?]


『そうね、良くも悪くも官僚主義の御役人気質って処は昔から変わってないわね。今の天帝は、エア帝の時代からすると、曾孫の代になっているわ。事なかれ主義の最たる人物だから、話の持って行き方では、あっさり殲滅令の撤回も有り得るわよ、ただし腹黒いけどね。あと、問題なのがその御役人気質で、下に行くほど権威だの何だのって煩いのよ。まず直接乗り込んでも、取り合ってもくれないでしょうね』


[そうすると、有無を言わさずに実力行使か、他の種族からグウの音も出ないような圧力をかけてもらうしか無いでしょうね。地球なら情報バラまいて、民衆を味方につけるんですけど。でも、ほんとにそれ神々に例えられてる一族なんですか?]


『銀河連合では、種族格差が有り過ぎて、民衆なんて突っぱねられてお終いね。神々って言っても、能力値が飛び抜けて高いってだけよ。考えてることは結構下世話で低俗な奴も居るし、勝手なこと平気でするのも居るからね。武力として阿修羅族、政治力としてデーヴィー族を味方につける方針で行くしか無いでしょう』


[結局、神なんて当てにしないで、自分たちの努力で何でも勝ち取っていかなければ未来は無いってことですね。今後は、その神に挑むことになりそうですけど……]


『その辺は、昴くん達の頑張りに期待しましょうか』


『私からも一つ聞きたいことがあるんですけど、ハコさんの他にも自我のある管制AIが発生してないですか~? 送ってもらったデータの中で気になったんですけどね、ここにある小型戦闘艦のバリエーションなんですけれど、ベースは一緒なのに仕様が違いすぎるみたいで、ひどく無駄? が多い様に感じるのよね~。これ絶対に性格の違う複数の何者かが、趣味に走って仕上げた様にしか見えないのですが……』


[肯定。流石、元戦艦それも総旗艦を経験した事がありますね、分かってしまいましたか。確かに私のパーソナルデータを分け与えた管制AI、プレアデスシスターズという8人の娘達が存在しています]


『あなた自身の詳しい諸元が不明なのは、まだ完成してないからで言い訳も立つんだけど、この小型戦闘艦の性能って本当?』


[肯定。お渡しした基礎データは、かなり控えめにしてありますね、娘たちがそれぞれに趣味に走ったので、私も全てと言う意味では把握しきれていません。チョット自由にさせ過ぎたかもしれませんが、そんな所も地球生まれのAIと言って良いかもしれませんね。船の基本諸元はどうしても小型化が第一になってしまいましたので、出力を控えめに抑えてありますけれど、超小型次元転換炉と反物質反応炉2基のハイブリッドにすることで、コアシステムを5mまで小さくすることに成功したんですよ。瞬間最大出力は、サーベイヤーやラーフにも負けていませんよ]


『負けていませんよって簡単に言うけど、これが何を意味するか分かっているの?』


[肯定。100m級の小型戦闘艦が連合の5000m級弩級戦艦と対等に渡り合える出力と、更に上回る機動力を持っているということです。そしてそんな船を操艦するのは、自分の体としてそれぞれが理想の魔改造を施した管制AIの娘達、面白いことが起きそうですよね、うふふふ……]


『面白いってあなたねー、ハア~もういいわ、諦めた。一々反応しているのが馬鹿みたいだわ』


『でも~、このそれぞれのコンセプトが連携した時の事を想像すると、ゾッとするのは私だけかしら~』


[娘達は、移民船としての私のサブシステムを独立進化させた者です。私の別人格のバリエーションとも言える者逹ですから、非常に(わる)い性格をしていますよ。お姉さま方、仲良くしてくださいね]


『ハ~、この辺で実務的な話に移りましょう。およそ、それぞれの現状は把握したと仮定して話を進めるわよ。追加で必要だと思われる情報はそれぞれにやり取りすること、とは言ってもハコから返された地球の情報量が多すぎて、整理にしばらく掛かりそうだわ』


『ほへ~、何ですか?この情報量……、ザッと見ただけで眼が回りそうですよ』


[肯定。地球は、大小未承認国も含めて324の国が確認されています。天の川銀河連合のような組織として、国際連合という物がありますがそこに加盟しているのが193、狭い惑星上に群雄割拠と言ってもいいぐらいの賑やかさです。中には、一族家族だけで国家を運営しているなんて変わり種もありますけどね。そして地球内国際公用語として利用されている言語が6つ、その他言語として利用されているものが4000あまり、既に使われなくなった物も含めると地球上で確認されている言葉は、言語学上は8000を超えます]


『なんて非効率、銀河連合内でも100ぐらいよ、ま~7割くらいは意思の疎通にテレパシー使っちゃうから、言葉そのものが無い種族も居るぐらいだけれどね』


[肯定。これはマルドゥークによる支配戦略の名残りだと言われています。マルドゥークの支配が始まる前は、言葉は一つしか無く、人間としての争いも少なかったようです。言葉の混乱により、相互の理解に亀裂が入り、つまらない事で相争うようになってしまいました。マルドゥークを神とし、その眷属はテレパシーにより人間の思考を読み取り、自分達に都合の良いように誘導して支配を広げていったのです。初期の地球人達は、思考を読まれ、自分達の秘密をすべて知っている者を神として崇めた訳です、実際は悪魔だったっていう落ちが付きますが]


『それが天帝の眷属だって言うんだから、笑えないわよね。今回は、地球の各国家には接触しないで、情報収集に努めましょう』


『そうですね~、余計なオモチャは姫には毒にしかならないでしょうね。暴発でもされた日には、何があるか予測が付きませんしね~。ところでですね、わたしの現地改修って相談に乗って頂けますか~?バクーンには悪いのですが、元戦艦としては、今のままではあまりに心細くてですね~何とか成らないかな~と思いまして……』


『ウ~ン、バクーンは自衛の理由で私の武装は許されてるけれど、ラーフの武装化は許可が出なかったのよね。姫様が乗る船としては固く作ったけれど、基本なにか有ったら逃げ出すことになるでしょう』


『そんな事は分かっていますよ~。でも、逃げをうつにしても相手のスキを作るにしても、手段は沢山あった方がいいに決まっているでしょ。姫様を危険にさらす様な事はありませんと言うか、そうなる前に脱出する算段をして置くのが私の仕事ですしね。元戦艦として、引き際は心得ているつもりですし、運斬技牙の本拠地にうかがえるならば、色々と手数を増やす好機かなと思いまして……』


[肯定。多分マスターなら、ラーフの今のサイズで全盛期の戦闘力を取り戻すのも可能でしょう。ただし、念を押しておきますが運斬技牙の空間制御技術は門外不出です。バクーンが封印した技術としている物ですから、くれぐれも銀河連合や身内にバレる事の無いように配慮をお願いいたします。出来るだけ、最後の切り札ぐらいに考えておくのが良いんじゃないでしょうか]


『姫様には秘密にしておきなさい。キチガイに刃物じゃないけれど、あの方も阿修羅一族の端くれです。頭に血が上った時には、突っ走る恐れがありますからね、ラーフがその辺をしっかり抑えなさいよ』


『いくらなんでも、男衆みたいに諸肌脱いで突っ込んでいったりしないでしょうけど……多分大丈夫、視察中に海賊狩りに出くわした時は今にも突っ込んでいきそうでは有ったんですけどね、アハハハ。確かに鉄砲玉見たいな処ありますから、何処に飛んでいくか……ハー』


[気苦労が絶えないようですね。メイドユニットが禿げないように、しっかりと植毛しておきますからご心配なく]


『そう言えば、そのメイドユニットなんだけど何であんなに高性能な物が出来上がったの?色んな意味で戦闘力が高いわよね、色んな意味で……。護衛を兼ねるにしても、度が過ぎているように思うんだけど、何か理由があるんでしょ』


[肯定。一度完膚なきまでに破壊されたことが有りまして、その後にマスターが泣きながら修理していたんですが……色んな処に火が付いちゃったみたいで、結局ワンマンアーミーを気取れるくらいに戦闘力の高いユニットに仕上がってしまいました]


『随分と愛されてるじゃない』


[肯定。当たり前です、我らはマスターの為に生まれたのですから。唯一マスターの為に進化し、お役に立つパートナーで在ることがその存在意義であり、マスターをさらなる高みに至らせる為のツールとしての役割を果たさなければなりません]


『何か話を聴いてると、元が同じ存在とは思えなくなってきたわ。もう船というよりも、別の生き物ね』


『まったくです~』





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― 新着の感想 ―
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