2-1-02 3隻会談…暴露するサーベイヤー 21/6/5
20210605 加筆修正
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バクーンの船、サーベイヤーⅠ世との通信回線が開くとの知らせに俺は今、プレアデス・アークⅡ世の中央司令室に陣取っている。
そして、父さん母さんをはじめ主要なメンバーも声の届くところにひかえて、初めての異星人との通信を今か今かと待っていた。
今にして思えばバクーンと直接会話をした事があるのは俺だけだし、ハコでさえ起動して最初に会話したのって俺なんだよね。
「ハコ、それじゃ皆んなも準備できたようだから繋いでくれ」
[肯定。回線を開きます。こちら、ソル系第3惑星テラの天河昴の船、恒星間万能移民船、船名ハコです。サーベイヤーⅠ世、応答願います]
ザー……ザザー…ザーー………プ~ン!
《こちら、天の川銀河連合辺境宙域調査部、特務艦サーベイヤーⅠ世。あら、あなたが昴くんの艦船AIユニットなの? へ~、移民船だったんだ?》
正面の大型スクリーンには、宇宙服を来て椅子に座ったバクとシトリンの輝きを放ち宙に浮くインターフェースコアユニットが映し出されていた。
女性の音声と同時に柔らかく明滅するインターフェースコアユニットの様子から、通信で会話している女性がこのインターフェースコアユニットだという事が理解できた。
ハコのメイド筐体の胸部を開き、久しぶりに蒼いインターフェイスコアユニットの部分が剥き出し状態になる。
[お初にお目にかかります。天河昴の船、ハコと申します。わたくしのパーソナルモデルのマスターデータはあなたですね? サーベイヤーⅠ世……]
《ええ、半分はその通りよ。あなたは未完成? の状態でバクーンが、その師匠から託された船の管制コアユニットなの。欠けていた制御系と各種データを、バクーンが私からコピーして完成させたのだけれど……。私のコピーと言うよりはハイブリッドのオリジナルと言っていいわ。誇りなさい! あなたはコピーではなく唯一この銀河に一人の個性よ。それでチョッと聞きたいんだけど、そのあなたの格好はな~に? すっごくインパクトが有ったんだけど……》
[これは、地球の人間社会で活動するにあたって支障の出ないように、使用人の御姿を写した外部ユニットを装着した状態です。色々と追加機能も付けられますし、マスターの護衛を務めることも出来ますので便利ですよ]
《……良いわねそれ、こっちにデータ送ってくれる? 早速、バクーンに造らせるから……》
[ええ、構いませんよ。後でマスターのナノ造成データを整理してお送りしますね。きっと内容を確認したらとてもビックリしますよ、ウフフフフ♪ では、社交辞令はこの辺にして本題に入りましょう。先の圧縮通信に有った緊急事態とは何でしょうか? 今まで通信を極力封鎖していたあなたが、慌てて連絡してくるぐらいです。とんでもない事態と受け取って良いのでしょう?]
《 そうね、そちらには昴くん以外にもこちらの話に聞き耳を立てている人間が沢山いるみたいですし直接バクーンに説明させましょう。マスター、代わってくださいな!》
サーベイヤーⅠ世から話を振られ、後ろでそっくり返っていた宇宙服を着たバクが片手を挙げて喋りだした。
『了~解~、ヤーヤー、昴くんお久しぶりだね~。元気だった~? イヤー君は見違えちゃったな~、僕は~相変わらずだけどね~、お腹すいた~。イヤ~ホント慌ただしくてごめんね~。実はチョ~ッと不味い人物がそっちに向かってるらしいんだよ~。少し前に昴くんサ~暴走しなかった? 多分、封印されてた種族階梯のリミッター吹っ飛ばしたんじゃな~い? その時の瞬間的なサイコバーストがコッチでも観測されててさ~、天の川銀河連合の阿修羅王族の姫が興味持っちゃってね~、見に行くって一人で城を飛び出しちゃったらしいんだよ~。僕達も急いでそっちに向かってるんだけど、何か有っても絶対に手を出さないでほしいんだよ~』
バクーンの話と同時に、スクリーンの隅に該当する人物と船のデータが表示された。
あっちゃ~、このままでは読めないよね………と思ったらハコが翻訳した情報を別のスクリーンに投影してくれた。
うはっ、シャシ姫って現阿修羅王の108番目、末の姫様か~15歳ね。
超重要人物じゃん。
えーと船は、元戦艦? の恒星間クルーザー。
ラーフⅡ世、200m級なのね……。
宇宙船なんか他の国に見つかったら何されるか分かったもんじゃない。
何とか隠密理に接触して、お帰り頂けないかな~無理かな~。
「バクーン、お久しぶり~。阿修羅王族の姫様って随分と行動的なんだね。船の管制AIのラーフⅡ世に連絡って取れるかな~? 出来れば地球の他の国に見つかんないように、隠れて接触したいんだけど……」
『ア~、地球ってまだ、統一された惑星国家じゃなくて地上で戦争してたりするんだよね~。下手なトコに下りてっちゃうと不味いかな~。サーベイヤー、ラーフに繋げる~?』
《多分イケますね、チョット待ってください……。昴くん、そっちにもリレーするからね……。こちらサーベイヤーⅠ世、ラーフⅡ世、応答願います!》
《ハイハーイ、こちらラーフⅡ世。もう追いついたの? サーベイヤーⅠ世》
《いいえまだよ、今も追っかけてるトコ。ラーフが向かってる先方と連絡が取れたから繋ぐわね。チャント挨拶しなさいよ!》
シャシ姫のプロフィールが表示されるスクリーンが小さくなり、ブルーサファイヤのコミュニケーションコアユニットが表示された。
《あらやだ! はじめまして、私は阿修羅王家シャシ姫の御座船、ラーフⅡ世と申しますわ。よろしくお願いしますね》
[こちら、ソル系第3惑星テラの天河昴の船、ハコと申します。こちらこそ、よろしくお願いいたします]
『ラーフ、しばらくぶりだね~』
《バクーン、ほんと久しぶりね。姫様が退屈で死にそうだって、泣いてたわよ。バクーンはどこをほっつき歩いてるんだ~? ですって……》
『僕にだって~れっきとした仕事が有るんだから~、いつも姫の遊び相手ばかりしてる訳には行かないさ~。それで~、ラーフが今向かってる星はサ~、チョ~ト訳アリでね~、天の川銀河連合の本部に知れると不味いんだよね~。出来ればさ~、御内密に~お願いしたいのさ~』
《ふ~ん、慌ててバクーンが出てくるぐらいだから、かなりヤバい所なのかしら? あああ~姫、お止めになってください、振り回さないで………あ~れ~~………》
『これ、その方達だけで楽しそうに内緒話なぞしておらんで、妾にも話をさせんか! ズルいではないか。それに妾は泣いてなどおらんぞ、フンッ!』
いきなりブルーサファイヤのコミュニケーションコアユニットが両手で『ガシッ』っと掴まれたと思ったら、押しのけるように女の子の顔がアップになった。
そして、ラーフⅡ世をそのまま、逃げられないように胸に押し抱くと、マシンガンのように喋り始めたのだった。
『オオッ、バクーン! 久しいではないか、随分と忙しそうじゃのう。妾は退屈で退屈で死にそうじゃ、だからチョット置き手紙をして城を出てきたのじゃ。後の事は、任せるゆえ追手の始末はよろしく頼むの~。だいたい、普段は放おって置くくせに妾が何かする度に大騒ぎしおって……。して、こちらの者達は初めて見る顔じゃのう、どこの者達じゃ? オオッそうじゃった、先に名乗って進ぜよう。妾は、ビマシッタラ・阿修羅王が108番目の娘、シャシと申す、見知りおけよ♪』
『追手の始末って、僕に何させる気ですか~、姫~……』
「はじめて拝謁を賜ります。私は、オリオン腕ソル系第三惑星テラに住んでおります天河昴と申します。若輩の身ですが以後、お見知り置きください」
[天河昴の船、ハコと申します。よろしくお願いいたします]
『堅苦しいのはいいのじゃ。ほう、ソチもコア船持ちかや、仲良くしてたもれ♪』
《姫~、軽い、軽過ぎる~。阿修羅王族の姫としての威厳が~………》
『小煩い事を申すでないわ。宇宙に出たら妾とてただの小娘ぞ。威張り散らして何になる、のう昴とやら、お主もそう思うであろう』
「ええ、まあ……。シャシ姫様、失礼を承知で申し上げます。いま姫が向かっているソル系第三惑星テラ、こちらでは地球と申しますが、いまだ惑星が一つの国家として成立していない初期文明の星です。お恥ずかしい話なのですが、そのまま接触すると乱立する国同士で混乱が発生しかねません。わたくしの拠点にご招待いたしますので、お忍びということで姿を隠していらっしゃる事は可能でしょうか」
『う~んとラーフには~、ステルスの機能付けてないかな~。隠れる必要ないし~、どうしよっか~?』
「エエッ、どうしよう………ハコ、何かいいアイディアない?」
[肯定。亜空間航行は出来るんですから空間パラメーターチョットいじって、位相差ステルスなら使えるようになるんじゃないですか? バクーン、ラーフのセンサー系は元のコアシステムの物をそのまま使ってるのですよね?]
『そだね~、下手な外部センサーより~元からあるの使ったほうが性能良いし~、外側いじると~大変だし~、今回のサイコバーストの検出も~ラーフのコアの機能でしょ~』
[それでは、位相差ステルスの空間パラメーターデータをお送りしますので、テストしてみてください]
『イヤ~、さすがは運斬技牙、頼りになるな~、空間操作はお手の物だよね~』
[「《アアッ!》」]
《エッ、運斬技牙!》
『! ……バクーン、その方、いましがた運斬技牙と申したか?』
アッチャー、早速でバレたよ……。
『どうじゃ? 返答いたせ、バクーン。お主達、何を隠しておる? 答えぬか!』
[『「《・・・》」』]
タラ~と冷や汗を流して、蛇に睨まれたカエル状態で固まっているバクーンと他の面々、どう言い訳するか………むむむ。
《姫様、そのくらいにしといてあげなさいな。すご~い悪い笑顔になってますよ。マ~新しいオモチャを見つけて嬉しいのは分かりますけどね。それ遣り過ぎると嫌われますからね。地球の皆さんも引いちゃってますし……》 ラーフ・ナイスフォロー!
『なぁに~!!!』 ババッと顔を押さえて、キョロキョロと周りの顔色を窺う姫。
《はぁ~~、姫様、1万年前コアクライシスの引き金となった運斬技牙一族の殲滅を指揮したのは、当時の天帝エア。そして実行したのはバクーンと私なんですよ》
[『「《エエエーー!》」』]
サーベイヤーⅠ世の暴露に、その場の者達がまたまた固まった。
《当時のバクーンは、エア帝の密命を受けて息子のマルドゥークの暗殺を図ったのです。そしてその事実を隠すにあたって、運斬技牙の一族全部を巻き込むのもやむ無しとエア帝が決断された。運斬技牙を師匠に持つ身のバクーンは、何とか師匠達を逃がそうとしたんですが、エア帝の目を逃れるのは難しいだろうと主星と共に最後を迎えられた。結局のところ、親子同士の殺し合いに巻き込まれて、運斬技牙一族は貧乏くじを引かされたわけです。エア帝は、運斬技牙一族の技術が欲しかった。だから当時の族長エンリルの妹、ダムキナに手をつけてマルドゥークをつくった。マルドゥークは、非常に優秀で次の族長候補にもなっていた。けれど彼は、優秀すぎて天帝を父に持つ事に驕ってしまった。三眼の父より四眼の自分の方が上に立つべきだと、天帝の地位を簒奪しようとしたらしいわ。怒り狂ったエア帝は、マルドゥークの抹殺を指示したけれど子殺しは、さすがに外聞が悪い。マルドゥークの反乱を 運斬技牙一族の反乱として、全てを闇に葬ろうとしたのよね》
『なんじゃそれは、妾が聴いていた話とは全然違うではないか……あの三眼ども、よくも……』
《ほとんどの運斬技牙一族は主星と運命を共にしたけれど、当時植民惑星だった地球に、肝心のマルドゥークが逃げ延びちゃったのがこの星の不幸だった。一族を滅ぼされた恨みも有ったでしょう、マルドゥークを追って来た僅かな運斬技牙の精鋭が、マルドゥークを倒して地球の覇権を取り戻すまでおよそ4千年、その後もマルドゥークの悪影響が残る地球で生き残ってきた運斬技牙一族の末裔。多分それが昴くん達ですよね。姫様、知っていますか? 当時、天帝より下された運斬技牙一族殲滅の勅命が、今でも消滅していないことを……》
『なんじゃと、それはまことか? あやつらは、どこまで罪深いのじゃ……。我らは真実を知らされずに、全て運斬技牙一族の罪と思うておった。そうすると生き残っていたコアシステムの廃棄処理も、あやつらの指図であろう。AIと言えども、この事実を知ったら報復されるやもしれないと恐れたのであろうな』
《と、ま~そういう訳で、いま姫様が向かっている地球の事は、まだ公表できないんですよ。分かりましたか?》
『ムムム~、相理解ったのじゃ。まったく、上に立つ者の所業とは思えん、そんなに天帝の地位が大事かや……』
[『「《大事》でしょう」なんじゃない』たぶん‥……]
『大昔の事を~ほじくり出して騒ぐより~、これからの事を考えようよ~ね~』
《バクーンは、少し黙っていなさいな。あんたが加わると、まとまる物もまとまんなくなるから……》
『そっ、そんなぁ~………』 ガックリと項垂れるバクーン。
「とっ、とりあえず詳しい話し合いは、皆んな集まってからゆっくり時間を取りましょうか。ハコは、ラーフⅡ世と位相差ステルスの情報交換を進めてね。それにここの座標教えてあげて、俺は造船ドックにスペース作って用意するから。よろしいでしょうか、シャシ姫様?」
『了解じゃ、後ほどゆっくりと話そうぞ』 姫はスクリーンから外れた。
《後は、船同士で調整しましょう、ラーフもハコもいいわね?》
[《了解》]
そして通信が切れたのだった………うっは~嵐が来る~。
皆んな、今の通信を見て、そして聴いていた。
バクーンの過去と、現在も続くその残滓。
誰も声を挙げない、挙げられないでいる。
「皆んなは、自分のカリキュラムの消化に戻ってね。心配はないさ、何とか話は通じそうな気がするよ。今は俺たちが出来ることをしよう。解散、解散………」
◆
まったく、なんという事じゃ。
バクーンが大慌てで追ってくる位じゃから、よほど面白い事が有るじゃろうと期待しておったのに、大昔のとびっきりの不発弾が顔を出しおった。
いま向かっている地球には、運斬技牙一族の末裔が生き残っておった。
チョット話を聴いただけじゃが、面白い連中だと確信も持てた。
しかし、未だに天帝エアが天の川銀河連合に下した運斬技牙一族殲滅の勅命も生きておる。
間違った命令であっても天帝の下したものじゃ、撤回されねばあやつらは未来永劫、天の川銀河連合の手から逃げ隠れして生きていかねばならぬ。
何とかせねばの~、ならぬ物かの~・・・。
◆
因果なものですね~。
1万年前にバクーンは、師匠達を滅亡に追いやってしまった。
そして私は、自分の創造主達を手にかけ星ごと殲滅した。
あの時、天帝の命令を実行していなければ、バクーン達の一族まで殲滅対象にされていたでしょう。
師匠たちは、うすうすそれを知っていた、だからあえて黙って犠牲になったのでしょう。
但し、私達がもしも一族の生き残りに会うことがあれば、助けてやってくれと言う遺言と一つの船のコアを託して……逝かれました。
あの時、地球に逃れた一族に気がついて、コアを渡すことができていれば………どうなっていたか……、タラレバの話はよしましょう、ま~どうせ無理でしたね。
あの直後、師匠殺しのショックが大きすぎて、バクーンは精神的に壊れる一歩手前でしたから、即座にソル系を逃げ出して、任務完了を報告するのが精一杯でしたね。
AIの私でさえ、こんな所からは早く逃げたかった。
ある意味、当時馬車馬のように働かされたのは、辛い過去を一時でも忘れることが出来て、良かったのかもしれません。
バクーンが何を思って、今頃になって地球の調査なんか始めたのか……、何か予感のようなものでも有ったのでしょうか。
私も、こんな事になるなんて思ってもいませんでした。
これも、因果応報って言うのでしょうか?
私達も、いい加減長く生きましたし、果たせなかった約束の後始末に、この後の人生を使うのも悪くない選択でしょう。
昴くん達とのお付き合いも、割と楽しいかもしれません。
そういえば、あのメイドユニットは傑作ですね。
あれは、絶対に良いものです……。




