1-3-04 緊急ハコ会議…議長は母! 21/5/11
20210511 加筆修正
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[今回、希美さまより緊急案件の相談がありました。急ではありますが、緊急動議として定例会議を急遽招集いたしました。発議人として希美さまが議長に着きます。今回、地球人類、特に日本人と一部アジア人に運斬技牙 一族の因子が内在している事がほぼ間違いないだろうとの確証を得ました]
[[[[[[[[おおお~]]]ヤッパリ]]素晴らしい]]]
[静粛に……、そこで後回しにしていた太陽系内の実地調査を繰り上げて行います。まずは収監惑星とみられている今は無き惑星ニビル……の成れの果てと思われるアステロイドベルトの調査に乗り出します。では、希美さまからどうぞ……]
「みんな、急遽集まってもらって悪かったわね。ある程度の謎が解けて、今の我々に迫っている脅威が朧気ながら見えて来たわ。悠長に昴とハコが育つまで待っていられる状況でも無いようだから、少しでも今の我々に出来る事から手を付けて実行に移す事にしました。兎に角、行動する事にしましょう」
[肯定。状況は決して良いとは言えません。希美さま、それで何処から手を付けるのですか? 緊急動議ということは宛てがお有りになるんですよね]
「そうよ、宛てもなく探し回っても効率が悪いだけだわ。手数が限られているんだから無駄を省きましょう。先ず、アステロイドベルトを調べるなら、小惑星No1のケレスを調べて頂戴。みんな知ってると思うけど私の元職場は天文観測所の電波解析部門、そこで昔から七不思議と言われている星よ。アステロイドベルトに有って、およそ1000Kmの直径にしては軽い質量、それにもかかわらず球形を保てるギリギリの重力、外殻の下にマントル運動が確認されているのに低すぎる温度、どうも星の質量の半分は水らしいのよね。おかしいと思わない? 核が鉱物でその周りを液体が覆っているなら分かるわよ、でも中が液体で外殻が在るカプセルみたいな星なんて、自然に形成される過程が想像できないわ」
[肯定。まるで中に在るものを外殻が守っている様な構造ですか……調べて見る価値はありますね]
「後はやっぱり月よね。あんな可笑しな衛星って専門家に言わせたら有り得ないとしか言えないのよね。実物が目の前にあるから皆んな当り前のように納得しているけれど、星の一面だけを地球に向けてるって事は、地球を向いてる方に質量が偏ってバランスしているって事になるのよね。確かに形はいくらか楕円ていうか卵型に成ってるみたいなんだけど、あの大きさであの形にバランスするってことは、余程の質量のものがオモリの役割をしているはずよ。または反対側に空洞が在るか……空洞があるとしたらデッカイ宇宙船って見方もあるのよね~……まさかだけど……」
[肯定。その考え方は当たっているかも知れませんよ、希美さま。惑星ニビルから地球に来るために使用されただろう宇宙船は、まだ見つかっていませんし、火星と木星の間からの距離、超楕円軌道で一番地球に近づいた時を狙ったとしても、通常の物理的な移動方法を取ったとしたら数ヶ月、下手をしたら数年掛かったかも知れません。その間、狭い閉鎖空間では生命維持もままならないでしょう。月くらいの大きさなら、中に都市宇宙船くらい隠して有っても不思議じゃないですね]
「今出来るとしたら、こんなところかしらね。必ず何かしら運斬技牙の遺産と言えるものが見つかるはずよ。もし私だったらそうするもの。残される子孫たちへのメッセージとして」
[肯定。よく分かりました。アルキオネ、貴方はケレスの調査に向かいなさい、改造バスコンに必要な調査機器と掘削用ワーカー2台なら載せられるでしょう。あれなら小型内火艇とほぼ同じ性能ですから、アステロイドベルトまでゆっくり1日もあれば着ける筈です]
[了解しました、お母さま]
[ヒュアデス。貴方は、NASAから月のデータを集めて分析しなさい。多分月に関して隠されている何かが在るはずよ。直接の調査はその後にしましょう。場合によっては、昴さま達に直接ケレスと月に出向いて頂く必要があるかも知れません。もし残されている何かが有るなら、受け継ぐべき資格が問われる筈です。みんな分かりましたね]
[[[[[[[[了解]致しました]]]ラジャー]]]]
「みんな、頼んだわよ!」
◆
賽は既に投げられているわ……。
私の考察が間違っていなければ、月とケレス、両方とも何かしらの痕跡が在るはず……。
運が悪くても何方か一方には何らかの意思が残されている筈だわ。
それにしても、何て面倒くさい事に成っているのかしら?
『知らぬが仏』とは良く言った物だわね。
知らずに居たかったなんて泣き言も言っていられないし……こんなの知っちゃったら、放って置けないわよね?
安心して寝てらんないじゃないのよ、まったく!
昴が仲良くなった相手が、特一級の危険人物だったのにも驚いたけれど、人類終わってたかもしれないなんて……良くやった我が息子!
でも、まだ予断は許されていないわ。
今後の対応を間違えると即地球最後の日が待っている……そして防ぐ手立てを唯一持っているのは我々だけ…でしょうね、たぶん。
幸いな事に敵だった筈の異星人とその宇宙船が味方に着いてくれたらしい事ぐらいかしら……30年の猶予期間て長いのか短いのか私には判断出来ないんですけど~。
私達には、ハコが完成するまで、息子の後ろで指を咥えて見ているなんて事が出来る筈もなく、それじゃ何が出来るのかって言ったら……影から守って自由に動ける環境を整えてあげる事ぐらいしか考えつかなかった。
幸いな事に、譲さんのおかげで日本政府とのパイプも作る事が出来た。
鷺ノ宮先生のコネがどの辺まで効くのかまだハッキリしないけれど、村の分校で小中一貫教育を出来る事が決まったわ。
これからは警護の人達も増えることになるし、キャプテンの関係者との繋がりも太くなってゆくでしょう。
キャプテンと云えばアメリカ、特にNASAに顔の効くNSAとのパイプが出来たのは『瓢箪から駒』よね。
キャプテンが元宇宙飛行士だったのも出来すぎだと思ったのに、NSAの長官が空軍中将でキャプテンの親友ってこれはもう、神がかってるとしか言えないわよね。




