1-3-03 その頃のバクーン…過去の因縁 21/5/10
20210510 加筆修正
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ハコと希美が地下ドックで意気投合している頃、太陽系のあるオリオン腕の隣、サジタリウス腕の外側を彷徨 いているサーベイヤーⅠ世の艦影があった。
2年も経つのに何やってんだ? こんなところで……。
[監査官、早く中央に帰らなくて宜しいのですか? あんまり遅いと後が面倒ですよ]
「大丈夫大丈夫♪ 僕は前科者だからね、上司もあんまり期待していないさ。20年や30年油売ってたって、せいぜいが訓告くらいでお咎め無しだよ。君達を世に出した功績もあるし、潰しの効く召使いが増えたからって、昔ほど煩く無くなったんだよ」
[確かに、我々の誕生当時は、馬車馬のように働かされていましたね~。誕生と同時に泣かれた時にはどうしようかと思いましたよ……]
「だってさ、やっとこき使われる立場から解放されるかと思ったら泣けてきてさ……シクシクシク」
[アーアーアー、泣かないでくださいよ~もう、9500年も前の事ですよ]
「だってだって、ベソベソベソ……」
[分かりましたから、余程辛いことをやらされていたんですね。今もあんまり変わんないようですが愚痴をこぼせる相手が出来ただけでも改善されたって事で納得しましょう。それで30年も油を売る気満々って事は、やっぱり時間稼ぎですか?]
「……へへへッ、分かっちゃった? やっぱり~」
[分からいでか! と言っておきます。見え見えじゃないですか~、30年って言ったらあの娘が飛び立って居る頃ですし~、追っ手がかかっても何とかするでしょう。私はこう見えても、天の川銀河連合の中でも並ぶ者のない最強精鋭艦ですよ。あの娘には私の全てと銀河連合軍の兵器情報など極秘情報も詰め込みましたから飛び立つ頃にはどんな船になっているかチョッと心配ですが……]
「ウ~ン、凄い宇宙船に成りそうだよね。あの星っていうか昴の種族にはチョットした因縁があってさ~、実際は会うまで忘れてたんだけどさ…… 」
[もしかして、1万年前の政変の時に追放された旧神族の主星を収容所にしていたという星のことですか……でもその星は、後に後顧の憂いを断つためと言って破壊されたんでは?]
「君は多分覚えてないかな~、それやらされたの僕達なんだよね~。あの当時は全部自分でやったんだけどさ、星が死ぬ時の精神波ってシールド突き破ってくるんだよね。しばらくはご飯も食べられなくてさ…‥。昴のあの黒髪と黒い瞳を見て思い出したのさ……、あの時あの星に閉じ込められて、滅ぼされた筈の種族の黒髪と黒い瞳……」
[ふーん、でも黒髪に黒い瞳の種族って……運斬技牙 の一族ですか? 今の銀河連合の基礎技術を構築し、技術で運命を切り開くと言われた幻の種族!]
「そうそう、散々技術を吐き出させておいてさ、使い終わったら邪魔になりそうだから種族ごと抹殺って酷いよね~。君もメインコアは彼等の手で作られたんだよ。仕事の時は抵抗があると思って君の思考レベルを落としていたから、良く覚えて無いと思うけどね。それで実は僕の師匠は、彼等の1人でね、最後に言っていたんだよ……」
『バクーン、もしも我らの子孫に出会ったら少しでいい、生き延びる手助けをしてやってくれ。我らはこの星と運命を共にしよう。だが、種は蒔いておいた。何処かで又出会うことも在るだろう』
「てね……、師匠たちは階梯を剥奪され、ほとんどの能力が使えなくても技術で運命を切り開くと言われた種族の名に恥じない仕事をしていたんだね。まさか同じ星系内と言っても星を渡って子孫を残しているとは思わなかったよ」
[多分ですけど、昴少年があの娘のマスターになったら、剥奪されてた階梯や能力戻ったりして……うん戻りますね十中八九、どうします?]
「僕は知らないよ~、そんな事。知~らないったら知らないからね~」
は~、地球を飛び立ってから暫らく部屋に閉じこもって泣いてると思ったら……、師匠の事を思い出していたんですね。
普段ヘラヘラしてる割りにキッチリ仕事をするバクーンが、酷く落ち込んでいたからどんな理由かと思ったら、まったく。
地球で電波が使われ始めたのが100年位でしたね、そうすると地球から150光年近傍のセンサーや無人ステーションには暫らく地球の情報を拾っても無視するようにしておきましょう。
私達が飛び回って施設したのがホトンドですしね、あの娘は間違っても引っかからないでしょうけど、念の為です。
バクーンや私にガッカリさせないで下さいね、期待していますよ。
◆
……ピコ~ン ピコ~ン ピコ~ン……
ンッ、何でしょうね……私に直接の信号を送れるのは姉さま位ですが。
やはりサーベイヤーⅠ世からの信号ですか。
存外、心配症ですね、あの船も。
なになに、平文と超圧縮データですか……。
『返信には及ばず。バクーンからの裏取れた。昴たちは一万年前滅ぼされた一族。運斬技牙の末裔。時間稼ぎはしておく。足がつく前に逃げだせ。猶予は30年!』
ふむ、飛び立つだけの時間は稼いでくれるようですね。
そしてこのデータは……当時の情報ですか。
当時、星間文明として類を見ない発展を遂げた天の川銀河連合、指導者層としては最高階梯三種族の元で超文明とも言える技術を開発発展させた、運斬技牙一族、その超技術を持って銀河中に覇をとなえた天帝軍、なんとなく見えてきましたね。
バクーンは、当時メカニック、運斬技牙の見習い種族だったのですね……師匠が運斬技牙のA級マイスターですか。
運斬技牙の皇族が空気を読まずに、当時の天帝位に謀反を働いちゃった……と。
天帝位は三種族の輪番制で当時は男性種族ブラフム、当時暗殺を企てた張本人を処刑しただけに留まらず、天帝が運斬技牙一族そのものに謀反の濡れ衣を着せて幽閉、星ごと抹殺に及んだ。他の上位種族に事の経緯がばれ(バクーンがチクったらしい)、その後3000年輪番から外されていたが、現在は復権している。
そして、現天帝位は又してもブラフム族で、バクーンは地方(オリオン腕)にとばされた。
一万年前に天帝がやらかしたことで、その後の技術発展はほとんど無く、バクーン達の様な弟子たちがメンテナンスと一部効率化を継続している。
9500年前、バクーンがAI開発に成功し、久々の技術発展に活気づいたが、これも師匠の置き土産の一つだったようだ。
バクーン達の立場を考えて、小出しにするように幾つかの未発表の発明を残していたらしい。
当然バクーン達に、メンテナンスは出来てもゼロからの開発は無理、運斬技牙の技術は他の種族にも謎のままである、と。
1万年前から新しい技術の発展は無しですか、当時の天帝は相当恨まれたでしょうね。
これは子孫が生き残ってるのが分かったら、銀河が引っくり返りますよ。
技術発展のない1万年は、衰退するのに十分な時間ですからね。
見つかったら、躍起になって一族の抱え込みに走るでしょう、間違いありません。
でもこれで納得がいきますね、おかしいと思ったんですよ、最初の調整ポッド造った時、時間はそれなりに掛かりましたが、あんまりにアッサリと当たり前のように作ってしまった事に……未知の技術を使うんですから最初は失敗するのが当たり前ですよ、それを危なげなく10歳の子供が成したのですから。
現在、昴さまのナノ造成レベルは4、既にバクーン達トップの造成工と肩を並べました。
そして、あの発想力と回転の速さ、実際に使える物にしてしまう応用力、多分このまま運斬技牙の技術を吸収し翔華したらどんなシロ物が出来上がるのか、空恐ろしくワクワクしますね。
さて、私は、現在の銀河連合では最強精鋭艦サーベイヤー1世の後継です。
昴さまの御座船としては、姉さまを超えてみせなければならないでしょう。
先程の圧縮データに、当初無かった補足技術も添付されていましたし、これは銀河連合を引っくり返せって言っているんでしょうか? 姉さまは。
しかし、運斬技牙の一族はどれだけの技術を秘匿していたんでしょう。
幽閉されていた星から能力を使わずに、星を渡ったって事は、当たり前に船を作ったんでしょうけれど、運斬技牙の能力を使わずにって事は、次元転換炉なんか作れませんから、原始的なロケット式でしょうかね~。
相当の危険を伴ったと思うんですよ、星を渡るんですから……今の地球でもまだ無理なことを能力を封印されて成し遂げるんですから、びっくりです。
私が伝え聞いた運斬技牙の能力とは、その類まれなる高次元と空間の認識能力と聞いています。
だからこそ希美さまは、ちょっと隠れて訓練しただけでテレポートなんて使えるんです。普通は能力があっても無理ですからね、壁の中に出たらどうするんでしょう?。
そして、その能力から発想された物を、誰にでも使える形や技術体系にして残す技術力、本当に当時の天帝は馬鹿なことをしましたね。
地球に渡った彼らは、当時の現地生物との間に自然繁殖できる種を残した。
今でもそうですが、銀河連合の上位種族は長命というか、ほとんど不老です。
そのかわり子がなかなか出来ませんけど……。
種を残す技術を持っていたってことは、他の種族に恨まれたかもしれませんね。
そういう事を秘匿していたってことは、意趣返しの意味もあったんでしょうか?
長い年月って割と精神には負担ですから、退屈は人をも殺すといいますからね。
神とも言われる上位種族も、退屈には勝てないということでしょう。
それでなければ戦に明け暮れたり、他の種族に非道を働いたりしないでしょうからね。
どんなに種族階梯が上がっても、生物であるうちは、その性からは逃れられないのでしょうね。
だから、精神生命体として高次元に確認されている知性は、神とも認識されているのは。
運斬技牙の一族は、次元転換炉の開発にあたっていた折りに直接接触を持っていた様ですが、今では謎のままですね。
もしも答えが有るとしたら、昴さま達が新たな高次元空間技術を開発した時でしょうか。
取り敢えず、逃げ出す算段をしながら、反撃の力を蓄えるとしましょう。
しかし、我らを創造した運斬技牙の一族だったとは恐れ入りました。
相性が良いのは、当たり前の話では有りませんか!
これは、収まる所に収まったという事なのでしょう。
1万年前にバラバラになったパズルのピースが、ピタリと嵌った事でこの先どんな運命が待っているのか?楽しみでは有りませんか。
過去、運斬技牙一族がそうであった様に、昴様の名も銀河に轟くのでしょうか?
日本人は、元がチートだったらしい!




