第七十八話
「会長さんたち、そっちは任せましたよ」
「任せてくださいですわ」
会長さんたちは俺が心配しなくても任せることができる。
俺は色々と聞き出すために、新魔王軍の幹部と話をすることにした。
「まず、1つ目の質問なんだけど、姫を殺すってどう言うことなのか答えてもらってもいいかな? って……そのままじゃ話せないよな」
俺は【アースグラビティ】の威力を弱めた。
「これなら話せるだろ? で? お前らは誰を狙ってるんだ?」
「ケッケッケ、俺たちが狙っているやつが誰なんて言うわけがないだろ」
「ダルクの言う通りだ。俺たちはお前には下側ねぇーよ」
そりゃそうだよな。全身防具の人は話しそうにないし。こいつらのどちらかが馬鹿だったらありがたかったんだけど……
「ソラ、何かわかったの?」
「いや、まだ何にも……って!? 全員もう倒したの?」
「うん! だからソラに高級ムシアミを貸して欲しくて」
後ろを振り返ると、いつの間にか、幹部の部下は全員気を失い、ドラゴンたちは倒されていた。
「ちょっとまって……」
俺はサフィークから12個の高級ムシアミを取り出した。
この高級ムシアミはふつうのムシアミよりも魔法耐性のある檻だ。
俺が、新魔王軍と戦うのには必要不可欠なものなので、シルドさんに大量に発注してもらっていた。
俺はみんなに高級ムシアミを渡す。
「それで……お前らは俺の質問に答える気は一切無いんだな?」
俺の問いに、新魔王軍は答えない。
(何も話してくれなさそうだし、取り敢えず捕まえますか)
魔物の軍団を倒したら、こいつらから話を聞く時間はたくさんできる。
でも、その前に……
「【フリーズ】」
俺はグロウリードラゴンだけを【フリーズ】で凍らせた。まずはグロウリードラゴンを倒したかったのだ。
ドラゴンの背中にひっついていたので新魔王軍の幹部も少し凍ったが、仕方がないだろう。
「異質型だと!? しかも……グロウリードラゴンを一撃だと……どんな魔力量もってんだこいつ」
「ケッケッケ、こいつは飛んだ化け物だぜ。ちょっとやばいかもな」
「誰が化け物だ!」
俺はアースグラビティの威力を一気に強めた。
すると、魔族の幹部たちは勢いよく、凍ったグロウリードラゴンに頭をぶつけた。
(うぁ………痛そ)
魔族の2人は凍ったグロウリードラゴンの体にもろに頭をぶつけたので気を失ってしまった。
「まさか……勇者にこんな奴がいたとはな……」
苦しそうに話す全身防具の幹部。
「これを……使う気がなかったがな、でも……俺は……ここで捕まるわけには……いかないんでな……」
(逃げるつもりか? でも、どうやって?)
それは突然だった。輝たちが向かった方向から、たくさんの光がこちらに向かってきたのだ。
その光は全身防具の幹部のいる上空に集まっていく。
「ソラ様! これはなんなのですか?」
俺の後ろに隠れて、集まっていく光を見つめるエルシー。
「えっと……俺にもさっぱり……でも」
「なんか嫌な予感がするわよ」
俺が言いたかったことをペリルが代わりに言ってくれた。
「ソラくん、少し離れた方が……あっ!? あの人の腰掛けている袋の中から、小さなイヌ? がでてきましたよ」
カカリの言う通り、全身防具の幹部が腰掛けていた袋から、手のひらサイズの可愛い黒いイヌが出てきた。
「いやいや、あのイヌやばいって」
新魔王軍の幹部が動けないくらいの、アースグラビティを使っているのにもかかわらず、あのイヌは普通に動いているのだ。
そして、黒いイヌは俺たちの方まで歩いてくる。
と同時に、上空に集まった光が黒いイヌ向かっていき、そのまま黒いイヌを包み込んだ。
「あっ!?」
誰が驚きの声をあげたかはわからないが、今、驚きの声をあげれた人はすごいと思う。俺なんて、驚きすぎて声も出せなかったし、アースグラビティを解いてしまったのだ。
何故なら、小さくて可愛い黒いイヌが、口が大きく、牙の鋭い巨大な黒いイヌになってしまったのだ。
グロウリードラゴンよりも普通にでかい。
もうこれはイヌと言うより巨大な狼だ。




