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一人だけ別の場所に召喚された勇者(仮)  作者: 鳩ゆうら
第3章
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第七十六話 戦い前

大変長らくお待たせしてすみませんでした。


 西門前には、多くの冒険者、魔法騎士団が集まっていた。

 が、今から戦うからか、空気が重い。

 それに……

 戦う前から負けを確信しているような感じがする。


 俺は近くにいたローブを着て、先程からキョロキョロしている5人組に、何かあったのか話を聞こうと近づいた。


「あのぉ、何かあったんですか?」


 俺が声をかけた瞬間、なぜか知らないが、ローブを着た五人組が一斉に下を向いた。


「どうかしましたか?」

「急に話しかけられたので、少し驚いただけですわ」


(この人達、怪しいぞ……)


 もしかしたら、新魔王軍の仲間かもしれない。

 五人ともフードをかぶりずっと下を向いているし、俺に話しかけられてから、いっそう落ち着きがない。

 ちなみに、俺の隣にも、同じような格好をしている人がいるので怪しいとはいえない。


「魔物の集団の中に、Sランクの魔物が一体、Aランクの魔物が数体、確認されたそうですわ」

「Sランクの魔物ですか……」


 Aランクと言うことは、エートスぐらいの強さ。Sランクはフーライラよりは弱いがAランクの魔物よりも断然強い。

 それに加え、大量のAランク以下の魔物と新魔王軍の幹部。

 何故、ゆっくりこちらに向かってきているのか?

 と、疑問に思っていたが、その答えがわかった気がする。

 俺たちが準備をして戦ったとしても、新魔王軍には勝つ自信があるのだ。


 輝たち勇者は、多分、新魔王軍の幹部を倒しに行くだろう。

 何か因縁があるようだし。

 となると、Aランクの魔物とSランクの魔物は俺がどうにかしないといけない。

 聖剣アルダートを使うことになりそうだ。

 まぁ、最初から使う気満々だったけど……


「教えていただきありがとうございます」

「いいえ、(わたくし)もソラ様のお役に立てて光栄ですわ」


(ソラ様? そういえばこの声……会長さん?)


 いや、ここに会長さんがいるはずが無い。ツバサ学園の生徒たちは、まだ学生の身分と言うことで、避難しているはずなのだ。


「ファルース様! カナタくんを様付けしているのは、ファルース様だけです。カナタくんに内緒で活躍して驚かせるといったのはファルース様ですよね?」

「そうでしたわね。以後気おつけますわ」


 やっぱり、会長さんだった。今、話しかけているのは多分、トピアリーさんだろう。

 と言うことは、残り3人も知っている人物かもしれない。

 そう思った俺は、確かめるために、残りの3人の人たちに話しかけようとしたが……

 それよりも先に、会長さんに突っかかった人物がいた。


「ソラ様を様付けしてあるのは、私もなのです。マリナだけじゃないのです!」


 しかも、会長さんの正体がバレている。

 まぁ、会長さんとトピアリーさんが話している声が俺には明確に聞こえたのだから、フードを被っていたとしても、聞き取ることができたのだろう。

 って! 言うより、


「ちょっ! エルシー、声を抑えて。エルシーがここにいるってバレたら、大騒ぎになるって!」


 エリザ様には許可をもらったが、他の人にはバレないようにと言われていた。

 こんな所にエルシーがいるとバレたら、ここで待機させられるか、城に戻らされるは確実だ。


「今なんて……言いましたの……まさかその子は……」


 会長さんがそう言うと、まわりにいた人達もエルシーを見た。

 俺は人のことが言えない。本当にバカだ。

 

「俺たちは皆さんにエールを送りに来たんですよ。エールっていうのは、応援って意味で……えっと……腹は減ってはいくさはでぬっていうじゃないですか。昼前だし、お腹が空いていると思って、おにぎりを作って来ました」


 俺はサフィークから大きな机と大量の塩おにぎりを出した。

 サフィークに驚く人たちをよそに、一人のフードを被った人が声をあげた。


「おにぎり! 今、おにぎりっていった!? 私、食べたい!」


 フードを被った一人ではなく、リラが俺の前までやって来た。


「私も欲しいです。少しお腹が空いているので」

「ちょと、リラ! カカリ! あー、もう! 私にも頂戴!」


 リラに続いて、カカリとペリルが俺の前まで歩いて来た。

 おにぎりをとった3人は、フードをとって、おにぎりを食べ始めた。


「会長さんとトピアリーさんもどうですか? あったかくて美味しいですよ」


「いただきますわ」

「私も1つもらいます」


 会長さんとトピアリーさんは、諦めたようにフードをとり、おにぎりを1つとった。

 このおにぎりたちは、リフホーネ遠征訓練前の休日に作っていたものだ。サフィークに入れればいいやと思い、できるだけたくさん作っていた。


「やっぱり美味しいですね。初めて食べた時は本当に驚きました」


 トピアリーさんの言葉に、会長さんが頷く。

 二人は……と言うより、ロナテーナに住んでいる人達以外のマフカースに住んでいる人達は、お米を食べたことがない。

 お米はロナテーナでしか生産されていない。にもかかわらず、マーシーさんたちエルフはロナテーナから外に出ることがない。

 だから、他の町や国などにお米が流通することがないのだ。


(ふぅ〜、話が逸れてよかった)


 いつの間にか俺たちの周りは人混みができている。

 そして、こんな時に何やっているんだって顔をして、こちらを見ていた。

 まぁ、エルシー様から気をそらすためとはいえ、新魔王軍がリフホーネに攻めてきているのに、のんきにご飯を食べるのはちょっと失敗だったかもしれない。

 そんなことを思っていると、奥の方から知っている声が聞こえてきた。

「なんだ? この集まり? ちょっと通してくれって」


 魔法騎士団や冒険者の人たちが、声の主を通すために避け始める。


「そらじゃねーかって……それ……」


 人混みから出てきたのは、輝たち勇者だった。

 輝が机の上にある大量のおにぎりを指差したまま固まる。

 よく見ると、一人を除いて勇者たちも輝同様、大量のおにぎりを目の前にして固まっていた。

 

「そら、私も1つもらう」


 美咲がそう言って、おにぎりを1つとって、リラたちの方まで歩いたあと、パクッとおにぎりを食べ始めた。

 それを見た勇者たちは、『俺も俺も』と言って、おにぎりを手に取り食べ始めた。


「何をしているのですか勇者様方、今から作戦を……」


 ダーマリーさんが現れた。

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