第七十六話 戦い前
大変長らくお待たせしてすみませんでした。
西門前には、多くの冒険者、魔法騎士団が集まっていた。
が、今から戦うからか、空気が重い。
それに……
戦う前から負けを確信しているような感じがする。
俺は近くにいたローブを着て、先程からキョロキョロしている5人組に、何かあったのか話を聞こうと近づいた。
「あのぉ、何かあったんですか?」
俺が声をかけた瞬間、なぜか知らないが、ローブを着た五人組が一斉に下を向いた。
「どうかしましたか?」
「急に話しかけられたので、少し驚いただけですわ」
(この人達、怪しいぞ……)
もしかしたら、新魔王軍の仲間かもしれない。
五人ともフードをかぶりずっと下を向いているし、俺に話しかけられてから、いっそう落ち着きがない。
ちなみに、俺の隣にも、同じような格好をしている人がいるので怪しいとはいえない。
「魔物の集団の中に、Sランクの魔物が一体、Aランクの魔物が数体、確認されたそうですわ」
「Sランクの魔物ですか……」
Aランクと言うことは、エートスぐらいの強さ。Sランクはフーライラよりは弱いがAランクの魔物よりも断然強い。
それに加え、大量のAランク以下の魔物と新魔王軍の幹部。
何故、ゆっくりこちらに向かってきているのか?
と、疑問に思っていたが、その答えがわかった気がする。
俺たちが準備をして戦ったとしても、新魔王軍には勝つ自信があるのだ。
輝たち勇者は、多分、新魔王軍の幹部を倒しに行くだろう。
何か因縁があるようだし。
となると、Aランクの魔物とSランクの魔物は俺がどうにかしないといけない。
聖剣アルダートを使うことになりそうだ。
まぁ、最初から使う気満々だったけど……
「教えていただきありがとうございます」
「いいえ、私もソラ様のお役に立てて光栄ですわ」
(ソラ様? そういえばこの声……会長さん?)
いや、ここに会長さんがいるはずが無い。ツバサ学園の生徒たちは、まだ学生の身分と言うことで、避難しているはずなのだ。
「ファルース様! カナタくんを様付けしているのは、ファルース様だけです。カナタくんに内緒で活躍して驚かせるといったのはファルース様ですよね?」
「そうでしたわね。以後気おつけますわ」
やっぱり、会長さんだった。今、話しかけているのは多分、トピアリーさんだろう。
と言うことは、残り3人も知っている人物かもしれない。
そう思った俺は、確かめるために、残りの3人の人たちに話しかけようとしたが……
それよりも先に、会長さんに突っかかった人物がいた。
「ソラ様を様付けしてあるのは、私もなのです。マリナだけじゃないのです!」
しかも、会長さんの正体がバレている。
まぁ、会長さんとトピアリーさんが話している声が俺には明確に聞こえたのだから、フードを被っていたとしても、聞き取ることができたのだろう。
って! 言うより、
「ちょっ! エルシー、声を抑えて。エルシーがここにいるってバレたら、大騒ぎになるって!」
エリザ様には許可をもらったが、他の人にはバレないようにと言われていた。
こんな所にエルシーがいるとバレたら、ここで待機させられるか、城に戻らされるは確実だ。
「今なんて……言いましたの……まさかその子は……」
会長さんがそう言うと、まわりにいた人達もエルシーを見た。
俺は人のことが言えない。本当にバカだ。
「俺たちは皆さんにエールを送りに来たんですよ。エールっていうのは、応援って意味で……えっと……腹は減ってはいくさはでぬっていうじゃないですか。昼前だし、お腹が空いていると思って、おにぎりを作って来ました」
俺はサフィークから大きな机と大量の塩おにぎりを出した。
サフィークに驚く人たちをよそに、一人のフードを被った人が声をあげた。
「おにぎり! 今、おにぎりっていった!? 私、食べたい!」
フードを被った一人ではなく、リラが俺の前までやって来た。
「私も欲しいです。少しお腹が空いているので」
「ちょと、リラ! カカリ! あー、もう! 私にも頂戴!」
リラに続いて、カカリとペリルが俺の前まで歩いて来た。
おにぎりをとった3人は、フードをとって、おにぎりを食べ始めた。
「会長さんとトピアリーさんもどうですか? あったかくて美味しいですよ」
「いただきますわ」
「私も1つもらいます」
会長さんとトピアリーさんは、諦めたようにフードをとり、おにぎりを1つとった。
このおにぎりたちは、リフホーネ遠征訓練前の休日に作っていたものだ。サフィークに入れればいいやと思い、できるだけたくさん作っていた。
「やっぱり美味しいですね。初めて食べた時は本当に驚きました」
トピアリーさんの言葉に、会長さんが頷く。
二人は……と言うより、ロナテーナに住んでいる人達以外のマフカースに住んでいる人達は、お米を食べたことがない。
お米はロナテーナでしか生産されていない。にもかかわらず、マーシーさんたちエルフはロナテーナから外に出ることがない。
だから、他の町や国などにお米が流通することがないのだ。
(ふぅ〜、話が逸れてよかった)
いつの間にか俺たちの周りは人混みができている。
そして、こんな時に何やっているんだって顔をして、こちらを見ていた。
まぁ、エルシー様から気をそらすためとはいえ、新魔王軍がリフホーネに攻めてきているのに、のんきにご飯を食べるのはちょっと失敗だったかもしれない。
そんなことを思っていると、奥の方から知っている声が聞こえてきた。
「なんだ? この集まり? ちょっと通してくれって」
魔法騎士団や冒険者の人たちが、声の主を通すために避け始める。
「そらじゃねーかって……それ……」
人混みから出てきたのは、輝たち勇者だった。
輝が机の上にある大量のおにぎりを指差したまま固まる。
よく見ると、一人を除いて勇者たちも輝同様、大量のおにぎりを目の前にして固まっていた。
「そら、私も1つもらう」
美咲がそう言って、おにぎりを1つとって、リラたちの方まで歩いたあと、パクッとおにぎりを食べ始めた。
それを見た勇者たちは、『俺も俺も』と言って、おにぎりを手に取り食べ始めた。
「何をしているのですか勇者様方、今から作戦を……」
ダーマリーさんが現れた。




