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一人だけ別の場所に召喚された勇者(仮)  作者: 鳩ゆうら
第3章
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第七十五話 城の中で

 俺は走っていた。

 軽装を着た、エルシー様をお姫様抱っこをしながら。


 何故、エルシー様をお姫様抱っこをしているのかと言うと……

 軽装に着替え終え、部屋を出てきたエルシー様に、『私は走るのが遅いので、ソラ様のペースに合わせることができないのです。だから、お姫様抱っこで運んで下さいなのです』

 と、言われたのだ。

 断ることができなかった俺は、エルシー様をお姫様抱っこして、西門前に向かっている。

 顔を赤くし、俺をずっと見つめているエルシー様を見て、改めて思った。

 戦いに参加するのはまだ早いんじゃないかと……


「あのぉ、エルシー様は今、何歳なんですか?」

「私は12歳なのです」


 見た目どうりの年齢だった。


(12歳か……)


「どうして急に私の年を聞いたのです?」

「ただ気になったからですよ」


(やっぱり、安全なところに避難してもらった方が……)


 いくら無の巫女だからと言っても、エルシー様はまだ、小さな女の子。しかも、国の王女様だ。

 エルシー様は12歳と言っていた。日本だったら中学一年生だ。

 そんな女の子を戦わせてもいいのか?

 この世界が日本ではないのはわかっている。

 それでも……


(俺は勝手だな)


『私は新魔王軍と戦わなければならないのですか?』

 と、聞かれた時に『そうです』と言ったのは俺なのだ。

 でも、今の俺はエルシー様には戦わず、避難して欲しいと思っている。

 人が死ぬ姿を見せたくないのだ。

 それは、彩香たち勇者やリラたち巫女に当てはまる。


「エルシー様、やっぱり……って……ミストール様!?」


 俺がエルシー様に安全なところに避難して欲しいと、言おうと思ったら、リフホーネの王、ミストール様が護衛を引き連れ現れた。


「止まれ! 貴様、こんな時にエルシーをどこに連れて行くつもりだ! しかも、お姫様抱っこなんてしおって! 私でもしたことがないんだぞ!」


 ミストール様の声が城中に響き渡る。


「お父様、うるさいのです」


 『うるさい』と、言われたミストール様はしょんぼりとした顔になった。


「私たちは急いでいるので、そこを退いて下さいなのです。あと、お姫様抱っこについては……お父様には関係のないことです」


 そう言ってエルシー様は、ミストール様からプィっと顔をそらした。


「私には関係のない……まさか!? 反抗期なのか。いや、待て……反抗期のエルシー……ますます可愛いじゃないか!」


 流石、娘を持つ国の王。何を言っているのかさっぱりだ。

 護衛の魔法騎士団の後ろから、エルシー様に似た赤い髪の女性が出てきた。


「こんな夫ですみません。貴方が勇者カナタ・ソラ様ですね」

「そうです。えっと……」

「申し遅れました。私はエルシーの母のエリザ・リフホーネと申します。お会いできて光栄です」


 エリザ様が頭を下げてきたので、俺も慌てて頭を下げた。


「ソラ様は無の巫女であるエルシーを、戦場に連れて行くのですか?」


 エリザ様の言葉にミストール様と護衛の人たちが驚きの声を上げる。


「どう言う事なんだ。エルシーがあの無の巫女!? エリザ! 説明してくれ! そもそも私は……」

「貴方は黙っていて下さい」

「はい、すみません」


 エルシー様のことになると、可笑しくなるミストール様を、エリザ様は一言で静かにさせた。


「お母様とお父様は元々いとこ同士だったのです。その時の格差みたいなものが今も続いていてですね。お父様はお母様に逆らえないのです」


 俺は苦笑いするしかなかった。


「それで、エルシーを連れて行くのですか?」

「俺は…………」


 なんて答えたらいいのだろうか。

 今の俺は、エルシー様を戦場に連れて行きたくない。

 が、エリザ様がエルシー様のことを無の巫女だと知っているのなら、巫女の使命についても知っているはずだ。


「私は新魔王軍と戦うことが、危ないってことは知っているです。でも、私は戦うのです。私のことはソラ様が守ってくれるので、心配しなくていいのです」


 そうだ、俺は約束したんだ。


「俺はエルシー様を連れて行きます。エルシー様は俺が守ります」


 俺はエリザ様をまっすぐ見て言った。

 エリザ様はニッコリと笑い……


「いいでしょう。ですが、ひとつ条件があります」

「条件ですか?」

「貴方になら簡単な条件です」


 多分この人は、俺がカナタ・ツバサとエルシャ・リフホーネの孫だと気づいている。

 俺だっら簡単な条件。


(魔物を全滅させろ、なんて言われたらどうしよう……)


 無茶振りだけはやめてほしい。

 

「これからずっとエルシーのことを呼び捨てで、呼んであげて下さい」


(えっ!? それだけ?)


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