第七十四話 部屋の中ⅳ
エルシー様が部屋に入ってきた女性の方へ駆け寄る。
「リーヴルさん、それは本当なのですか!」
どうやらこの女性は、リーヴルという名前のようだ。
確かこの人は、王座のまで俺が勇者だと説明している時に、ミストール様の斜め後ろでダーマリーさんと一緒に立っていた人だ。
多分、魔法騎士団の副団長だろう。
「残念ながら事実です……魔法で確認したところ、ゆっくりですがリフホーネに向かってきています。あと、新魔王軍を目撃、幹部らしき人物もいたそうです」
新魔王軍の幹部と聞いて、輝や彩香の表情が強張る。
(…………幹部?)
俺は新魔王軍の幹部と聞いても全くピンとこない。
そもそも俺は、新魔王軍についてあまり知らない。
幹部がいること自体、初めて知った。
授業でも、新魔王軍は危険だとしか聞いていないのだ。
今は新魔王軍の幹部よりも……
「みんなは無事なんですか!」
ルレベの森に実践訓練をしに言っている、人たちの方が心配だ。
あれから30分以上は経っている。そろそろルレベの森に着く頃のはず。
新魔王軍と 戦っているなら、今すぐ向かわないといけない。
「確か貴方は……カナタ様でしたね。みなさん無事ですよ。ルレベの森に入る前に異変に気付いた生徒がいたそうなので、新魔王軍や魔物との戦闘は行なっていません。報告があってすぐにテレポート部隊が向かったので、今はリフホーネに戻ってきていると思います」
「よかった……」
みんなが無事だと聞いて少しホッとしたが、安心はできない。
「これから、リフホーネの西門前にて、新魔王軍と魔物たちを迎え撃ちます。勇者様方、どうか力を貸してください」
そう言ってリーヴルさんが、俺たちに頭を下げる。
それを見た輝がリーヴルさんの前まで移動した。
「俺は勇者です。力を貸すなんて当たり前じゃないですか。それに俺はこの街が大好きなんです。正直、新魔王軍の幹部は怖いですけど、俺で良ければいくらでも力を貸しますよ」
「輝、私達が入ってないわよ」
彩香と美咲が輝の両隣に立つ。
「ここにいないみんなも、この街を救いたい気持ちはみんな同じ。今回は勝ちましょう」
「大丈夫、私達も強くなった」
輝がお前らみたいな顔で、彩香と美咲を見る。
エルシー様は申し訳なさそうに輝たちをみている。
そして、一人取り残された感満載の俺は、黙って輝たちの様子を見守ることにした。
「ありがとうございます。戦闘準備が出来次第、西門前に集まって下さい」
リーヴルさんは『私も急いで準備をしますので』と言って部屋を出て言った。
「アキラ様、アヤカ様、ミサキちゃん、ごめんなさいなのです。私が召喚したばかりに、また危険な目に……」
エルシー様は今にも泣きそな顔になっていた。
すると、彩香がエルシー様の目の前まで移動し、膝をつく。
そして、エルシーの目線を合わせてこう言った。
「大丈夫ですよエルシー様。私達は自分の意思で守ると決めたんですから。私達も準備してきますね」
そう言われたエルシー様は黙って頷く。
「エルシー様は安全な所に避難していてください」
「それは嫌なのです! 私も無の巫女として一緒に戦うのです」
「それは…………」
彩香が言葉に詰まる。
いくら無の巫女だとしても、エルシー様が戦うのには、まだ早いと思っているのだろう。
「わかった」
「美咲!?」
彩香が勢いよく立ち上がり、美咲をみる。
美咲が了承するとは思わなかったのだろう。
実際、俺や輝も驚いている。
「でも、でくるだけそらの側にいて、そらの近くが一番安全だから」
「わかったのです」
美咲がエルシー様の頭を優しく撫でたあと、美咲は部屋を出て行った。
その後ろを彩香と輝がついていく。
なんかみんながカッコイイ。
3人の様子を見守っていた俺の感想だ。
「エルシー様は必ず俺が守りますが、万が一危なくなっくなったらテレポートで逃げて下さいね。あっ! エルシー様、テレポートは使えますか?」
「ちゃんと使えるのです!」
エルシー様は元気よく返事をした。
「あとは、無の巫女のペンダントは必ずつけてきて下さい。エルシー様の力になるはずです」
「わかったのです」
(俺もカッコイイとこ見せますか)




