第七十三話 部屋の中ⅲ
「巫女を探す……なのです?」
「そうです。新魔王軍を倒すには、巫女の力が必要になります」
一つの属性に特化してだが、巫女たちは俺と同等以上の魔法の才能を持っている。
巫女たちは必ず、新魔王軍を倒すための力になる。
「どうか俺たちに力を貸してください。これは、無の巫女であるエルシー様の使命でもあるんです」
「私は新魔王軍と戦わなければならないのですか?」
エルシー様は不安そうな顔をした。
不安になるのも仕方がない。
この世界の人たちは、新魔王軍が手に負えないから、勇者召喚を行なったのだ。
そんな新魔王軍と戦うのは、この世界の人たちにとっては、恐怖の対象である。
俺や翔たち勇者も新魔王軍が怖くないわけがないが、まだ力を持っている俺たちの方が恐怖は少ない。
「そうです。でも……」
俺はエルシー様を安心させるためにこう言った。
「俺が必ず、あなたを守ってみせます」
なんでかわからないが、エルシー様の顔がどんどん赤くなっていく。
顔が赤くなったからか、顔を手で覆った。
「すっストッープなのです! 少し整理をさせと下さいなのです……えっと、ソラ様は勇者ツバサ様と初代無の巫女の孫で、あの伝説の魔物フーライラを倒した……そら様には女神レーアス様にたのまれた使命がある……私にも……」
そう言ったあと、エルシー様は首を傾げて考え始めた。
そして五分後……
「つまり、そら様は最強なのです!」
エルシー様が五分の間、考えて整理した結果、俺が最強だという結論。
(どうしてそうなった!)
俺は心の中で、ツッコミを入れる。
「そらは最強。必ず私たちを守ってくれる」
「私も守ってよね」
「俺は……危なくなったらよろしく!」
(お前らは勇者だろ! 守る立場じゃないのか? まぁ、守るけれども)
みんなで地球に帰りたいし、誰も死なせたくない。
「ソラ様の力になるのです。私もソラ様みたいに強くなって世界を救って見せるのです」
拳を握り、やる気を見せるエルシー様。
「何度でもいうが、俺だってそらの力になるために頑張るぜ!」
『俺だって勇者なんだ』と、輝は言う。
頼りになる親友だと、俺は思ったのだが……
「期待しているわよ、勇者のリーダー輝くん」
「頑張って、応援している」
彩香はニヤニヤ笑いながら、美咲は棒読みで言った。
期待していないし、応援もしていないような言い方だ。
(この流れはあれだな……)
「おい、二人とも俺を馬鹿にしてるだろ!」
輝は少し涙目になっていた。
そんな輝の様子を見た、美咲と彩香は……
「馬鹿にはしていない。ただ、そらと比べると頼り甲斐がないだけ」
「そらの模擬戦を見て、いろいろ話を聞いたあとだとね〜。ほら、そらは最強だし……」
と、言った。
どうやら二人とも、完全にふざけスイッチが入ったようだ。
こうなると……
「なんだと! 新魔王軍どこからでもかかってこい!! どんな強い敵であっても、そらが相手になってやる」
輝にもふざけスイッチが入る。
「そこはお前が相手になれよ。なんで俺なんだよ」
本当に新魔王軍がかかってきたらどうするんだ。
シルドさんに言われたこともあるし……
「細かいことはいいじゃないか、まだそらの方が強いんだし」
「輝がそらより強くなるなんて絶対に無理、諦めた方がいい」
笑いながら俺たちは話す。
こんなやり取りは、本当に懐かしいし、楽しい。
異世界でも変わらない会話、これが俺たちの当たり前なのだ。
ふと、エルシー様の方を見ると、エルシー様は輝たちを面白そうに見ていた。
「エルシー様、ルレベの森での実践訓練が終ったら、マフカースで出会った仲間を紹介しますよ」
リラたちとだったら、人見知りのエルシー様でもすぐに、仲良く話せるようになるはずだ。
そして、リラやカカリが自分と同じ巫女だと知ったら、エルシー様は驚くだろう。
「仲間って、ソラのハーレムメンバーのことよね。まさか、エルシー様もメンバーに入れる気じゃないでしょうね?」
俺が『そんなわけないだろ』否定しようとしたその時、急にドアが開き、一人の女性が入ってきた。
息が上がり、顔が真っ青になっている。
「緊急事態です! ルレベの森より、大量の魔物がリフホーネに向かってきているとの情報が……」
楽しい時間が終わりを告げた。




