第七十話 レッツゴー
俺たちはエルシー様の部屋に向かうために、王座を後にした。
メンバーは、俺、輝、美咲、彩香の四人。
他の勇者たちはルレベの森実践訓練を手伝いに行った。
ツバサ学園の生徒たちはさぞ、やる気が出るだろう。
「そらは迷子にならないようにちゃんとついてきてよ」
「確かにリフホーネ城は広いけど……さすがに迷子にはならないだろ」
「普通はそうよね……」
彩香が後ろを振り返り翔を見た。
すると輝はビックっとなり……
「そっ、そうだよな……迷子になるわけがないよな」
俺も輝を見ると、一瞬目があったが、すぐに視線をそらされ横を向かれた。
「まさかお前……城の中で迷子になったのか?」
「あれは…………そうだよ! 迷子になったよ! しかも……みんなに捜索され発見されたんだよ。恥ずかしかったよ! いままで忘れていたのにさ」
最初は言い訳をするのかと思ったが、そんなことはしなかった。
でも……
(こんなのが勇者のリーダーで本当に大丈夫なのか……)
「おい……こんなの扱いはひどくねーか……これでも俺は勇者のリーダーとして、精一杯頑張っているんだからよ」
「お前が頑張っていたのは知っているよ。ある人によく聞かされていたから」
いや本当……輝の熱狂的ファンに……
「そんなことより、そらに話さないといけないことがあるでしょ。いったい、いつ話すのよ」
「あっ!? 忘れてた!」
輝の頑張りを『そんなこと』と、言われたことに関して、なにも気にしないのか……
そんなに話さないといけないことが、重要なことなのか?
「エルシー様に会う前に少し、言っておきたいことがある」
輝の言葉に同調するように彩香が頷いた。
「えっと……なんだ?」
「エルシー様はものすごい人見知りだ。俺たちが召喚された日から一度も、顔を見ていないくらいだからな。これは俺たちの予想だが、エルシー様は人と会いたくないという理由で部屋に引きこもっている」
だから輝はエルシー様のことを引きこもり王女と、言っていたのか……
「まぁ、あの王様はツバサ学園に特待生として入学するために引きこもって勉強をしていると思っているようだが……」
ツバサ学園は上級魔法以上の魔法が使えれば、勉強が全くできなくても、特待生として入学することができる。
エルシー様は最上級魔法である勇者召喚を成功させたくらいなのだから、上級魔法くらい一つは扱えるはずだ。
だから、俺やリラのように筆記が最下位でも特待生になれる。
まぁ、実技と筆記、どちらの試験も一位を狙っているなら話は別だ。
「でも、リンデさんとヒルデさんから聞いた話では、人見知りは昔からだったらしいんだけど、部屋に閉じこもることは無かったらしいよ」
「俺が言いたいのは、エルシー様の部屋に着いたとしても、今のエルシー様と話すことができるかは、わからないってことだ」
普通は人見知りだったとしても、部屋に引きこもったりするだろうか?
俺の妹も人見知りだったが、引きこもってはいなかった。
それが普通だと思うけど……
「このまま行っても、エルシー様と会えるのか?」
せめて会長さんがいてくれれば、会えたかもしれないけど……
「大丈夫。私ならなんとかできる」
「本当なの美咲?」
彩香がそう言うと美咲はコクリと頷いた。
そして10分後……
3人が立ち止まった。
「ここがエルシー様の部屋なのか?」
「…………そう。あとは私がする」
美咲は、扉の前まで移動した。
そして、三回ノックした後、一拍おいて次は二回ノックをする。
すると、カチャっと音がした。
どうやら扉の鍵が開いたようだ。
「まずは私が話して来るから、みんなはここにいて」
そう言って美咲はエルシー様の部屋の中に入っていった。




