第六十六話 『型』
「しょっ、勝者! ソラ・カナタ!」
戸惑っているような感じで勝利宣言をするダーマリーさん。
「やったよソラ! 圧勝だよ!」
リラの喜ぶ声だけが訓練所内に響く。
俺がダーマリーさんのもとに移動すると……
「カナタくん。魔法を解いてやってはくれないか……」
「……あっ!」
ポツリとたたずむ【ウィンドバリア】。
リンデさんにひっついている【ブルーレイド】。
ヒルデさんにのしかかっている【アースグラビティ】。
そして、俺に掛かっている【アクアフォース】。
決闘は終わったのにそのままだったのだ。
俺はすぐに全ての魔法を解除した。
リンデさんとヒルデさんが立ち上がり、俺とダーマリーさんのところに歩いてくる。
(結局、魔法は見れずか……でも……まぁいっか)
俺は多くの上級魔法を覚えてきた。
が、ご存知の通り俺はバカだ。
それも、とびっきりの……
だからなのか、あまり使わないん魔法があると、魔法名やどんな魔法だったかを忘れてしまう。
つまり、一度使えた魔法が使えなくなってしまうのだ。
今のところ、新たな魔法を覚えることも、あまり必要ない。
それゆえ、別に見れなかったけどいっか。
と、思えてしまうのだ?
(なんか対策考えないとなぁ……今考えても仕方がないか)
それよりも今は大切なことがある。
今回の決闘で俺が勇者だと信じてくれる要素があったのかだ。
勇者だけではなく、魔法騎士団の人たちも味方につければ、あの王様も俺が勇者の様な人材ではなく、勇者だとわかってくれるだろう。
そのため今回の決闘は、わざわざ異質型で魔法を使った。
が、いまいちインパクトにかける気がするのだ。
決闘の前はリンデさん、ヒルデさん、ダーマリーさんは俺が勇者かもしれないと疑っているように見えたが……
(勇者たちがいればなんとかなるか……)
と、先程から無言の勇者の集団の方を見る。
「えっ!?」
俺が見た先には、俺を無言でじっと見ている勇者たちの姿があった。
周りを見ると勇者たちと同じように魔法騎士団の人たちやツバメ学園の生徒たちも固まっていたのだ。
「みんなはなんで固まってるの?」
リラがペリルやカカリにそう尋ねた。
ペリルがリラの方を向き、口を開こうとしていたので、俺は耳を傾ける。
耳を傾けなくても、これだけ静かだと普通に聞こえそうだが……
「なんでって……リラはさっきの決闘を見て何も思わなかったの……」
(…………決闘?)
リラは俺と同じように、首を傾げた。
「はぁ〜、流石リラね」
ペリルが呆れたようにため息をつく。
「ソラ君が同時に四つの魔法を発動したんですよ!」
「それに……風、水、無の3属性ですのよ」
リラにカカリと会長さんがそう言ったが、リラは何がおかしいんだって顔をしていた。
多分俺も、リラと同じ様な顔をしていると思う。
「いいですか、リラさん。カナタくんは決闘で、勇者ツバサ様にもできなかったことをしたんです」
トピアリーさんが目をキラキラさせて言った。
「そうなの!?」
目を開いて驚くリラ。
「はい。勇者ツバサ様は異質型で魔法発動させたといいます。でもカナタくんは3つの属性の魔法を同時に発動しました」
トピアリーさんがリラに説明を始めた。
異質型は本来、異なる属性の魔法を2つ同時に発動させることを言うのだ。
異なる属性を3つ同時に発動させることは異質型とは言わないらしい。
知らなかった……
俺は3、4属性の魔法が同時でも異質型と言うのかと思っていた。
「それじゃぁ、ソラのは……」
「ソラ様しかできない新たな『型』ですわ」
(別に異質型でいいと思うけど……)
新たな『型』って大げさだ。
「ソラ! これって何型って言うの?」
リラが大声で俺に呼びかける。
すると、みんなの視線が俺に集まった。
無茶苦茶注目されている。
ツバサ学園の生徒と魔法騎士団の人たちの目がトピアリーさんの様にキラキラだ。
それに対して、俺のことを知っている勇者たちは、『あいつが考えているわけないだろ』って顔をしている。
何故か他のクラスであんまり面識ない人も
同じ顔だ。
「えっと…………」
俺は頭をフル回転させる。




