第六十三話 始まらない……
更新が遅くなりました。
「あれって……そらじゃないか?」
俺が前に向かっていると、1人の男子生徒が俺に気づいた。
(この声は…………)
間違いない輝の声だ。
俺の名前が出たことにより、勇者たちがざわざわし始めた。
「なに言ってんだよ。この世界に奏多がいるわけないだろ」
「そうだよ。奏多くんは、日本にいるんだよ」
美咲の話では、俺だけ召喚されなかった事になっている。
美咲は俺と会ってから今日まで、彩香たちに会っていない。
しかも、今日はツバサ学園の生徒として参加しているので、まだ彩香たちと話してもいないのだ。
「輝……冗談はやめて。みんなの言うとうり、そらがこの世界にいるわけが…………」
話している途中で彩香が固まる。
俺の姿を見たからだ。
「久しぶり……輝、彩香、それにみんなも……」
俺は彩香たちに一言かけて、ダーマリーさんのところまで歩く。
目の前にいる勇者たちが全員、口を開けて固まっていた。
俺がダーマリーさんの前に立つと……
「少年……勇者様たちと知り合いだったのか?」
「はい。大切な友達と親友です」
俺の言った言葉に驚くダーマリーさん。
「名はなんだ?」
「奏多そらです」
「君がカナタ君か……噂は聞いているよ」
俺の噂と言えばあれしかない……試験会場を燃やして凍らせたことだ。
時々、夢にも出てくるのだ。
夢の中では教室だけではなく、校舎全体を燃やし、その日を止めるために、今度は校舎全体を凍らせた。
あれから【ディフラグレーション】は、一度も使ってない。
(まさかこの噂がリフホーネまで広がっているなんて)
「いくつもの上級魔法を操り、異質型で魔法を扱える、黒髪で、勇者ツバサ様と似ている人物」
(そっちか……)
美咲以外の勇者たちとリンデさん以外の魔法騎士団の人たちが驚く。
どうやら初耳のようだ。
「カナタ君の決闘相手はどうするか……」
ダーマリーさんが魔法騎士団の人たちの方を見る。
魔法騎士団の人たちは、一斉に首を横に振った。
「皆の気持ちもわかる。私もカナタ君とは決闘はしたくない」
まさかの団員だけではなく、団長まで俺とは決闘したくないらしい。
俺としては、上級魔法を見せてくれるなら誰でもいいのだが……
「確かカナタ君の指導者は……リンデ! ヒルデ! どちらかがソラ君の相手をしてやってくれ」
「「え!?」」
リンデさんとヒルデさんが、無茶苦茶嫌そうな顔をした。
そして、2人は向かい合うと……
「「私では役不足なので、ヒーちゃん(リン)がカナタさんの相手をして」」
流石は双子。息がぴったりだ。
「私は回復専門だから、ヒーちゃんの方が適任だよ」
「ヒーちゃん言わない! 回復専門でもリンは魔法騎士団の一因だし、私のお姉ちゃんなんだから、リンの方が適任じゃない!」
2人は俺の相手をしたくない一心で、素敵な姉妹愛を見せてくれている。
「それならリンデとヒルデの2人でソラ君の相手をしてもらおうか……」
ダーマリーさんがポツリと呟く。
「「団長それは……」」
「何か問題でもあったか?」
「「ありません」」
問題大有りだ。
一対二の勝負なら、それは決闘ではない。
と思ったのは俺だけでは無いだろう……
「それでは第1試合目の決闘を……」
「そら……なの? ……本当に……」
ダーマリーさんが『開始する』と言おうとした時、後ろにいた誰かに、服の袖を掴まれた。
後ろを振り返るとそこには、彩香が立っていた。
話が進んでいる間に、固まっていた彩香たちが動き始めたようだ。
「さっきも言ったけど……久しぶり彩香」
俺がそう言うと、突然彩香が泣き始る。
と、思ったら俺に抱きついた。
「「「「あっ!?」」」」
ツバサ学園の生徒たちがいる方向から、何人かの驚きの声が上がった。
すると、リラ、美咲、ペリル、カカリ、会長さん、トピアリーさんの6人が、前に出てきたのだ。
「美咲が抱きついているのは本物のそら。一緒に暮らしてる私が保証する。だから離れて」
美咲たちの機嫌が悪いきがする。
彩香は美咲の言うとおり俺から離れた。
彩香は涙をぬぐい、美咲と俺の後ろに移動した、リラたちを見る。
「一緒に……暮らしている? ……詳しく説明してもらえるかな? あとそらの後ろにいる女の子たちのことも……」
目の錯覚だろうか? 彩香から黒いオーラがバンバン出ている。
顔は笑っているのに目は笑っていない。
「私は毎朝そらに起こしてもらい、そらの作った朝ご飯を食べ、そらと一緒に登校している。それから……」
彩香からでる黒いオーラどんどん濃くなっていく……きがした。
「美咲! あとは俺が説明するから! 一緒に住んでるって言うのは、同じツバサ寮って所に住んでるってことで、後ろの子たちは……」
リラたちのことをどう説明すればいいか考えていると……
「私はリラ・レイシャン。ソラの大切な人だよ。だって『俺はリラと離れるつもりはない』って言われたもん」
ヤタの森でのことだ。あの時は恥ずかしい事を言っていた気がする。
どうやら1人ずつ自己紹介をしていくようだ。
(決闘はどこにいったんだ……)
みんな俺たちを呆然と見ている。
「私はカカリ・ディアナです。私もソラ君の大切な人です。『必ずカカリを守ります』と言ってくたと聞きました」
ジェクトさんから聞いたのだろう。
「ペリル・ナナタリーよ。私もソラの大切な人。なんせ私とソラは切磋琢磨し合う仲なんだから……2人に比べたらレベルが低いわね」
切磋琢磨し合う仲って言うのは、魔法のことだ。
「マリナ・ファルースですわ。私もソラの大切な人ですわよ。私はソラ様のもの、ソラ様は私のものですもの」
会長さんは何を言っているのか、全くわからない。
「メリナ・トピアリーです。私はカナタ君の……別に何でもないです」
何もないんかい!
「よーく、わかったわ……つまり、そらのハーレムメンバーなのね」
呆れた顔で俺見る彩香。
「みんな俺の大切な人だけど! 決してハーレムじゃないから! 大体! 俺のどこに好かれる要素があるんだよ」
俺に女子から好かれる要素があるなら、16年間の内に1人ぐらい彼女は出来ているはずだ。
彩香から黒いオーラが無くなった……きがする。
「ハァー、ほんと……そらは変わらないわね」
「それがそら。仕方がない」




