第六十二話 リフホーネ遠征訓練2日目開始
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現在、魔法騎士団団長である、ダーマリーさんが決闘を始める前の挨拶をしているのだが、殆どの生徒と魔法騎士団の人たちがガチガチに緊張していた。
決闘前だから緊張しているわけではない。
この場に勇者がいるからだ。
美咲だけだったら、少しの緊張ですんだだろう。
だけど今この場には、30人の勇者が集合している。まさかの全員集合だ。
実は勇者たちは、今朝方にリフホーネに帰ってきたらしい。
そこに偶然遭遇した会長さんが、勇者のリーダーである輝に掛け合い、訓練所に連れてきたのだ。
(会長さんは偶然って言っていたけど、絶対偶然じゃないよな)
「偶然ですわよ。散歩をしていたら偶然勇者様たちと遭遇したのですわ」
「会長さん……今、口に出してましたか?」
「いえ。口には出してませんわよ……顔には書いてありましたが……」
そうだと思った。
(いつも思うが、俺の顔は一体、どうなっているんだ?)
普通思ったことが顔に出るタイプだとしても、わかることは『いまこいつ怒ってるな』『嘘をついてる顔だ』ぐらいだろう。
だけど、俺の場合は顔で表すことが出来ないようなことを、読み取られるのだ。
自分の顔をが怖い。
「そう言えば、トピアリーさん落ち着いてますね。本物の勇者様たちですよ」
この場には勇者が全員集合しているのだ。勇者に憧れているトピアリーさんなら、居ても立っても居られず、飛びついていきそうだが……
「本物って、毎日ソラくんとミサキ様を見てるじゃない。それに……」
トピアリーさんが俺の顔をジッと見る。
「私は出会えたから。私の勇者様に……」
トピアリーさんの声は小さく、なにを言ったのか聞き取れなかった。
「トピアリーさん。今なんて?」
大事そうなことを言った気がしたので、俺はトピアリーさんに聞き返えした。
「別に……ただ、勇者様たちはソラくんに気づかないねって言ったの」
「そうですね……」
トピアリーさんの言うとうり、勇者たちは誰1人俺に気付いていない。誰1人という事は、当然、彩香や輝もだ。
なぜかと言うと、俺たちの前には大きな壁が出来ているからだ。
他の生徒たちが、勇者たちをできるだけ近くで見ようとして、移動したのだ。
「ねぇー、本当にソラくんは勇者様たちと知り合いなの?」
「知り合いもなにも、勇者のリーダーは俺の親友ですよ」
「親友なのに気付いていないみたいだけど……」
そう言ってトピアリーさんが輝を見る。
(ひどい……)
トピアリーさんは『親友って思っているのは自分だけじゃないの』て言いたかったのだ。たぶん……
「俺から輝たちが全然見えないんだから、向こうからも見えてないだけですよ」
「わかってますよそれくらい。軽い冗談ですよ」
トピアリーさんが俺を見て笑う。
どうやら本当に冗談だったようだ。
「それなら、私がソラを【エア・フール】で浮かせてあげようか?」
【エア・フール】に乗ったら翔たちも気づいてくれると思うが……
「遠慮しておくよ。1人だけポツリと浮くのは恥ずかしいし」
今は訓練中だ。どちらの意味でも浮いてしまう。
「それでは決闘を始めたいと思う。1班から順に決闘を行おうと思っていたが、緊張しているようなので、先程から話をしていて、余裕そうな黒髪の男子生徒から決闘を行う」
ダーマリーさんが黒髪の男子生徒と言った瞬間、生徒たちが一斉に俺の方を向いた。
生徒の中で黒髪は2人いるが、男子生徒なのはご存知のとおり俺しかいない。
「……俺から!?」
「そうだ。髪しか見えないから早く前に来い」
髪しか見えないのになんで俺が喋っていたってわかったんだ? まるで高校の先生たちみたいだ。
「了解です」
俺はダーマリーさん……ダーマリー先生のところに向かおうと歩き始めた。
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