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一人だけ別の場所に召喚された勇者(仮)  作者: 鳩ゆうら
第3章
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第六十二話 リフホーネ遠征訓練2日目開始

ブックマーク登録ありがとうございます。

 現在、魔法騎士団団長である、ダーマリーさんが決闘を始める前の挨拶をしているのだが、殆どの生徒と魔法騎士団の人たちがガチガチに緊張していた。

 決闘前だから緊張しているわけではない。

 この場に勇者がいるからだ。

 美咲だけだったら、少しの緊張ですんだだろう。

 だけど今この場には、30人の勇者が集合している。まさかの全員集合だ。

 実は勇者たちは、今朝方にリフホーネに帰ってきたらしい。

 そこに偶然遭遇した会長さんが、勇者のリーダーである(あきら)に掛け合い、訓練所に連れてきたのだ。


(会長さんは偶然って言っていたけど、絶対偶然じゃないよな)


「偶然ですわよ。散歩をしていたら偶然勇者様たちと遭遇したのですわ」

「会長さん……今、口に出してましたか?」

「いえ。口には出してませんわよ……顔には書いてありましたが……」


 そうだと思った。


(いつも思うが、俺の顔は一体、どうなっているんだ?)


 普通思ったことが顔に出るタイプだとしても、わかることは『いまこいつ怒ってるな』『嘘をついてる顔だ』ぐらいだろう。

 だけど、俺の場合は顔で表すことが出来ないようなことを、読み取られるのだ。

 自分の顔をが怖い。


「そう言えば、トピアリーさん落ち着いてますね。本物の勇者様たちですよ」


 この場には勇者が全員集合しているのだ。勇者に憧れているトピアリーさんなら、居ても立っても居られず、飛びついていきそうだが……


「本物って、毎日ソラくんとミサキ様を見てるじゃない。それに……」


 トピアリーさんが俺の顔をジッと見る。


「私は出会えたから。私の勇者様に……」


 トピアリーさんの声は小さく、なにを言ったのか聞き取れなかった。


「トピアリーさん。今なんて?」


 大事そうなことを言った気がしたので、俺はトピアリーさんに聞き返えした。


「別に……ただ、勇者様たちはソラくんに気づかないねって言ったの」

「そうですね……」


 トピアリーさんの言うとうり、勇者たちは誰1人俺に気付いていない。誰1人という事は、当然、彩香(あやか)(あきら)もだ。

 なぜかと言うと、俺たちの前には大きな壁が出来ているからだ。

 他の生徒たちが、勇者たちをできるだけ近くで見ようとして、移動したのだ。


「ねぇー、本当にソラくんは勇者様たちと知り合いなの?」

「知り合いもなにも、勇者のリーダーは俺の親友ですよ」

「親友なのに気付いていないみたいだけど……」


 そう言ってトピアリーさんが輝を見る。


(ひどい……)


 トピアリーさんは『親友って思っているのは自分だけじゃないの』て言いたかったのだ。たぶん……


「俺から輝たちが全然見えないんだから、向こうからも見えてないだけですよ」

「わかってますよそれくらい。軽い冗談ですよ」


 トピアリーさんが俺を見て笑う。

 どうやら本当に冗談だったようだ。


「それなら、私がソラを【エア・フール】で浮かせてあげようか?」


 【エア・フール】に乗ったら翔たちも気づいてくれると思うが……


「遠慮しておくよ。1人だけポツリと浮くのは恥ずかしいし」


 今は訓練中だ。どちらの意味でも浮いてしまう。


「それでは決闘を始めたいと思う。1班から順に決闘を行おうと思っていたが、緊張しているようなので、先程から話をしていて、余裕そうな黒髪の男子生徒から決闘を行う」


 ダーマリーさんが黒髪の男子生徒と言った瞬間、生徒たちが一斉に俺の方を向いた。

 生徒の中で黒髪は2人いるが、男子生徒なのはご存知のとおり俺しかいない。


「……俺から!?」

「そうだ。髪しか見えないから早く前に来い」


 髪しか見えないのになんで俺が喋っていたってわかったんだ? まるで高校の先生たちみたいだ。


「了解です」


 俺はダーマリーさん……ダーマリー先生のところに向かおうと歩き始めた。

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