第四十五話 探せ!
俺たちはツバサ寮に向かっている。1時間ぐらい泣いていた獣王様が俺に改めて話があるて行ってきたからだ。
何故か俺が先頭で歩き、隣に会長さん、後ろにリラたちツバサ寮女子組、最後尾に獣王様とその護衛の執事&メイド兄妹で歩いている。
シルドさんは仕事が残っているらしく、学園に戻った。
周りを見ると多くの生徒たちが、俺たちに注目していた。その視線は殆ど獣王様にだが……
学園内に国を治める王様が歩いているのだ。注目されないわけがない。
その獣王様はウィーグさんたちと何かを話している。
「俺が不甲斐ないばかりに……」
「ウィーグ……お前は良くやってくれた……相手が規格外すぎただけだ」
「じゃぁ……やっぱりあいつは……」
「まさか!? 」
ウィーグさんとアルシーさんが、俺を見ながら驚いている。
「まだ確証は無いがな。私の勘がそうだと言っている」
獣王様たちは小声で話しているので、何を話しているかはわからない……と言うより、俺の隣を歩いている会長さんが……
「ソラ様! 明日からよろしくお願いいたしますわ」
「役に立てるかわかりませんが、よろしくお願いします」
「大丈夫ですわ。私が手取り足取り教えて差し上げますから!」
そう言って会長さんが俺の腕をギュッと抱きしめてきた。
「ちょ!? 会長さん!?」
(胸がやわ……じゃなくて!)
「ちちち近いです会長さん。離れて……え!?」
幸いにも他の生徒たちは獣王様に注目していたので、誰にも見られないうちに『離れて下さい』と言おうとしたら反対側の腕にリラが勢いよく抱きついてきた。
「なっ何で!? リラまで……」
リラの顔を見ると会長さんと違って恥ずかしそうだ。無茶苦茶顔が赤い。
「私にもわからないよ……ただ……」
「ただ?」
俺はじっとリラの顔を見つめて、答えを待つ。
「なっ! 何でも無い!」
「それなら離れ……いたっ!?……くわない」
痛くは無かったが、誰かが後ろから俺の足を蹴った。
誰だと思い振り返ると美咲が無言で俺を睨んでいた。
「美咲さん……怒ってます?」
「怒ってない」
『怒ってない』と言いながら美咲は俺を蹴り続ける。
結局のところ、ツバサ寮に着くまで、会長さんとリラに抱きつかれ、美咲に足を蹴られ続けた。
俺が鍵を開けてツバサ寮の中に入ると、後ろにいた会長さんが……
「ここがソラ様の住んでいる寮ですの!? すんすん……確かにソラ様の匂いがしますわ!」
「会長さん! 何も臭いませんから!? 臭わないよね?」
俺は心配になり、リラ聞いてみた。
「ソラは落ち着く匂いがするよ」
落ち着く臭い? どんな臭いなんだ? 畳の匂い……なら……いい匂いだからいいのか?
「玄関に突っ立ってないで早く進みなさいよ」
俺が玄関であれこれ考えている間に、後ろが詰まっていたようだ。
急いで靴を脱ぎ、リビングに向かおうと歩き出そうとすると、
「ソラ様!」
名前を呼ばれたので振り返ると、会長さんが、どうしたらいいかわからない顔をしていた。
「会長さん。ツバサ寮では、土足禁止なんで、ここで靴を脱いで中に入ってもらうんですがいいですか?」
会長さんはツバサ寮に入るのは初めてだ。普通は家に入る時でも靴は脱がない。だから、俺が靴を脱いだ事に戸惑っていたのだ。
「わかりましたわ」
俺は会長さんが靴を脱いだのを確認して、リビングに案内した。他の人も続々とリビングに入って来た。
朝と同じ様に、俺とカカリがソファーに座り、向かい側のソファーには獣王様が座っている。勿論後ろには、ウィーグさんとアルシーさんが立っている。
沈黙が流れる
「カナタ・ソラ」
「っはい!」
急に名前を呼ばれたので少し驚いてしまった。
「約束どおりお前を認めてやる」
そう言えば、俺がウィーグさんに勝てば、何のことかはわからないが、獣王様が認めてくれるって話だった。
「悔しいが、お前になら……我が愛しい娘、カカリちゃんを任せることができる……」
獣王様が再び涙を流す。
「お父様?」
獣王様がいきなり立ち上がり、ツバサ寮を走って出て行った。
「カナタ・ソラ! 獣王様を追え!」
(何で俺!? 普通はカカリがおった方が……)
「獣王様は、まだ貴方に話さないといけない事があるのです!」
(じゃぁ何で逃げたんだよ!)
「ソラ君! お父様のあの顔は、自分を責めている時の顔です。だから! ……お父様をお願いします」
カカリに頼まれたので仕方なく、俺は獣王様を探しにツバサ寮を出て行った。
「漫画でよくあるよな、逃げたヒロインを探しに行く主人公って……」
俺が探しているのはヒロインではなく、国の王様だけど……
「本当に! どんな王様だよ!」
獣王様を探し始めて15分ぐらい経ったころ……
「獣王様……見つけましたよ……」
走り回わったので少し息が切れている。
「やっぱり来たな……ソラ君。でも……よく私がここにいるとわかったな」
獣王様を見つける事ができた理由は簡単だ。いろんな生徒たちに獣王様がどっちに行ったか聞き回ったのだ。
(ソラ君?)
今、獣王様は俺のことを、『貴様』でもなく、『カナタ・ソラ』でもない、『ソラ君』と呼んだのだ。
それに……『やっぱり来たな』と言ったのだ。
「ウィーグたちに頼んでいた。もし、私が逃げたらソラ君に探させてくれと……二人きりで話したいこともあったからな……」
「俺に……話したいことですか?」
「カカリちゃんについてだ。これはカカリちゃん本人も知らないこと……それと、これからの事……カカリちゃんの人生に大きく関わることだ……」
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