第四十四話 決闘ⅱ
取り敢えずやられたらやり返さないといけない。
「まずは……ファイヤー・ランス!」
俺の周りに20本の炎の槍が現れた。
【ファイヤーランス】は授業で教えてもらっていたので前から使える。
ウィーグさんとの距離が遠すぎて狙いにくそうだったので、俺は【アクアフォース】で強化をしたままウィーグさんに近づいて行き、1本ずつ炎の槍を飛ばしていった。
何故1本ずつ飛ばしていくのかと言うと、炎の槍を一気に飛ばすと、俺みたいに簡単に避けることができるので、避けた瞬間を狙って次の炎の槍で攻撃していくのだ。
「勇者……もどき……俺の……真似……危ねっ! 俺の真似を……してんじゃ……ねぇよ!」
【ファイヤーランス】を避けながら喋っているので言葉が途切れ途切れだ。
聞き取りづらい。
「でもな! ……これく……らい……簡た……簡単に……避けれるんだよ! ……あちっ!?」
ウィーグさんはまだまだ元気そうだ。
残りのファイヤーランスを適当にウィーグさんに投げた。
「じゃぁどんどん行きますよ」
やられたらやり返す第二弾。
「次は……フレイムバースト」
俺の頭上に、ウィーグさんの放った【フレイムバースト】より一回り大きな炎の玉が現れた。
「おっ……お前!? フレイムバーストも使えたのかよ!」
「いえ、今初めて使いましたよ。そもそも、ウィーグさんが使うまで、この魔法の名前すら知らなかったですし……」
「フレイムバーストは上級魔法だぞ!? 一度見ただけで成功するはずがないだろ! この魔法を覚えるために何年掛かったと思ってるんだ!」
「直感で成功するって思ったんですよ」
最近、誰かが使った魔法を見ると、『俺にもできそう』『練習すればできるだろう』『これは……無理だな』など思ってしまう。
『俺にもできそう』と思った魔法は、一度見ることができれば、大体一発で成功する。
『練習すればできるだろう』と思った魔法は、練習すればできるようになる。
『これは……無理だな』と思った魔法は、俺には一生使えない魔法だ。最近では、アルシーさんが使った、【テレポート】が当てはまる。
「……天才が! だがな、この距離だとお前も無傷ではいられないがいいのか?」
ウィーグさんに向かって【フレイムバースト】を当てるにしても空中で爆発させるにしても、再び爆風が俺を襲うだろう。
「それに俺はフレイムバーストを簡単に避けれるぞ……ファイヤーフォース」
ウィーグさんの全身が赤く光った。
「大丈夫ですよ、これ以上ダメージを受けるつもりも無いですし……頑張って逃げて下さい」
そもそも【フレイムバースト】は爆発させる気もウィーグさんに当てる気も無い。
ウィーグさんが【フレイムバースト】に気を取られている隙に……
「フリーズ」
ウィーグさんに向けて【フリーズ】を放った。すると、ウィーグさんの足元から徐々に凍っていく。
「頑張って逃げて下さいって言ったのに」
俺は【アクアフォース】を解いた。
「くそっ! フレイムバーストは唯の囮かよ!」
ウィーグさんは【ファイヤーフォース】を解除して凍り始めた足元を【ファイヤーボール】を連発して溶かしているが、凍るスピードの方が早く腰まで凍っていた。
「ウィーグさんもう逃げれませんよ。どっちがいいですか? 全身が凍るのを待つか……それともフレイムバーストを爆発さるか。もちろん俺が離れてから爆発させますよ」
そう言って俺は、【フレイムバースト】をウィーグさんの真上に移動させた。
なんか悪役みたいだ。
ウィーグさんは首まで凍っていた。
「降参するなら今すぐ魔法は解いてやる。お前のお陰で覚悟が決まったからな」
やっぱり俺は、人を傷つけたり殺したくは無い。相手が新魔王軍でもだ。
だけど……俺は人が相手でも上級魔法を使う覚悟を決めた。
「それに俺は、この空のように心が広いからな……そらだけに」
俺は綺麗な青空を見上げながら言った。
「くっ! …………降参だ」
ウィーグさんがポツリと呟く。
俺は【フレイムバースト】と【フリーズ】を解いたが、【フリーズ】は凍っていくのが止まるだけで、凍った部分は解いてもそのままだ。
「ウィーグさんの降参により、決闘の勝者はソラ君です」
いつの間にか俺の隣に立っていたシルドさんは、俺の勝利宣言をした。
『魔法騎士団のお方に勝ってしまうなんて! 流石私のソラ様ですわー』
『ソラ君今日は勝利会ですね。美味しい料理を沢山作ってくださいね』
『よくやったわソラ。最初はヒヤヒヤしたけどね』
『やっぱりソラは凄いよ』
みんなそれぞれ、俺の勝利を喜んでくれているようだ。美咲は決闘が無事に終わって安心しているように見える。
ウィーグさんが負けたからか獣王様が泣いていた。
アルシーさんは……ウィーグさんの氷を溶かしていた。
「アルシー! 熱い! そこはもう溶けてるって」
「いい気味です」
アルシーさんはウィーグさんを見て鼻で笑った。
こうして俺の決闘が終わった。
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