第四十三話 決闘ⅰ
シルドさんの合図で決闘が開始した。
「今回は武器は無しだ。魔法だけでやるぞいいな?」
ウィーグさんは、俺がまだ長剣の扱いが全然なことを知っていたのだろうか? シルドさんは細剣を携えているところを見ると、武器が扱えないって事はないだろう。
「分かりました」
俺はまず、ウィーグさんから距離をとった。どんな魔法を使ってくるかわからないからだ。
「おいおい……そんなにビビるなよ勇者もどき!? ファイヤー・ランス!」
ウィーグさんの周りにいくつもの炎の槍が現れた。
「まずは小手調べだ!」
ウィーグさんが左手首をスナップさせると、その炎の槍が俺に向かって飛んでくる。
「アクアフォース」
俺の全身が青く輝いた。
『アクアフォース』で全身を強化して炎の槍を避けたあと、ウィーグさんの後ろに回りこんだ。
「しまった!?」
俺が後ろに回りこんだ事に気付いたウィーグさんは、距離をとろうと動き出すが、遅かった……
「エア・インパクト」
ウィーグさんが風の衝撃をもろに受けて吹き飛ばされ、背中から勢いよく地面に叩きつけられた。
もう動けないだろうと思いアクアフォースを解いた瞬間、ウィーグさんが立ち上がった。
「その年で全身強化か。さすが勇者もどきだ……だかな! 中級魔法だぁ? ふざけてんのかお前? 今のが上級魔法なら俺はお前に歯が立たず簡単に負けていた。だがなぁ! お前は逃げた」
あんな間近で上級魔法を放てば避けれず確実に殺してしまう。そんな事は出来ない。
「カナタ・ソラ! お前は甘いんだよ!」
ウィーグさんが左手を上に上げた。
「フレイムバースト!」
すると、ウィーグの頭上に4メートル程の大きな炎の玉が現れ、ゆっくりと俺の方に飛んで来きた。
「勇者もどき! これをなんとかできねぇーなら期待外れだ。まぁ殺しは死ねぇから安心しろ」
殺しはしないと言っているが、あの大きな炎の玉が直撃したら絶対に死ぬと思う。
「ウォーターバリア……ウォーターバリア……ウォーターバリア」
火には水だと思いウォーターバリアを5メートルぐらいの大きさで3重に展開して防ごうと思ったが……
「魔法を3つ同時展開か!?……でも残念だったな……知識不足だ」
ウィーグさんが俺を見て笑った。
「えっ!?」
炎の玉がウォーターバリアを避けて俺の方に向かってきた。どうやらウィーグさんが自由に動かせる様だ。
「それなら……アクアフォース」
『ウォーターバリア』は展開した後は動かせないので『ウォーターバリア』を解除した後、再び『アクアフォース』で全身を強化した。
『アクアフォース』で強化したまま、スピードの遅い炎の玉の下か横を通り、ウィーグさんのところまで移動する。
俺に避けられた『フレイムバースト』は次の魔法を使うために解除するだろう。
『フレイムバースト』を解除して、次の魔法を使う時には必ずスキができる。そこに、フリーズを放ち、手足まで凍らし動けない様にして、ウィーグさんを無力化するのだ。
俺は炎の玉の下を通りウィーグさんの所まで走る事にした。
俺が炎の玉の真下を通った時……
「……チェック」
ウィーグさんがボソッと呟いた。その瞬間、炎の玉が空中で爆発した。
爆発した周辺に煙が舞う。
『『『ソラ(君)!?』』』
観客席にいるリラとペリルそれにカカリが叫んだ。美咲はじっと煙の中を見つめている。
「やべっ!?……やり過ぎちまったか? 俺も大技を出したのはまずかったか? まぁ期待外れには違いねぇが……シルド様勝敗はつきました。早くあいつに回復魔法を……」
「まだ終わってないですよウィーグさん。よーくあそこを見てください。多分ですがソラ君、怪我一つないですよ。ソラ君! 耳を強化しているから私たちの声も聞こえてますよね?」
シルドさんは爆発から逃れて、煙の外で様子を伺っていた俺を指差した。
(聞こえてるよ! 大体……これの何処が無傷だよ!)
煙が晴れたのでシルドさんにも見えるだろう。俺の制服は汚れて、少し火傷をしたし、至る所に擦り傷もある。
「死ぬかと思った……」
俺は『フレイムバースト』が爆発した瞬間にウォーターバリアで爆風を防ぎながら後ろにジャンプして、風属性魔法である『ガスト』を自分に放った。突風によって飛ばされることで爆発を避けたのだ。アリーナが広くて助かった。
「けど…………」
もしこれが実戦で……相手が新魔王軍だったとしたら? アリーナの中ではなく、街の中で『フレイムバースト』ような魔法を放たれていたら? みんなを守れていただろうか……
俺は……人を殺せるような魔法は放てない。
多分……新魔王軍が相手でもだ。だけどその甘さが自分の死や誰かの死に繋がるかもしれない。
「すーはぁー」
俺は深呼吸をした。
みんなを守るためにとある決心をしたのだ。
「シルドさん危ないですから観客席まで離れていて下さい。それとウィーグさん。今から本気出しますから……頑張って逃げて下さいね」
強くなるには……それなりの覚悟が必要だ。
「シルド様。勇者もどきは今なんて……」
ウィーグさんは俺がなんと言ったか聞こえていなかったようで、シルドさんに聞こうとしたが、すでに、シルドさんの姿はなかった。
いつの間にか観客席に移動していたのだ。
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