第四十二話 新事実
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「獣王様!? 俺がこの勇者もどきと決闘ですか?」
ウィーグさんが慌てている。
「本当だったら私自身が相手をしたいところだが……」
獣王様がカカリを見た。
「私はカカリちゃんと離れたくない」
獣王様はキメ顔で言った。
何故か俺が決闘をする前提で話が進んでいる。
「俺は決闘をするなんて一度も言ってませんよ。獣王様」
抗議をしたが獣王様は聞いちゃいない。
この世界はいつも、俺の意思を無視して動いている気がする。
「ソラ君すみません……お父様は一度決めたことは、お母様が言わない限りですね……誰も止めれません」
隣に座っているカカリはこう言いたいのだろう『お父様に目をつけられた時点で諦めが肝心です』と……
「……理不尽だ」
ピンポーン
リビングにインターホンが鳴り響いた。誰かがツバサ寮に尋ねてきたのだが、今の俺に動く気力がない。
「私が行ってくるわね」
椅子に座っていたペリルが玄関に向かってくれた。
ペリルには悪いが話を進める事にした。
「獣王様。俺は決闘がどんなものかをあまり知らないんですが……」
決闘の大まかなイメージはわかる。武器を持ち一対一で戦い倒れた方の負けだ。
獣王様が口を開けた瞬間、シルドさんがペリルと一緒にリビングに入ってきた。
「それなら私が説明しましょう」
(なんでいつも、この人は良いタイミングで現れるんだよ!)
「……ソラ君。『なんでいつも良いタイミングで現れるんだ』って顔に書いてありますよ。理由は簡単です。この学園で面白そうなことが起きるなら、学園長である私が気がつかないわけがないじゃないですか。それに……」
そう言いながら、シルドさんは獣王様の方を向いた。
「お久しぶりですジェクトさん。私が学園長就任以来ですかね? それより、急に来ないでくださいよ。ジェクトさんが来たとわかった時、私の心臓が飛び出しそうでしたよ」
「世界一の魔法使い様に驚いてもらえて私も光栄だ。久しぶりだなシルド」
獣王様とシルドさんは冗談が言える仲らしい……えっ!? 今、獣王様がサラッと凄いことを言ったような?
「えっ!?……えっ!? シルドさんが……世界一の魔法使い!?」
(こんな人がこの世界一番の魔法使いなのか?)
「ソラ君……まさか……知らなかったんですか!?」
「…………うん」
俺はシルドさんの事を子供みたいな人としか思っていなかった。なんでこの人が学園長なんだとは思っていたが、世界一の魔法使いだなんて……
周りを見るとみんな、俺が知らなかったことに驚いているようだ。あのリラですら『知らなかったの!?』みたいな感じまで俺を見ていた。
「世界一の魔法使いにだなんて大げさですよ。私はちょと魔法の得意な学園長ですよ。私の実力なんてすぐに勇者様たちに抜かれてしまいますよ」
シルドさんは美咲と俺を見た。
「ちょと魔法の得意なだけでお前みたいな若い奴が、この学園の学園長になれるわけないだろ」
シルドさんは学生時代から多くの魔法や魔導具を開発した。多くの功績を残した人で、ツバサ学園卒業後は、すぐに学園長に就任したそうだ。
「私の話はいいですから、忘れてませんか? 今からソラ君とえっと……執事の男性が決闘をすることを? 決闘の話をしますね」
シルドさんの言うとうり俺たちは完全に忘れていた。
「決闘はですね…………」
決闘は俺がイメージしていたものと殆ど同じだった。魔法が存在するの世界なので、武器だけではなく魔法も使える。
「場所を移動しましょうか」
そういう事で俺たちは、前に会長さんと模擬戦を行った場所、『アリーナ』に来ている。前と違って木などは一切ない。観客席にはリラたちが座っていた。
何故か会長さんの姿もある。
「準備は良いですか? そろそろ始めますよ。明日から学園が始まりますし、私も忙しいので」
シルドさんはそんなことを言っているが、審判役を自分から引き受けている。
「ちょ!? ちょて待ってください!」
俺は移動中ずっと考えていた。決闘は対人戦だ。魔法でウィーグさんを殺してしまうかもしれないし、逆に俺が死んでしまうかもしれない。
そう思うと手が震えしまう。エートスやフーライラと戦った時とは全然違う恐怖だ。
「おい! 勇者もどき! お前……俺と戦う事にビビってんじゃねーだろうな?」
「……ビビってないです」
嘘だ……戦うのが無茶苦茶怖い。
「なら全力でこいよ天才君。俺も乗り気じゃなかったが、さっき獣王様が言ったことが本当か確かめてやる」
獣王様がウィーグさんに何を言ったのか気になったが、今はそれどころでは無い。
シルドさんの合図により、俺とウィーグさんの決闘が始まった。
次回が決闘です。




