第三十六話 捕獲大作戦ⅱ
そもそも俺が逃げ切った時の景品である『生徒会所属』は、ツバサ学園に在籍している生徒たちにとっては目標でもあり憧れでもある。
何故なら、生徒会に所属し卒業した生徒は、各族の王族に使える魔法騎士団に入ることのできる権利が貰える。他にもいろいろ特典があるそうだが俺は知らない。ついでに言うと、先ほどから一度も見ていないペリルは、強くなって魔法騎士団に入ることが目標だそうだ。
各族という事は、マフカースには、エルフの国も存在する。別の大陸にあるらしいが、エルフの国がある事は、リラも授業で習って初めて知ったそうだ。どうして冒険者でもないマーシさんたちがエルフの国に住んでいないのかも気になる。基本は、冒険者や商人でもない限り、国の周辺に住んでいるそうだ。
話を戻すが、俺が生徒会に所属する事で得する事は有るのか? シルドさんも流石に、俺が得をすることがあるから景品を『生徒会所属』にしたはずだ。たぶん……
「どうしよっかな〜。生徒会に入ってみようかな」
俺はリビングで椅子に座って考える。
「いいんじゃない? 生徒会に入っても……私にとっては羨ましいけどね」
そう言ってペリルは、キンキンに冷えたジュースを俺に渡した。
「ありがとって…………ペリル!?」
「なんでそんなに驚くのよ」
「いや、だって……あれ?」
ペリルはみんな持っているムシアミを持っていない。
「私は『第1回カナタ・ソラ捕獲大作戦』には参加してないのよ」
「あの時は面白いから参加するみたいなことを……」
ペリルは自分の分のジュースを一口飲み、
「あとで気づいたんだけど、私的にはソラが生徒会に入ってくれた方がありがたいのよ」
「ありがたい?」
「ソラが私を推薦してくれれば、生徒会に入れるかもしれないじゃない」
ペリルが言うには、現生徒会の人が次の生徒会を選ぶ権利があるそうで、俺が生徒会に入れば、ペリルの生徒会に入る目標に近づくそうだ。
「もちろん、私も生徒会に入れるくらいに実力はつけるつもりよ。だから頑張って逃げなさい」
ペリルが勢いよく、コップに入ったジュースを全部飲み干した。
「あと、今のうちに出て行った方がいいわよ。リラたちならソラがツバサ寮にいることぐらいすぐに分かるはずだから」
そう言ってペリルは、リビングから出て行った。階段を上る音が聞こえてくるから、自分の部屋に行ったのだろう。
俺はペリルに言われたとうりにツバサ寮を出るとリラ、美咲、カカリたちがいた。
「みんなー、やっぱりソラはこっちにいたよ」
リラが大きな声を出すと、至る所から多くの生徒たちが現れた。
しかし、みんな疲れ切った顔をしている。
「観念してくださいソラ君。もう逃げ場はありませんよ」
カカリの言うとおり人が多すぎて逃げ道がどこにも無い。と思っている間にも生徒の数は増え続ける。
すると、ムシアミを持っていない美咲が一歩前に出た。表情には出ていないが俺にはわかる……美咲はキレている
「えっと……美咲さん? こんな人が多いいところで魔法を放ったりしないよね?」
俺の言葉に周囲の人が息を呑み美咲に注目するが……
「そんなこと……」
「そんなこと?」
「ファイヤーボール」
美咲の放ったファイヤーボールが俺の方に向かってきた。
「ウォーターバリア」
向かってきたファイヤーボールを俺の出したウォーターバリアで全て防いだ。
「なら……エアショット」
アクアショットの風属性版の魔法だ。初級魔法には、大体各属性版が存在している。
ウォーターバリアをエアショットが貫通した。
「あっぶね!」
華麗な足さばきで避けなければ、俺の足にエアショットが当たっていた。
「美咲、他に当たったらどうするんだよ!」
「初級魔法だけだから大丈夫。そらにしか当てない」
そう言って美咲は多くの初級魔法を俺に向かって放つ。
「美咲が何に怒っているかわからないけど、謝るから許して……」
「…………」
それでも美咲の攻撃は止まらない。
「それなら……プリンを作るからそれで許してくれ!」
「……わかった」
美咲が魔法を放つのを止めて、トコトコとツバサ寮の中に入っていった。美咲は、プリンが大好物なのだ。
すると……
『学園長もう話しても大丈夫なんですの? 分かりましたわ。これにて『第1回カナタ・ソラ捕獲大作戦』の終了を宣言致しますわ』
会長さんの声がツバサ学園全体に響き渡る。
『参加した生徒は、大講堂に集まってくださいませ』
会長さんの放送? が終わると、生徒たちが解散していった。
「やっと……終わったー!」
俺はスキップをしながらツバサ寮に入ってリビングに向かうと美咲が椅子に座っていた。
「美咲は大講堂に行かなくていいのか?」
「……プリン作って」
第1回カナタ・ソラ捕獲大作戦は、美咲にプリンを作ることで終了した。




