第ニ十九話 日記
「勇者ツバサは、ソラの祖父のツバサさんなの? 」
「「「えっ!」」」
美咲の発言に、口を押さえて目を大きく開くペリルと耳をピーンとさせて目を大きく開いているカカリ。二人が驚くのはわかるが、何故かリラまで驚いている。
(リラは、俺の祖父のこと知ってるだろ!)
心の中で、ツッコミをいれる俺。
「そうだよ美咲。でも何でわかったんだ? 700年前の話だぞ。俺でさえ、最初は祖父が勇者だと聞いても信じれなかったのに」
すると、美咲が一つの本を俺に渡した。その本には、タイトルが無いが、歴史を感じさせる薄く古い本だった。
「中を見て」
美咲は、これを見て、俺の祖父が勇者ツバサかも知れないと思ったらしい。
俺は、本の1ページ目を開く。
私はこの日、一人の勇者を召喚に成功した。名前は、カナタ ツバサと言うらしいのだが、本当に勇者なのか疑わしいぐらいに、泥で汚れていた。しかし、適正属性と魔力量を調べると、彼は、すごい才能を持っていた。適正属性は全属性、魔力量は普通の人の10倍以上この日私は、この人なら世界を救ってくれると思った。
2日目、彼は凄い、1日で上級魔法をいくつも使えるようになった。彼の練習姿を見ていると、私も頑張らなきゃと思わされる。明日は、勇気を出して話しかけてみようと思う。
3日目、ツバサは話してみると優しく、いろいろなことを話してくれた。それに私の赤い髪も綺麗だと褒めてくれた。
4日目、この日、王都は大騒ぎになった。ツバサがいなくなったからだ。しかし、ツバサはひょっこりと帰ってきた。私は、ツバサにどこに行っていたのか聞いてみると、女神レーアス様と会っていたそうだ。ツバサは、見たことのない長剣を携えていた。後で聞くとその剣は、聖剣アルダートって言うらしい。女神レーアス様に貰ったそうだ。
5日目、明日は、ツバサと一緒に旅立つ日だ。不安もいっぱいだが、ツバサと一緒なら何だって乗り越えられる気がする。5日間と短い間だったが、この日記はリフホーネに置いていこうと思う。
そこから空白が続き最後のページに再び書いてあった。
私たちは魔王を倒した。長い旅も終わりを告げる。ツバサは、魔王を倒した後聖剣アルダートをロナテーナに封印して、魔道具を共に旅をしてきた仲間に渡していった。ツバサは、故郷であるニッポンに帰ることを決めたのだ。
私はツバサについて行くのでこの世界に帰ってくることはないと思う。『ツバサ争奪戦』を勝ち抜いた私にとって、ツバサについて行けることは、幸せなことだ。まだまだ書きたいことはたくさんあるけど、ツバサが来たので終わります。エルシャ・リフホーネ
俺は、本ではなく日記を閉じた。
俺の祖母の名前は、奏多 エルシャ だ。これは祖母の書いたもので間違いないだろう。
(祖母の日記か……ツバサ争奪戦ってなんだろう?)
「美咲、これどうしたんだ? 」
「………………拾った」
(今、間があった気がしたが気のせいか)
「ちょっ! ちょっと待って!? 」
先程まで、静かにしていたペリルが、慌てたように話に割り込む。
「本当にソラは、勇者ツバサ様の孫なの? 」
「そうだと思うよ。レーアス様にも、ツバサに似ている、孫だって言われたし」
するとカカリとペリルが、
「そっ ソラ君は、女神レーアス様に会ったことがあるんですか!? 」
「王族でもあるのよね?」
だんだん、ゴチャゴチャしてきたので、俺はまとめることにした。
「勇者ツバサは、俺の祖父だから、俺は勇者ツバサの孫でもある。祖母が元王族だけど俺は違う。後、レーアス様には、ルーブビレの教会で一度だけ会って話したことがある」
ペリルとカカリの俺の見る目が、キラキラしている目に変わった。まるで、アイドルを見ているような目だ。
すると美咲が……
「わたしは、聖剣アルダートの封印を解きたい。だから、そらも力を貸して」
美咲は、勇者ツバサの孫の俺なら、聖剣アルダートの封印を解くことができると思っているのだろう。実際にも、封印されている事にも気が付かずに普通に抜けたんだが、
「美咲、それなら大丈夫だよ」
「大丈夫? 」
美咲の頭にハテナが浮かぶ。俺はサフィークから聖剣アルダートを取り出した。
「これが聖剣アルダートだ」
俺は、鞘から聖剣アルダートを抜き、美咲に見せる。
「俺が召喚されたオズタートって場所で、こいつを見つけたんだよ。後、一応この事は内緒にしていてくれ」
みんなは無言で頷いてくれた。
「ソラ様がツバサ様の孫で聖剣を持っていることは、分かりましたけど、そろそろ、私が言ったことも教えてくださいませんか? 」
ペリルが俺のことを様付けした。
「ペリル様付けはやめてくれ、後その話し方も」
まるで先程のカカリの気分を味わっているようだ。
「ですが、ソラ様は、王族であり、ツバサ様の孫様ですので……」
「いいから、俺のことは呼び捨てで、敬語もなし。カカリもだからな」
「わっ分かりましたけど、呼び捨ては、流石にできないので……私は、いつも通り、ソラ君と呼びますね」
ペリルはため息をつき
「私もこの喋り方はきつい。よくパパは、ずっとこんな方苦しい喋り方をできるわね」
ペリルには敬語を使うにはまだ早かったようだ。
「で? ソラ、ルーブビレでのことを教えてくれるのよね? 」
俺は、ペリルたちにルーブビレであったことを話した。俺が、フーライラを倒したこと、リラが避難し遅れた人を助けたこと。
「ソラにリラ、私の故郷を……人々を助けてくれてありがとう」
ペリルが俺たちに深く頭を下げた。




