第三十話 顔合わせ会
翌日の朝、俺は制服に着替えて、リビングに向かった。
「おはようみんな……ってえっ!?」
リビングには、行儀よく椅子に座っている、美咲、リラ、ペリル、カカリの姿があった。
「えっと……何やってんの?」
俺は一番近くにいた美咲に聞いた。
「待ってた」
(まさか、俺が起きてくるまで……)
みんなが俺を待っててくれたのかと、そう思ったが……
「そらが、朝食を作ってくれるのを」
俺は、みんなから背を向き、無言でリビングを出ようとしたら、グイっと袖を誰かに引っ張られた。振り返ると……
「私もソラ君の作った、朝ごはんが食べたいです」
椅子に座ったまま、上目遣いで頼んでくるカカリに、俺は、無意識に頭を撫でていた。
「あっあのぉーソラ君? 」
カカリの頭を撫でていた事に気付いた俺は、急いで台所に向かい料理を始めた。
(なんで頭を撫でたんだよ俺! カカリは、妹じゃないんだぞ)
俺には一人の妹がいる。妹が不安になっていた時や頼みごとをしてくる時には、安心させたり、直ぐにするからと言う意味で、いつも頭を撫でていた。カカリが年下と知った後に、頼みごとをされたので、俺は少し、妹とカカリを重ねてしまったのだ。
料理を作り終えたあと、俺は無言で料理をテーブルに運んでいく。もちろん、リラたちの分も作ってある。
「カカリ! さっきはいきなり、頭を触ってごめん! 」
「きっ気にしてませんから! それより、ソラ君が作ってくれた料理なんですから、冷めないうちに食べましょうよ」
「そっそうだな。食べようか」
俺は椅子に座り
「美咲は、知っていると思うけど、食べる前と終わった後にやってもらいたい事があるんだけど……」
俺は、みんなに、『いただきます』と『ご馳走様でした』の説明をした。
「ソラの世界にはそんな習慣があるのね。早速やってみましょうよ」
俺たちは、手を合わせて、
「「「「「いただきます」」」」」
それから俺たちは朝食を食べ終え、学園に向かった。いつも通り美咲とカカリに視線が集まっている。
「今日はまず、昨日言ったように専門分野の授業についてだ」
俺たちは、先ほど配られたプリントを見る。『冒険者の技術』や『武器生産』など、ちゃんとした専門分野もあるが、中には、『勇者ツバサ研究』、『人生とは何か』など、変な専門分野も書いてあった。
「明日には、専門分野見学があるので、気になる分野を見つけておくように。今から上級生との顔合わせがあるので、大講堂に移動する」
大講堂は、入学式を行った小講堂と比べて、倍以上に大きく、学年全体が集まる時に使う場所だ。
俺たちは大講堂に移動して、指定された席に座った。
「生徒がいっぱいいるね」
「三学年だから、三万人以上はいるからな」
生徒が誰も止めていなければだが……
「一番前の席は落ち着きません……」
大講堂は、ステージから見て、台形の形で座席が設置している。俺たちは、Sクラスとして、一番前の左側に座っているのだ。中央には二年生が、右側には三年生が座っている。
「何言ってんのよ。私たちは、Sクラスとして堂々としていればいいの」
俺たちが話していると、一人の男性と女性がステージに上がった。
「静かにしてください。これより新入生と在校生、『顔合わせ会』を始めます。まずは在校生代表、生徒会長の挨拶です」
そう言って男性は後ろに下がり、女性が前に出てきた。
「わたくしが、ツバサ学園生徒会長のマリナ・ファルースですわ」
彼女が名前を言った瞬間、俺たちの後ろにいる生徒たちが、ざわざわし始める。俺は、隣に座っているカカリに生徒会長のことを聞くと、
彼女は二年の間に上級魔法を一つ使えるようになった天才として、この学園で有名だそうだ。さらに、ファルース家は、結構地位の高い貴族だそうだ。
「新入生の皆さん、入学おめでとうございますわ。今年の新入生の中には、勇者様を筆頭に優秀な人材ばかりだと、学園長から聞いておりますわ」
生徒会長の目線が俺たちの方に向けられる。
「この学園と言うより、今の学園長は、『第一回ツバサ学園名前隠し大作戦』など未だに、何をしたかったのか分からない行事もありますが、この学園で学ぶことは、自身の成長に繋がりますわ。この後、隣で行われる交流会では気軽に話しかけてください」
そう言って生徒会長はお辞儀をして、ステージの後ろの方え下がった。入れ替わりで先程の男性が前に出てきた。
「次は、学園長先生のお言葉です」
男性がそう言うと、シルドさんが何処からとなく現れた。
「皆さん知っていると思いますが、私が学園長のシルド・レインです……以上です」
(あのシルドさんが名前を言って終わり!?)
俺は、嫌な予感がした。前にも一度、シルドさんの口数が少ない時があったが、結局それは、『第一回ツバサ学園名前隠し大作戦』に繋がった。
シルドさんは、それだけ言って男性に紙を渡し何処かに行った。紙を受け取った男性は、それを見ながら、
「この後は交流会ですが、学園長の話が早く終わったため、今年の魔法実技一位であったカナタ・ソラくんからの話だそうです。『彼は入学試験で、火属性と水属性の上級生魔法を見せてくれた生徒です。皆さんに為になる話が聞けるでしょう』と書いてあります」
入学試験で二つの属性の上級魔法を使ったと聞いて驚き始める生徒たち。生徒会長や今話している男性ですら驚きを隠せていない。
「それでは、カナタ・ソラくんは、ステージに上がってきてください」
(全校生徒の前で何を話せと!?)
俺は、重い足取りでステージに上がった。
現在・・・を……に、
文の初めをひとます開ける作業をしています




