第二十七話 寮?
俺とリラの学生証は、ペリルたちが見ることはなかった。ペリルたちが知ったことといえば、リラの魔法試験と筆記試験の順位と上級魔法が使えること、俺の魔法試験の順位と火属性と水属性の上級魔法を使える事だけだった。
なぜなら……
『仲良くなるのは良いが……後で話す時間はたっぷりある。だから授業を進めるぞ』
とフリップ先生が言ったからだ。
俺たちはこの時、フリップ先生が言った事の意味がわからなかった。
「次は、今後についてだ。まずここに移動してきた理由だが、ここの教室がお前たちSクラスの魔法練習場だからだ」
魔法練習場は無茶苦茶広く、地面から天井までの高さも結構ある。
「フリップ先生、俺たちだけでこんなに広い場所を使っていいんですか? 」
「Sクラスだからなと言いたいところだが、今年は、教室を燃やしたり、凍らしたりする生徒がこのクラスに居るので、危険を減らす為にこの教室を使う」
シルドさんが、俺たちにこの広い教室を使うようにフリップ先生に言ったそうだ。
「あとこの学園は、専門分野の授業を受けることができる。例えば、『武器の扱い』に『武器や魔道具の作り方』、冒険者になりたい奴にオススメの、『料理の仕方』などがある」
この専門分野の授業は、他のクラスと合同で行うそうだ。
「専門分野の授業については、後日に詳しく話す。今は時間がないからな」
それから俺たちは、校舎を出て何分か歩き、大く立派な建物の前に来た。
「フリップ先生、この家は……何ですか?」
俺がフリップ先生に聞いた理由は、その建物が、日本にある一軒家だったからだ。
しかもデカイ。
「ここは、お前が住む学生寮だ」
フリップ先生がニヤっと笑う。
「ここに、俺一人だけで済むんですか!?」
俺の返答に、フリップ先生が頷けば、俺の『同年代の男友達を学生寮で作る計画』が崩れることになる。
クラスメートは、俺以外みんな女子だ。俺には、男友達がいないのだ。
輝みたいに話せる友達が欲しい。
「安心しろ一人じゃない。言っただろ話す時間はたっぷりあると……」
(あれ? それって もしかして……)
フリップ先生はこう言った。『仲良くなるのは良いが、後で話す時間はたっぷりある』と
「ここがお前らが暮らす、新築のツバサ寮だ」
ツバサ学園には、男子寮と女子寮がいくつもあるのだが、異世界の勇者が、ツバサ学園を受験することが分かると、勇者ツバサが残した資料をもとにして、シルドさんたちが急いで作ったそうだ。
「フリップ先生! 俺が女性に見えますか!」
「見えなくもないが、お前は男だろ?」
(俺って女性に見えるの!)
リラたちを見るとみんな頷いていた。女性に見えると言われ、地味に傷ついた俺だった。
「……なら、男女が同じ屋根の下で暮らすのは、まずいでしょ。みんなだってて……」
嫌だと思っている。そう言おうと思ったら、
「私は別に良いわよ。気にしないし」
俺が気にするよ!
「私は少し怖いけど、みんながいれば大丈夫だと思う」
あれは、わざとじゃないし!
「私も大丈夫」
何がだよ!
「私はいつも、同じ宿で寝ていたから、全然平気だよ」
…………
「「「えっ!?」」」
俺とリラ以外の声が重なった。
「カナタ。みんな大丈夫だと言っているぞ」
と思ったら、フリップ先生だけがスルーして俺に話しかけてきた。
「ソウデスネ」
俺はどうでもよくなって、適当に返事をした。
「別に同じ部屋で寝んじゃないんだ。それぞれに、小部屋もきちんとある」
「それなら……いいですけど……」
俺たちはツバサ寮の中に入った。一階にリビング、お風呂、トイレ、キッチンなど共通のスペースがあり、二階には、小部屋と言うより、大部屋が6つあった。
「結構広いな」
ツバサ寮には、家具が一つもないが、それを入れてもツバサ寮の中は広い。俺たちは、個人でいろいろ見て回った後、リビングに集まった。すると、フリップ先生が……
「言うのを忘れていたが、食事はそれぞれ、男子寮か女子寮で食べるか、ここで自分たちで作ってくれ」
一番近い男子寮、女子寮共にここから歩いて行くとなると、最低でも30分以上はかかる。
ツバサ寮を建てたのはいいが食事のことは考えていなかったようだ。
「後は、お前たちで話し合っていろいろ決めてくれ。最後に連絡をして解散だ」
連絡の内容は、明日は自己紹介をした教室、1のSで集合だそうだ。フリップ先生は、俺たちにツバサ寮の鍵を渡してツバサ寮から出て行った。
その後、俺たちはまず部屋割りを決めた。まず階段を登って、左側から、美咲、カカリ、ペリルの順で、向かい側は、俺、リラ、そして物置となった。




