第十八話 マーシさん
俺たちは一度宿に戻り、ルーブビレをでて、ロナテーナに向かっているのだが……
「ソラ魔物がいっぱいいるよ」
俺たちの目の前には、Fランクの魔物がウヨウヨしていた。前にここを通った時は、魔物はいなかったから、ヤタの森に生息していた魔物が移動してきたんだろう。中には、見たことのある魔物もチラホラいた。
俺は、装備屋で買った武器を試す為に、魔法を使わずに長剣を使いFランクの魔物を倒していった。
(おぉー!!)
聖剣アルダートには到底及ばないが、前に使っていた長剣よりは、斬れ味は断然に良い。
リラはと言うと……
「カマイタチ」
風の刃によって、一体また一体と魔物が倒されていく
リラは、短剣を全く使わずに、風属性上級魔法を使いFランク魔物を倒していっている。最近のリラは風属性魔法以外の魔法を余り使わなくなっていた。理由は他の属性を使う意味が無いからだ。時々アクアフォースだけは使っているが、
時間もそれほど掛からずに、魔物を全滅させた俺たちは、ロナテーナに向けて進みだした。
そして俺たちは今、ロナテーナにある、マーシさんの家にいる。
「やはり帰ってきおったか」
マーシさんはリラを見て言った。
「違うよおばば様! 私はただソラについて来ただけで……旅をやめたわけじゃ……」
「何を言っておるのじゃリーラは、わしはただ、お主らがこれを取りに来たと思ったのじゃが……」
マーシさんはポケットから緑色のペンダントを取り出した。マーシさんはそのペンダントをリラに渡す。
「おばば様これは?」
リラとマーシさんがあれ? という顔になった。
俺が思うにリラは、旅を諦めてロナテーナに帰ってきたとマーシさんに言われたと勘違いをし、マーシさんは俺たちが、緑色のペンダントを取りに来たと勘違いをしていたということだろう。
「これは風の巫女のペンダントじゃ。ソラ、指に付けているのは女神の指輪じゃろ? 魔力を流してみるのじゃ」
俺は、女神の指輪に魔力を流すが、小さく光るだけで何も起きない。するとマーシさんが、
「すまん、すまん封印しておったのじゃった」
マーシさんがリラの持っている、風の巫女のペンダントに手をかざす。
「これで大丈夫じゃ。ソラもう一度、女神の指輪に魔力を流してくれんか」
俺が女神の指輪に魔力を流すと、
女神の指輪と風の巫女のペンダントが光輝きだした。女神の指輪は先ほどと比べると輝きが全然違う。それに、ここに強い何かを、リフホーネのある方角に二つの弱い何かを感じた。
「女神の指輪は、巫女のペンダントを見つけるための道具じゃ。巫女のペンダントに近くなって行くほどに女神の指輪は強く輝くのじゃ」
巫女のペンダントは、巫女の称号を持つものが身につけると魔法の威力が上がるそうだ。例えば、リラなら風の巫女なので、風の巫女のペンダントを身につけることで、風属性魔法の威力が上がる。
俺はマーシさんの話を聞いて一つの疑問が浮かんだ。
「マーシさんはリラが風の巫女だと知っていたんですか? 」
風の巫女の称号があった事は、リラ本人も知らなかった事だ。マーシさんが知っているはずがない。
「理由は言えぬが、わしはリーラの事なら何でも分かるのじゃ……わしが風の巫女だったからのぉー……リーラにも風の巫女の可能性は十分にあったのじゃ」
マーシさんが風の巫女だったから、リラも風の巫女の可能性がある。マーシさんの言葉は、俺とリラにはよくわからなかった。
「本当は、リーラが旅にでる時に渡すつもりだったのじゃが……忘れておった」
(忘れてたってマーシさん……)
マーシさんは話を逸らすかの様に、
「お主が腕に付けているのは、ワールブレスレットではないか、顔だけではなく、持ち物までツバサに似てきたの〜」
聖剣アルダートと女神の指輪は、女神レーアス様に貰ったもの。ワールブレスレットやサフィークは、俺の祖父が旅をしていた時に作った魔道具だそうだ。祖父が地球に帰る前に、それぞれ封印したり、信頼できる人に渡していったらしい。まだ祖父が作った魔道具はまだ沢山有るそうだ。
「それでお主らは何をしに来たのじゃ」
(やっと、今日ロナテーナに来た目的の話ができる)
「今日は、オズタートに残っているエートスの亡骸から、防具の素材を集めに来たんですが……オズタートに入ってもいいですか?」
本来、オズタートに入るには、マーシさんの許可がいるのだ。
「いいじゃろ。その代りにわしもオズタートについて行く。最後に仇の姿を見ておきたいからの」
仇? 俺には何の事かわからないが、リラは知っている様だ。マーシさんとエートスには、何か因縁があったのだろう。
俺とリラとマーシさんの3人でオズタートに向かった。俺たちがエートスを倒してからは誰もオズタートに入っていないらしい。
オズタートを進み、何事もなく奥にある祭壇までたどり着いた。
「やっぱり凄いな、この祭壇は」
俺とリラは祭壇の中に入っている。白くて神殿みたいな建物の中には、聖剣アルダートが刺さってあった台座もある。あるものが無ければ、この場所は神々しい場所であっただろう。
俺たちは、祭壇を出てあるものの前に立った。あるものとはエートスの亡骸だ。
先程から、エートスの前にいたマーシさんは、エートスの亡骸を見て涙を流していた。俺に見られている事に気付いたマーシさんは涙を拭き俺の方を向く。
「ソラ……エートスを倒してくれてありがとう……本当に感謝している」
マーシさんが俺に頭を下げた
「俺はただ、倒さないと殺されると思ったからエートスを倒しただけで、別にマーシさんに感謝される事は何も」
マーシさんは顔を上げて、笑った
「そうだとしても、ありがとう」
マーシさんの口調が違うからだろうか、笑った顔がリラに似ていた気がした。
それから俺たちは、エートスの使えそうな素材を集めようとナイフでエートスの皮を剥ぎ取ろうとしたが、毛皮が硬く、今持っているナイフでは、剥ぎ取れなかった。
結局マーシさんの案で、サフィークに入れる事にした。サフィークは、魔力を流しただけ袋の口を大きくする事ができるし、中は時間が止まっているので腐らない。
マーシさんの風属性魔法でエートスを持ち上げてエートスを丸々サフィークに入れて持ち帰る事にした。
村に帰ってくると、リラがマーシさんに風属性魔法を教えてくれと頼んでいた。
俺たちは、ロナテーナに泊まる事になった。宿には、今日は帰って来ないかもしれないと言っておいたので大丈夫だろう。




