第十九話 雷の鳥
ロナテーナには、次の日の昼まで滞在していた。
帰りは魔物に会わなかったが、ルーブビレに近づくにつれて騒がしくなっていく。
ルーブビレの門に着き、街の中に入ると、ザルーガさんと貴族みたいな人、防具だけボロボロの冒険者を中心に、凄い人だかりが出来ていた。
その人だかりの中には、ジーラさんやペルスさんの姿もある。俺たちは、ジーラさんの所に向かい、何があったか聞きに行こうとしたら、ザルーガさんが大声で……
「王都から討伐隊を呼ぶが、もしもの時の為、この街から逃げ出せる準備をしておけ!!」
ザルーガさんの言葉に、人だかりが解散していった。
「ソラなんかやばそうだよ」
リラが不安そうな顔をする。
「大丈夫。俺がリラを必ず守るから」
俺はそう言ってリラの頭を撫でた。
するとリラが……
「そうだよね。ソラがいるから大丈夫だよね」
リラはそう言って笑った。
この街で何が起きているか分からないが、リラには笑顔でいてほしい。
リラと話している間に、ジーラさんがザルーガさんの所に行ったので、俺たちもザルーガさんの所に向かう事にした。
「ザルーガさん何があったんですか?」
「ソラか、実はな……」
前に、ツデの森の調査に向かったBランク冒険者たちが、目の前にいる冒険者一人を除いて、ツデの森にいた魔物にやられ全滅したらしい。
「魔物の正体は分かっているんですか?」
ザルーガさんは首を横に振る。
「そいつから聞いた、魔物の特徴だけじゃわからん」
ザルーガさんが聞いた特徴は、光っていて、大きな何からしい。
「その魔物がルーブビレに向かってくる可能性がある」
「「えっ!?」」
俺とリラは驚いた。ツデの森の調査に向かった上級冒険者は、10人以上いたのにも関わらず、ほぼ全滅だ。その全滅させた魔物が、ルーブビレに向かって来るかもしれないのだ。
「おい! ザルーガそいつらは誰だ」
貴族みたいな人が、俺たちが話している途中に割り込んできた。
「こいつらは、この前冒険者登録をした、ソラとリーラです」
ザルーガさんが俺たちの事を簡単に説明した。
「なんだ、初級冒険者か。お前らに構っている暇はない。どこかに行け」
リラが貴族みたいな人を睨んだ。
「なんだ小娘、文句があるのか? わしはこの街の領主様で貴族様だぞ……よく見たら小娘、可愛いではないか、どうだわしの妾にならんか? 」
貴族みたいな人ではなく、貴族だった人が、リラに詰め寄るが、リラはそっぽを向き、貴族だった人を無視をして俺の後ろに隠れた。
「ソラ……なんか……知らない人に話し掛けれちゃった。しかも……何か変なことを言ってるよ。ソラお腹すいたしご飯食べに行こう」
ご飯を食べに行こうと、その場を離れようとしたら、ジーラさんが……
「二人とも、ご飯を食べに行くなら、私も行きたいわ。ついて行ってもいいかしら?」
「いいですよ。ザルーガさんも一緒にどうですか?」
ザルーガさんは少し考えるそぶりをして、
「そうだな。王都に連絡したらご一緒させてもらうよ」
ジーラさんが。手をポンッと叩いた。
「それなら、酒場で食べましょうよ。ギルドの隣にあるし、兄さんがおごるわよ」
ザルーガさんは驚いた顔になり、お金が入ってあるであろう、袋の中を確認している。
「よし……二人には俺が奢ってやる」
ザルーガさんは袋をポケットにしまった。俺たちは、酒場で昼ごはんを食べることにしたので、酒場に向かおうとすると、
「おい! わしを無視するな!! わしは、この街の領主様だぞ」
後ろから何か聞こえた気がしたが、誰も振り返らずに、酒場に向けて歩き出した。
「リラちゃんごめんなさいね。あの領主が言ったことは忘れて頂戴」
俺たちは酒場で料理が来るまでの間、先程の話をしている。
「領主? 誰ですかそれ?」
リラは可愛く首をかしげる。リラは言葉だけではなく、領主その者の存在を記憶から消したようだ。
「そうね……この街に領主なんていなかったわ。ごめんなさいね、昔、住んでいた所とごちゃ混ぜになっていたわ」
ジーラさんもあの領主の事を記憶から消したようだ。
(あの人一応……貴族だよな……)
リラとジーラさんは、あの領主については扱いが雑い。
まぁ、前にジーラさんから聞いた話では、実際にこの街をまとめているのは、ザルーガさんだそうだから、あの領主は威厳がないのだろう。
「遅くなってすまんな」
ザルーガさんが、酒場に入ってきて空いている椅子に座った。
「リーラにソラ、さっきは「兄さんその話は終わったから」
ザルーガさんは、領主の事を謝ろうとしたのだろうが、ジーラさんに遮られた。
「ザルーガさん。王都から討伐隊は来るんですか?」
ザルーガさんは難しい顔をして、
「ダメだった。王都の転移魔法を使える魔法使いは、召喚された勇者と一緒に、いろんな街に行っているそうだ。帰ってきて次第に、ルーブビレに来るそうだが……」
王都リフホーネからルーブビレまでは、距離が遠く、歩いて来るのはまず無理だ。いつも、こんな事態が起きた時は、転移魔法を使って移動してきているそうだ。でも今回は、召喚された勇者たちを強くする為に、色々なところで経験を積ませているのだろう。
「兄さん。それじゃぁ……」
ジーラさんが手を額に置き青ざめた顔になった。
「あぁ……もし今日か明日に魔物がこの街に来るなら、今この街にいるメンバーでなんとかするしか無い」
空気が重くなったその時……
地面が揺れ
酒場の中にまで魔物の鳴き声が聞こえた。
俺たちは急いで酒場を出て。辺りを見渡す。そこには、ルーブビレを覆っている壁より、高く飛んでいる魔物がいた。
その姿は、全体的に黄色く、大きい羽に、長い尻尾を持つ鳥? だったが、普通の鳥と違って、全身に雷を纏っている。さらには、エートスより遙かに大きな魔物だった。
「あれは! まさか……」
「ザルーガさん、あの魔物を知っているんですか?」
答えが返ってきたのは、ザルーガさんからではなく、ジーラさんからだった。
「あの魔物は、700年前の魔王との戦いで、勇者ツバサが倒したと言われている、伝説の魔物……フーライラよ」




