ひたすらに練習!
部屋にデブがいる。
デブが今夜使うベッドで寝ている。
デブがスヤスヤと気持ち良さそうに寝ている。
(なんで!なんでこんな時に!こんなときに限って!コインが裏なら助けなかったのに!なんでデブを助けるんだよ!可愛い女の子じゃなくて酔っぱらいのデブを!はぁ、これで盗賊団の事で何も進展しなかったら、このデブからお金を貰おう)
そんな事を考えていたら
「ん~、ここは?、たしか、、酒を飲んで」
デブが目を覚ました。
「酔いつぶれて、店から投げ出されて、気絶していたから僕が使う宿に連れてきたんだよ」
「それはすみませんでした、ご迷惑をおかけしました」
(あれ?好感度がもう400までいったのかな?態度が柔らかい、よくわかんないスキルだな)
「いえ、お気になさらずに」
「そうはいきません、迷惑をかけたら何か形として返すのが、商人として生きている私の矜持です」
「そうですか、それならいくつか聞きたい事があります」
「はい、なんなりと」
デブは酔いが覚めているのか、店の時とはかなり印象が違った。
「貴方は盗賊団に襲われたと聞きましたが本当ですか?」
「はい、抵抗したのですが力及ばず、情けない話です」
「ではその時の状況と情報をください、それと襲ってきた盗賊団について、知っている事も教えてください」
「それを聞いてどうされるのですか?」
「僕は数日中に、お金が尽きるのでこの町から出なくてはいけません、なので盗賊団に襲われてもいいように盗賊団の情報が欲しい、という事です」
「失礼ですが、貴方のレベルはいくつですか?」
「レベルは1ですよ」
僕はレベルの事を聞かれると思ってなかったので、とっさにレベル1だと答えてしまった。まあ嘘ではないが本当でもない。僕はあの職業について、あまり話したくなかった。
「それではやめたほうがいいでしょう、死にに行くようなものです」
「僕もそう思います、けれどこの町にいても結局は同じ事になるでしょうし」
「そうですか、」
商人は暫く考え込んでいたが
「わかりました、あの時の状況と情報を教えましょう、後こちらをお受け取りください」
商人は服のポケットから一個リングを取り出した。
「これは?」
「装備した者のMPを吸い取る腕輪です」
「へ~」
僕はデブからリングを受けとる。
頭の中で解析と念じる
アイテム名:グレイプニル
種類:呪縛系
使用方法:腕に触れさせると発動、使用者がグレイプニルに触れると解除する。
効果:装備者のMPを5にするまで吸い続ける。
追加効果:自然回復無効 [MP]
材料:メデューサの目、フェンリルの牙、ドワーフの骨
ランク:A
(ランクA!?え?貰っていいの?すごいよ?どんな効果になるか解らないけど、絶対すごいよこれ!)
僕は恐る恐るデブに聞いてみた。
「かなり高価な物じゃないんですか?」
「おや?分かってしまいましたか。ええ、確かにそれは高価な品です。私が護身用に買った私物でして、使えば相手は立つ事も難しいそうです。私は盗賊団に襲われた時に、使う機会がありませんでした。なので貴方に差し上げます。私では使いこなす事が出来そうに無いので」
「いいんですか?」
「ええ、構いませんよ」
「でも、店の前からここまで運んだだけですし」
「ならこうしましょう、私は現在この町の盗賊団の討伐、捕獲に協力しています。なので盗賊団の情報を手に入れたら私に教えてください」
「それだけでいいんですか?」
「まあ、本音を言えばそのアイテムで、盗賊団の一人を捕まえて来てほしいのですがね」
「ですよね」
「しかし貴方に無理をさせるわけにもいきません、なので情報を手に入れるだけでいいのですよ」
「わかりました」
こうして僕はランクAのアイテムを入手した。
デブの事は今後イケメン商人と呼ぼう、と心の中で誓った。
イケメン商人は襲われた時の状況と情報、アイテムの使用方法、宿泊先を教えて帰っていった。
(このアイテム売ったらいくらになるかな?)
一人になって邪な考えが浮かんでくる。
しかし僕にとっては現状の切り札になるアイテムである。簡単に売ったりは出来なかった。
(盗賊団ね~、どうやって逃げようかな?どうやっても逃げれそうに無い気がするけど、でもこのアイテムを使って撃退するってのも無理そうなんだよね、とりあえず、逃げるか討伐に協力するか決めるかな?)
僕はコイントスをする。裏が出る。
(討伐ね~、僕のスキルのせいでこの町の人と協力するのは無理だし、一人で盗賊団を捕まえるのも無理、なら一人だけ捕まえて逃げるか、盗賊団のアジトを見つけるしか無いかな?)
とりあえず戦法を考えてみる。
相手の腕に触れさせなければ発動しない、このアイテムを上手く使うしかない。
僕が盗賊に気付かれずに近付き、これを腕に触れさせるのは絶対に不可能である。
では投げて使うのはどうか、僕は前の世界では、かなりのノーコンだったので、これも却下。
どうやるか色々考えて結論がでた。
スキルを使って運ぶ作戦である。
ウォーターを試すけど持ち上げるのが難しかった。
次に、ウィンドをためした。
浮かす事は簡単だったが、思うように移動させるのはかなり難しかった。
加速が速く減速が遅い為、ゆっくり移動させる事はまず出来なかった。
その日は、日が落ちて月が高い位置に来るまでひたすらにウィンドの練習をした。
最後にMPを5がどんな状態か体験する為、調節をしながら試してみた。
結果MPは6になり、体から力が抜けた。膝をついて床に手を付かなければ支える事が難しく、立つことは出来なかった。一番ひどいのは、意識を何者かに持っていかれる感覚があり意識を必死に意識を保つ事で、とても戦闘などは出来ない状態だった。
MPが0になったらどんな事になるか想像出来なかった。
今後のMP管理はちゃんとしよう。
しばらくしてMPが11まで回復するさっきまでの状態が嘘のように軽く、気分もよくなった。
それから僕はベッドに潜り込み深い眠りについた。
翌日、僕は朝から町の中の誰も来そうにない路地の奥の空き地でウィンドの練習をした。
この場所はたまたま見つけた。適度に広い空間でウィンドの練習にはちょうど良かった。練習にはグレイプニルと同じサイズ位の石を使った。
ひたすらに練習した。
MPが尽きると休憩、回復すると、また練習。
そうやって練習していると気が付けば空は赤くなっていた。
練習していていくつか分かった事がある。
ウィンドには射程距離があった。恐らくファイアやウォーターも同じ位の射程距離があるだろう。
距離は大体40m位だと思う。
正確な距離はわからないが恐らくその位だろう。
そしてMPを込めすぎると風の音が聞こえる事もわかった。
気付かれる可能性があるのでMPは少なくしたいのだが、MPが少ないとコントロールが格段に難しくなった。
そこで上手くMPを調節したいのだがやはりイメージ通りに発動することは少なく、MP調節は難しかった。
だが昨日と比較すると格段に上手く操作出来ていた。
宿に戻り、風呂に入り、疲れをとってからベッドに潜り込む、すぐに深い眠りに誘われた。
朝日が眩しく目が覚めた。
身支度を整えてからコイントスをした。裏が出た。
(勝負は明日か、どうなるかな?まあ今日も練習だな)
僕は空き地に向かった。
今日は全部の魔法の練習をした。MPがなくなり休憩しようとしたら後ろから声をかけられた。
「貴様!ここで何をしている!」
僕は後ろを振り向くと、そこにはここに来た初日に僕を取り抑えたイケメンの犬耳青年がいた。
「またあんたか、なに?また取り抑えるの?」
僕はこいつが嫌いだった。
イケメンで強くて、何よりこの世界に来て初めて見た犬耳が、こいつだったのが嫌だった。
そりゃ僕だって男だ!
獣耳は、女の子を最初に見たいに決まってる!
それをこいつは打ち砕いたのだ、嫌いに決まってる!
ザイルさんの村には見た感じ人族しかいなかったしね。
「そんなことはしない!ただ何をしているのかと、聞いているのだ!」
向こうも僕のスキルの影響でケンカ腰だった
「お前に言う必要ないだろ!誰にも迷惑かけてないしな!」
「なんだと!」
「なんだよ!」
僕たちは睨み合う、暫くして向こうが視線を外し振り返って町の中に消えていった。
僕は少し休んでまた練習を再開した。
空が薄暗くなってきた。
「何とか形にはなったかな?」
訓練の成果を試してみてから、どうにか作戦のテストが、通しで出来た。
僕は宿に戻ると風呂に入り汚れを落として湯船に浸かる。
この町に来てからは魔法の練習ばかりしていた気がする。
練習していて思った。戦闘系スキルは奥が深い、練習すればするほどいろんな事が出来るようになった。
ウォーターは消費するMPによって扱う水の量が決まる。そして形状を自由に変える事ができた。
棒状にしたり丸くしたりした。
形が複雑になったり、伸ばしすぎたり、広げすぎたりするほど難しくなり、暴発した事もあった。
ファイアは形を変える事は出来なかったが、火の勢いをコントロールすることが出来た。
火の勢いが激しいほど消費MPも増えた。
ウィンドで新しい事は出来なかったが、他の魔法スキルに比べて比較的コントロールしやすかった。
前日までの訓練の成果だと思う。
この町に来るまではただスキルを使っていただけだった。
しかし今は違う、スキルを覚えて、自分の力にする。それが出来て初めてスキルを使えるのだ。
スキルを練習するのは楽しかった。
時間を忘れて打ち込めた。充実していた。
この世界は楽しいと少しだけ思えた。
あの好感度-400とかいう、ふざけたスキルさえなければもっと楽しかっただろう。
レベルが上がれば、もっと楽しかっただろう。
だが、それでも、楽しいと感じた事は、あの事故からは、初めての事だった。
まだ始まったばかりなのだ、こんな所で詰んでたまるか!
無理ゲーだとは思う、クソゲーだとも思う。
でも、まだ始まったばかりだ、始めの方は残念仕様になっていても、後半は面白い物かもしれない。
まだ僕が知らない事がこの世界にはたくさんある。
それを感じて、考えて、理解するのはとても魅力的に思えた。
もう少しだけこの世界を見てみよう。
詰んでいるように見える今の状況を、もう少し頑張って乗り越えてみよう。
それで詰んでいたなら、それはそれで諦めよう。
勝負は明日、盗賊団と僕の勝負はどうなるのかな?
僕は風呂から上がる、体を拭いてベッドに潜る。
明日を少しだけ楽しみにしながら僕は眠りについた。
勝負の朝は気持ちよく迎えられた。
僕は身支度を整えてすぐにイケメン商人の宿泊先の宿屋に向かった。
「おや、カズマさん、何かありましたかな?」
「はい、それでお願いが2つあります」
「聞きましょう」
「まず一つ目は盗賊団の討伐、捕獲の指示をしている責任者に会わせてください」
「わかりました」
「二つ目は、用意してほしいアイテムがあります」
僕はイケメン商人に会い2つ頼み事をした。
イケメン商人はすぐに盗賊団の対策責任者に会わせてくれた。
責任者はリースさんだった。
「カズマさん、話というのは?」
「はい、盗賊団の一人を捕まえようと思います」
「出来るのですか!?」
「成功率は低いと思いますが可能だと思います」
「その詳細を聞いてもよろしいですか?」
「答えれませんね、旅をしている者は自らの手の内を明かすなって、この町にくる前に村の村長さんに教えて貰ったので」
「そうですか、少しだけ時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「ええ、構いませんよ」
リースさんは部屋から出ていった。
暫くしてリースさんは一人の青年を連れてきた。
あのイケメン犬耳青年だった。
「紹介します、彼はカイラム・ジーニアスこの町で盗賊団の討伐、捕獲を実行している一人です」
「ああ、どうも」
「本当に、こんなやつを信用するのですか?」
カイラムはあからさまに嫌そうにしていた。
どうやら好感度が下がっているようだが、僕は男の好感度に興味はなかった。
「カイラム、まずは話を聞いてからでしょう?」
「それはそうですが、おいお前!レベルはいくつだ?」
「1だけど?」
「ハッ、それならどうやったって無理じゃないか!相手にはレベル70の平民を倒すやつがいるのに、たった一人でレベル1の奴が盗賊一人を捕まえるだと?夢でも見ているんじゃないのか?」
「で?どうするんですかリースさん?」
「すみません、とにかくお話をお聞かせください。その後、検討します」
「そんな話聞くまでもない!レベル1のやつがどうやって捕まえるって言うんだよ!」
スキルの影響でカイラムの好感度が駄々下がりしている。
人を嫌いになるのは簡単だ。一日あれば人を嫌いになることは簡単にできる。
逆に好きになることは難しくリースさんやイケメン商人、ザイルさんが特異な存在と言えるだろう。
普通はカイラムのようになる。
「カイラムも落ち着いてください。今は何の作戦もないのです、彼の話を聞いてからでもよいではありませんか」
「俺は時間の無駄だと思いますけどね」
カイラムはそういうと僕が座っているソファーの向かい側に座った。
その隣に、リースさんが座り僕の話を聞く、リースさんは丸い眼鏡をかけていた。
「大体の流れを説明すると、僕は今晩この町を出ます。そこで恐らく僕は盗賊団に襲われるでしょう。そこで返り討ちにします」
「その後はどうするんですか?」
「恐らく盗賊団は逃げる為、一旦アジトに戻るでしょう。その前に一人だけ捕まえておき、僕は敵のアジトに逃げる盗賊の後を追ってアジトを発見、引き返してこの町に報告します、後は町の皆さんでアジトを包囲して討伐、捕獲の流れになると思います。僕の話を信じない人がいると思うので、捕まえておいた盗賊の一人を連れて帰って来ます。本当なのかはリースさんのスキルで確認して貰えばいいかと」
二人は黙り何か考えていた。そしてリースさんが口を開く
「質問をしても?」
「詳細な事以外なら構いませんよ」
「ではまず、返り討ちにした時点で捕獲のするのは不可能なんですか?」
「無理だと思いますよ」
「どうやって盗賊を捕まえるのですか?」
「それは教えることが出来ません」
「そうですか、では失敗した時は?」
「そうですね、僕が盗賊に捕まったらそのまま見捨ててもらって構いませんよ。後は運よく盗賊から逃げれた場合は、一旦この町に帰って来ようと思ってます。まあ状況によっては盗賊の一人を捕まえて、アジトを発見できないなんて事もあると思います」
僕が答え終わるとカイラムが席を立つ
「くだらん、何故そんな夢物語に付き合わないといけない!」
「まあ、僕が成功する可能性は低いと思うよ?でももし、成功させて何の準備もしていなくて盗賊団を逃がしたら、君の責任だよ?」
「成功したらな!」
カイラムは部屋を出ていった。
「すみませんね、普段はあんなに態度に出さないのですが」
「いえ、気にしていませんよ、僕にも責任が有るでしょうし」
「あなたに一つだけお伝えしなければなりません」
「なんでしょうか?」
「実は昨日この町の住人がまた一人盗賊団に拐われました」
「それが?」
「実はカイラムの弟なのです」
「なるほど」
昨日より態度が悪化していたのはこれが原因だった。
ただでさえ弟が無事なのか分からないのに、嫌な奴に会っていたらそりゃあ好感度は落ちる。
「彼の弟は正義感が強くて、盗賊団も一人で捕まえるって聞かなくて、結局彼は一人で盗賊団に戦いに行ったらしく、町の中にはいませんでした」
「わかりました、もし見つけたら連れて帰れるように努力してみます」
「お願いします、ただもう盗賊の仲間になっているか、殺されているでしょうけど」
「仲間になる?」
「ええ、盗賊は誰でもなれる職業なのです。比較的簡単に、相手の所持している銀貨以上の高価な品を盗めばなれる職業です。なので強制させれば誰にでもなれます。
そして盗賊になったものは盗賊頭領の職業を持つ者に命令されます、盗賊頭の命令はスキルらしく背く事も出来ません、その命令で大体の場合<仲間になれ>みたいな事を言われるそうです」
「なるほど、そうやって盗賊は仲間を増やせるのですね」
(道理で聞いた数が多い訳だ、イケメン商人に聞いた話だと20人くらいって聞いてたから今は更に増えてるかも知れないな)
「はい、そして盗賊が集団で行動する場合は盗賊頭領が必ずいます」
「今回もいるという事ですか」
「はい」
「盗賊頭領はどうやって取得するのかわかりますか?」
「いえ、取得した本人でさえ、わからないそうです。ただ盗賊の職業で長く生活しているとなれるようです」
「そうですか、ちなみに盗賊のアジトがわかった場合は、討伐出来るのですか?」
「恐らくですが、さっき出ていった。カイラムはレベル200以上ありますし、また討伐に参加している他の人達もレベルは高いです、人数も恐らくですがこちらが多いでしょうから」
「そうですか、それなら安心です」
「ただ危険ですよ?それに旅の人にはこの町の事は、あまり関係ない話でしょう?」
「そうですね、僕も最初はどうやって盗賊に見つからないようにこの町を出ようか悩んでいました。ですがこの先も襲われる危険はありますし、何よりコインが決めた事ですので」
僕は苦笑いを浮かべて答えた。
恐らく変に思われるだろう。
重要な事をコインで決めるなんて。
でも、それがこの世界に来る前に決めた事だ。
なにがあってもコインの決定だけは変えない。
この世界で僕はコインと、どんな人生を歩んで行くのだろう。
今は盗賊を一人捕まえよう。
それはコインが決めた事なのだから。
さて、ここの所今まで書いた所を修正しまくってました。
重要な修正箇所は???の解放条件の商人のレベルを50から300に変更した所くらいです。
後は読みにくかったり文字稼ぎ程度に色々語尾とかを調整していたりしました。
これからも所々修正していくことがあると思います。
では今回はこの辺で




