題21話 SIDE B 再生
どこかでやかましい音が鳴っている。
そのせいか、床が振動しているのが分かる。
その振動は、俺が生きていることを確認させてくれる。
胸にぽっかりと空いた穴から溢れる液体は、まだ流れているのだろうか?
体は既に脱力感に襲われて、指一本動かせる気がしない。
痛みも無く、床の冷たさも既に感じない。
ただ、振動が俺の意識をさらにまどろみの中に誘っていく・・・
「ふぅぅ・・・・」ため息のように息を吐いて、意識を何とか覚醒させようと試みる。
呼吸とは、体中に酸素を送り届けるためにすることであって、心臓がなくなった俺の体では意味の無い行為だとは思うが、一応「呼吸のつもり」で、やってみる。
うるさい音がなっているが無視する。
今、何かを考えていたら、それこそ意識を失ってしまいそうだった。
(数学の授業中みたいなもんだな・・・)
頭の中で、昨日の授業風景を思い出す。
眠くてやる気が起きなくて・・・・
「クク・・・」知らず知らずに声が漏れた。
こんな状況でも笑えるものなのかと自分でも驚いている。
全身の感覚を失っているはずなのに、意識だけは何とかつなぎとめている。
いつまでもつか分からないが、やれるだけ意識を保ってみよう・・・・
自分に言い聞かせて、彼はまた「呼吸のつもり」で息を吐くふりをしてみる。
横隔膜も無いらしく、息すら吐けなくなっていた。
恐らく先ほどの呼吸も全くできていないのだろう。
不思議に落ち着いてる自分。
死ぬことを恐れていないのだろうか?
いや、死ぬのは怖い。
ならば、この落ち着きは何なのだろう?
自問自答を繰り返し、ふと、あることに気が付いた。
先ほどから意識がはっきりとしてきているのだ。
思考も鮮明になってきており、考えをめぐらせられる。
眠気も無くなっていた。
――胸が、熱い・・・・
夢の中で感じた熱さが再び襲ってきた。
失いかけた視界で、何とか胸を見ようとしてみるが首が動かないためそれもままならない。
ただ、何かが体育館のほうから彼の方に飛んできていた。
それは、赤かったり青かったり白かったり、はては金色だったりと様々な色をしている「モヤ」
のようなものだった。
「うう・・・・ふぅぅぅぅぅ・・・・」
自然と声が出た。
何かに後押しされるように呼吸を繰り返す。
額に汗を浮き出させて、胸を何度も上下に動かす。
「うう・・・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・」
呻き声が口から漏れ出した。
なにがおきているのか?
呻き声をもらしている彼の胸は、驚異的な回復力を見せていた。
モヤのようなものが、ぽっかりと空いた穴の中に入る度に急速に組織が盛り上がり、筋肉、骨、はては内蔵までも再生していった。
彼の傷・・・・といか、「穴」の部分も淡い光を放っていた。




