第21話 逃げる者追う者
ソフトボールが物凄い勢いでドアやら壁やらに激突してけたたましい音を幾度もたている。
そのたび倉庫が振動する。
その中で俺は体育用具をどかして使えるものを探していた。
とはいえそこは
「予備倉庫」
なのであって大した物は置いていない。
せいぜいラインマーカーの用具や、各種ボールが置いてある程度である。
―さて、どうしましょうかねぇ…
けたたましくなる衝突音が反響する中次の一手を考えることにした。
→その頃の体育館一階→
彼は、手元にあるボールを手当たり次第投げていた。
人の姿でいた頃よりも大きくなった体ではソフトボールでさえ、たいした大きさではなく鷲掴みにできる。
それを一度に投げ付ける。
その異常発達した筋肉はいともたやすく80メートルはあろうかという体育館倉庫まで届いていた。
何度も何度も投げ続ける。
手玉はいくらでもあった。
跳ね返った玉がそのまま再び彼の手玉になっている。
玉は尽きない。
ただ、いささか飽きてきていた。
痛みにのたうち回るわけでもなく、ただ逃げて、最後には倉庫に閉じこもってしまったのだ。
これでは狩りにならない。
もう一人の方は既に息絶えていることだろう。
あとでゆっくり命を喰うとしよう。
楽しみは後だ。
腹が減れば減るほど御馳走は旨いのだ。
大きく裂けた口の端が微かに釣り上がっていた。
これから来るであろう至福の時に向け彼は弾丸を放ち続ける。




