第20話 Side A 執念
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・クソ!」
階段を駆け上がりながら俺は毒づいた。
あいつはバスケットボールの次にソフトボールを使い始めやがった。
それも一個ではなく、鷲掴みにしてだ。
二個や三個ではなく、五個から六個の玉が飛んでくるわけだ。
昔の野球漫画でいう『分身魔球』見たいなもんだ。
・・・こっちは全部本物だが。
投げる球は変わらずものすごい音を立てて壁に激突する。
そしてめり込む。
カンカンカンカン・・・・
軽快とはいい難いリズムで階段を上っていく。
既に足は棒のようになり、疲弊しきっている。
今上っている階段は体育館の二階に上るための階段である。この高校は体育館は地下と地上二階の計三階で、奴がいるのが一階俺がむかっているのが二階である。
二階は吹き抜けになっておりギャラリーがあるだけだ。
あるのは一階にもあった体育用具室のみ。
ソフトボールがかすった腕は既によくてヒビ、最悪折れているんじゃないかと思うほど赤黒く腫れだしている。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
呼吸すらメチャクチャになり、口のなかは鉄のような味が広がっている。
あいつは俺が上ってくるのをにやにやしながら待っていることだろう。
だが、俺もただ逃げていたわけじゃない。
逃げていてわかったこと。
やつは『精密性』に欠けている。
そうでなければ俺は既に槍に串刺しになっているはずだ。
もしくはソフトボールで穴だらけになっているだろう。
それは奴もわかっているらしくだからこそ鷲掴みにしてボールを投げてきたのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、…ふぅ〜…」
階段を登りきり二階のドアの前にきた。
ここを開けたらまた、休めない。
一呼吸をおいて、思い切ってドアを開ける。
途端にドアに轟音がした。狙い撃ちをしてきたのだ。
最終ラウンドのゴングが
今、鳴った。




